魂×魂 〜魔王が中学生になったら？そりゃやばいでしょ〜

第1章

学校

　学校に着くと、俺は周りから見られていることに気づく。俺を見てこそこそと、何か話している。

　坂口優希が自殺を計ったことが学校中の噂になっているのか。はたまた、鍛え上げたこの身体が人の注目を浴びてるのか。
　なんてな。恐らく自殺のことが知れ渡っているのだろう。

　だが、残念だったな。俺は注目されることに慣れている。
　魔王だった時はそれこそ世界中のやつらに見られていた。それに比べたら今の注目度は低すぎるくらいだ。
　俺は周りの視線を全く気にせずクラス発表の掲示板の前に立つ。

ーー坂口優希、2年A組。

　皆の注目を浴びながら俺はA組に向かった。
　ガラッと教室のドアを開けると、それまでワイワイと騒がしかった教室が一気に静まり返った。

ーーよい反応だ。

　俺は皆に見られながら、黒板に張り出された座席表を確認した後、自分の席に付いた。

ーーさて。本当は使ったらいかんのだが……。

　ほんの一瞬だけ俺は、自分でコントロール出来るようになった魔力を解放した。
　俺を中心として黒いオーラがクラスに広がり、そして消える。

「え、なに？　今の！」
「え、今なんか鳥肌立ったんだけど」
「俺も、今なんかゾッとした」

　クラス内がザワザワし始める。

ーー見つけた。この教室の1番窓側の1番後ろに3人。数が足らんな……他は違うクラスか？

　坂口優希を虐めていたヤツらだ。

ーーたが首謀者しゅぼうしゃというか、リーダーはこのクラスだ。こっちを睨にらんでやがる。

　そっちを向かなくても、俺にはヤツらの行動全て、こと細かく手に取るように分かる。

「ちょっと、やめときなよ！　優珠ゆず！！」

　クラスの女子たちがざわめく中、1人の女生徒が俺の目の前に立った。

ーー誰だコイツ？

　優希の記憶の中から探そうとしたその瞬間、なんとその女は俺に攻撃してきた。
　俺は反射的にその平手打ちを避ける。するとそいつは顔を真っ赤にしてこっちを睨んでいる。

ーーなんだこの女。

　俺が目を見開いてビックリしていると、そいつは目に涙をうかべた。

ーーなっ、なんだ！？？

「優希に、話しかけるな近づくなって言われたけど、もう嫌！」

　優希の記憶を探ると、見つけた。

　こいつは……俺の幼稚園の時からの幼馴染。そして、あの優希を虐めていたグループの首謀者が好きな女。

ーーなるほどな。

　伊藤優珠いとうゆず。身長150センチくらい。小柄で、目が大きくて、茶色がかった長くてふわふわな髪。勉強も出来てスポーツも万能。
　このクラスどころか、学年のヒロイン的な存在。優希が自分を犠牲ぎせいにしてまで守ろうとしていた1人だ。

「ゆ、優珠……」

　俺がそう呼ぶと、キッと俺を睨にらみつける優珠。

「自殺しようとするなんてバカ！　どれだけ心配したと思ったの！！　病院もどこだか教えてもらえないし！　優希の家に何度も行ったけど、誰も出てこないし！　もうほんとにバカーーー！！！」

　わーッと喋ったかと思うと、わーんと泣き出す目の前の女に、俺はどうすりゃいいんだと汗を流す。

ーーいや、まじこれ、どーしたら。

　すると、優珠の女友達が彼女をなだめるように肩を抱だいて、教室の外に連れ出して行った。

ーー助かった。

　すると、窓際の1番後ろにいたヤツらか動き出す。

「あー、女泣かせるなんてなー」
「ひでえな～」

　俺はゆっくりとそっちを睨む。

「なんだよ、おい。話があるなら聞くけど？自殺しようとした坂口くん」

　俺はフッと笑うとそいつらに言った。

「いいぜ、相手してやるよ。放課後、体育館裏いけばいいか？」

　するとヤツらの表情が一気に険しくなる。

「あ？　んだこら、てめえ！」

　1人がこっちに来ようとしたのをリーダーが手で抑える。

「やめろ。教室だ」

　そして俺の方を見ると、そいつもニヤッと笑って俺に言った。

「いいぜ、放課後な」

　クラスのヤツら全員、オドオドした様子で俺とそのリーダーを交互に見る。
　登校した初日にこうなるとは思わなかったが、ちょうどいい。
　格の違いを見せてやるよ。