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第1章
微妙な変化
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俺が体育館裏から立ち去った後、優珠が後を追いかけて走ってきた。
「待って! 待ってよ、優希!」
俺は気にせずスタスタ歩いていく。
「優希ってば!!」
優珠が俺の目の前に立ち、道を塞ぐ。
「なんだ?」
「なんだ、じゃない! どうしたの?」
どうしたのと聞かれても、どう答えれば良いか分からなかった。
「あなた、本当に優希?」
ジトッとした目で俺を見る優珠。俺は困った顔をして優珠を見る。
「雰囲気も、口調も、何もかも違う…」
ーーいや、そりゃあ中に入っている俺は坂口優希と別人だもんな。
「どうしちゃったの?」
ーーそう聞かれてもなー……。
「あなた、優希じゃないでしょ」
俺はハーっとため息を着く。
「バレてしまっては仕方ないな……」
俺は真面目な顔して優珠を見つめる。
「……俺は、魔王だ」
こんなに早く正体をバラすことになるとは。
「バカなこと言ってからかわないで! 真面目に聞いてるのに!! 優希のバカ!!」
なぜか優珠は怒って歩いていってしまった。
ーー本気にしてもらえんかった。
それにしても、今日の俺様は本当によく堪えたものだ。
今まで俺様を怒らせたヤツを無傷で見逃すなど1度もなかった。
次、アイツらが何かしてきたら、さてどうやって懲らしめようか。
そんなことを考えて、俺は1人で少し楽しい気持ちになっていた。
だが、次の日も、その次の日も、何日経ってもヤツらは俺に関ってこなかった。
関わってこないどころか、驚く程に静かになり、俺と目を合わせようともしない。
あんなもので大人しくなるとは拍子抜けだ。
奴らだけではなく、俺に話しかけてくる者は相変わらず1人もいない。
あの優珠も、怒っているのか、あれから話しかけてこない。
しかしその方が俺にとっては好都合だった。根掘り葉掘り聞かれるのは、正直面倒くさいからな。
俺は今、平穏過ぎる学校生活の中で、1人で静かすぎる時間を満喫している。
ーーつまらん。
目標であった逆襲も何の手応えも無く、あっという間に終わってしまった。
相変わらず周りは俺を見てヒソヒソと何か話している。けれど、クラスメイトが俺のことをどう悪く言おうが、俺はお構い無しだ。
どっちみち嫌われることには慣れている。
「ねえ、優珠」
「ん?」
「最近、あんたの幼なじみ、なんか……かっこよくない?」
「えっ!?」
「前から実は顔が可愛いとは思ってたのよねー」
「私、狙っちゃおうかな」
「だっ、ダメ!!」
突然、優珠が大きな声を出してガタッと席を立ったため、クラスの皆が優珠を見る。
優珠は周りをキョロキョロ見回して顔を真っ赤にして、また席に座った。
優珠の友達はニヤニヤして優珠を見ている。
「?」
優珠を一瞬だけチラッと見ると目が合ったが、俺は構わずに再び読んでいた本に目を落とす。
「優珠だって、今の優希くん、かっこいい~とか思っちゃってるんでしょ?」
「そ、そんなこと……」
「前と違うとか、そんなのいいじゃない。優希くんは優希くんでしょ」
「……それは、そうなんだけど」
そんな噂話をされているとは全く知らず、俺はただひたすら1人の時間を楽しむことに専念していた。
授業も真面目に受けた。が、大学生までの問題も解ける俺には知ってる事ばかりで面白くなかった。
ーーつまらん。
その後、中間テストとかいう試験があったが俺は難なく解き、全問正解の俺はもちろん余裕で学年で1位の成績。
ーーつまらん。
体育でもだ。
走れば1番だし、バスケやサッカーもルールさえ覚えれば敵無しだった。
ーーつまらん。
その頃になると前にも増して学校中の注目の的になっていたのだが、もちろん俺は気にしない。
見られているのも、ただ「自殺をしたやつ」として注目されているだけだと思っていたし、見ているヤツらに興味もなかった。
ーーつまらん!
魔王だった時は何かしらあった。挑んでくるやつもいたし、何より勇者がいた。けれど今はどうだ。
ただ周りから見られ、ヒソヒソと陰口を叩かれ、それ以上なにもない。
少しは骨のあるやつかと期待していた、あの坂口優希を虐めていた奴らもだ。
今では俺と目が合うと、やべえ、という顔をして慌てて目を逸らす。
廊下ですれ違っても、慌てて横に避けて俺に道を譲る始末だ。
「つまらんな」
気づくと俺は口に出して言うほど、この世界に退屈し始めていた。
「待って! 待ってよ、優希!」
俺は気にせずスタスタ歩いていく。
「優希ってば!!」
優珠が俺の目の前に立ち、道を塞ぐ。
「なんだ?」
「なんだ、じゃない! どうしたの?」
どうしたのと聞かれても、どう答えれば良いか分からなかった。
「あなた、本当に優希?」
ジトッとした目で俺を見る優珠。俺は困った顔をして優珠を見る。
「雰囲気も、口調も、何もかも違う…」
ーーいや、そりゃあ中に入っている俺は坂口優希と別人だもんな。
「どうしちゃったの?」
ーーそう聞かれてもなー……。
「あなた、優希じゃないでしょ」
俺はハーっとため息を着く。
「バレてしまっては仕方ないな……」
俺は真面目な顔して優珠を見つめる。
「……俺は、魔王だ」
こんなに早く正体をバラすことになるとは。
「バカなこと言ってからかわないで! 真面目に聞いてるのに!! 優希のバカ!!」
なぜか優珠は怒って歩いていってしまった。
ーー本気にしてもらえんかった。
それにしても、今日の俺様は本当によく堪えたものだ。
今まで俺様を怒らせたヤツを無傷で見逃すなど1度もなかった。
次、アイツらが何かしてきたら、さてどうやって懲らしめようか。
そんなことを考えて、俺は1人で少し楽しい気持ちになっていた。
だが、次の日も、その次の日も、何日経ってもヤツらは俺に関ってこなかった。
関わってこないどころか、驚く程に静かになり、俺と目を合わせようともしない。
あんなもので大人しくなるとは拍子抜けだ。
奴らだけではなく、俺に話しかけてくる者は相変わらず1人もいない。
あの優珠も、怒っているのか、あれから話しかけてこない。
しかしその方が俺にとっては好都合だった。根掘り葉掘り聞かれるのは、正直面倒くさいからな。
俺は今、平穏過ぎる学校生活の中で、1人で静かすぎる時間を満喫している。
ーーつまらん。
目標であった逆襲も何の手応えも無く、あっという間に終わってしまった。
相変わらず周りは俺を見てヒソヒソと何か話している。けれど、クラスメイトが俺のことをどう悪く言おうが、俺はお構い無しだ。
どっちみち嫌われることには慣れている。
「ねえ、優珠」
「ん?」
「最近、あんたの幼なじみ、なんか……かっこよくない?」
「えっ!?」
「前から実は顔が可愛いとは思ってたのよねー」
「私、狙っちゃおうかな」
「だっ、ダメ!!」
突然、優珠が大きな声を出してガタッと席を立ったため、クラスの皆が優珠を見る。
優珠は周りをキョロキョロ見回して顔を真っ赤にして、また席に座った。
優珠の友達はニヤニヤして優珠を見ている。
「?」
優珠を一瞬だけチラッと見ると目が合ったが、俺は構わずに再び読んでいた本に目を落とす。
「優珠だって、今の優希くん、かっこいい~とか思っちゃってるんでしょ?」
「そ、そんなこと……」
「前と違うとか、そんなのいいじゃない。優希くんは優希くんでしょ」
「……それは、そうなんだけど」
そんな噂話をされているとは全く知らず、俺はただひたすら1人の時間を楽しむことに専念していた。
授業も真面目に受けた。が、大学生までの問題も解ける俺には知ってる事ばかりで面白くなかった。
ーーつまらん。
その後、中間テストとかいう試験があったが俺は難なく解き、全問正解の俺はもちろん余裕で学年で1位の成績。
ーーつまらん。
体育でもだ。
走れば1番だし、バスケやサッカーもルールさえ覚えれば敵無しだった。
ーーつまらん。
その頃になると前にも増して学校中の注目の的になっていたのだが、もちろん俺は気にしない。
見られているのも、ただ「自殺をしたやつ」として注目されているだけだと思っていたし、見ているヤツらに興味もなかった。
ーーつまらん!
魔王だった時は何かしらあった。挑んでくるやつもいたし、何より勇者がいた。けれど今はどうだ。
ただ周りから見られ、ヒソヒソと陰口を叩かれ、それ以上なにもない。
少しは骨のあるやつかと期待していた、あの坂口優希を虐めていた奴らもだ。
今では俺と目が合うと、やべえ、という顔をして慌てて目を逸らす。
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気づくと俺は口に出して言うほど、この世界に退屈し始めていた。
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