19 / 56
第3章
夏休み
しおりを挟む
色々あったが無事に期末テストも終わり、俺たちは明日から夏休みを迎えようとしていた。
俺はあの期末テスト以来、クラスのやつらとだいぶ打ち解け、特に篠宮とは一緒にいることが増えた。
篠宮誠。身長170センチくらいの真生と同じくらいの長身。茶髪で目つきも悪く、まだ怖いヤツだと思っている生徒も多いみたいだ。
けれど、俺には最初より顔が穏やかになったように見えていた。
前までつるんでいたヤツらとはバッサリと縁を切ったようだ。
そしてこのハゲ……相変わらず俺のそばにベッタリとくっついている真生も、篠宮のことは気に入っているようだった。
「なあなあ! 優希~!!」
「うるさい。行かんと言ったら行かん」
今日の真生は、いつも以上に鬱陶しい。朝からずっと俺を付け回して同じことを繰り返し言ってくる。
放課後になった今もだ。帰ろうとする俺のカバンを引っ張って離そうとしない。
「貴様、まじでいーかげんに……」
俺がそう言いかけたその時。
「朝から騒がしいけど、何してんの?」
篠宮が話しかけてきた。
「篠宮~! 朝からずっと俺が誘ってんのに、優希がYESと言わないんだよー!」
「うるさいハゲ! 貴様と2人で仲良く海とか行けるかよ!」
「そう言うなよバカ~! 別荘だぜ、めっちゃ楽しいんだぞ!」
それを聞いた篠宮は最初俺達のやり取りを見て呆れた顔をしていたが、突然ハッとして「別荘だと!?」と、驚いた後ニコッと笑った。
「こいつと2人が嫌なら、俺も行こう」
俺は冷めた顔で篠宮を見て言った。
「余計に嫌だ」
俺らがワイワイ楽しそうにしているように見えたのか、1人の女子がこっちにニコニコしながら近寄ってきた。
確か、優珠の親友の……名前は春野恵だっけ?身長は165センチくらい。黒髪ショートの活発女子。バレー部だったかな、手足が長くスラッとしている。
「なんか楽しそうな話が聞こえちゃった! 私たちも行きたい~!」
ーー私たち?
その女子の後ろから、優珠がピョコッと顔を出す。
「お前ら、話をややこしくするだけ……」
俺がそう言いかけると、真生は嬉しそうに言う。
「いいぞ! このメンバーで行こう!」
「おい、真生っ!」
俺はペースに流されそうになり、焦って声をかけると、真生が小声で俺に言う。
「おいバカ……もし来なかったら、俺は別荘でこいつらにお前の恥ずかし~昔の話をしちゃうからな」
ーーなん、だと……??
***
そして、夏休みに入って3日が過ぎた日。
篠宮と優珠、優珠の友達の春野、真生と俺の5人は別荘に向かうため電車に乗っていた。1泊2日の旅行だ。
半ば無理やり連れてこられた俺は最初は不機嫌だったが、電車に乗る頃には機嫌はすっかり直っていた。
初めて乗る電車という乗り物は予想以上にカッコいい。なにより早い!タクスィよりも早い。
俺と真生は過ぎ去っていく風景を、電車の窓にひっつきながら眺めていた。
「おい、優希、電車すげえな!」
「ああ。ものすごく興味深い」
俺は珍しく優希に同感して頷いた。
「おおおお! 優希、今の見たかよ! 車なんてあっという間に越しちまったぞ!」
「これだけ早いと時間すら飛ばしてしまうのではないか?」
ほかの乗客は俺らを見てクスクスと笑っている。
すると突然電車がトンネルに入り、俺らは「うわっ!!!」と思わずビビって声を上げた。
真っ暗な空間を走る電車。ゴーーーッと鳴り響く音。俺と真生はお互いに顔を合わせる。
「おい、優希、外が見えないぞ」
「まさか……異次元に飛ばされたのか?」
すると急に電車がトンネルから外に出て、俺らは「「うおっ!!」」とビビってまた声を上げる。
外の景色を見た俺らは目を輝かせて、おーー!!!と手を叩いた。
「お前ら……マジでなにやってんの?」
優珠と春野はそんな俺達を見て恥ずかしそうに俯き、篠宮は呆れた顔をしていた。
「「篠宮、電車だぞ」」
俺らは篠宮を緊張した面持ちで見た。
「知ってるよ!! いい加減その恥ずかしい遊びやめて、席つけ!!」
俺はあの期末テスト以来、クラスのやつらとだいぶ打ち解け、特に篠宮とは一緒にいることが増えた。
篠宮誠。身長170センチくらいの真生と同じくらいの長身。茶髪で目つきも悪く、まだ怖いヤツだと思っている生徒も多いみたいだ。
けれど、俺には最初より顔が穏やかになったように見えていた。
前までつるんでいたヤツらとはバッサリと縁を切ったようだ。
そしてこのハゲ……相変わらず俺のそばにベッタリとくっついている真生も、篠宮のことは気に入っているようだった。
「なあなあ! 優希~!!」
「うるさい。行かんと言ったら行かん」
今日の真生は、いつも以上に鬱陶しい。朝からずっと俺を付け回して同じことを繰り返し言ってくる。
放課後になった今もだ。帰ろうとする俺のカバンを引っ張って離そうとしない。
「貴様、まじでいーかげんに……」
俺がそう言いかけたその時。
「朝から騒がしいけど、何してんの?」
篠宮が話しかけてきた。
「篠宮~! 朝からずっと俺が誘ってんのに、優希がYESと言わないんだよー!」
「うるさいハゲ! 貴様と2人で仲良く海とか行けるかよ!」
「そう言うなよバカ~! 別荘だぜ、めっちゃ楽しいんだぞ!」
それを聞いた篠宮は最初俺達のやり取りを見て呆れた顔をしていたが、突然ハッとして「別荘だと!?」と、驚いた後ニコッと笑った。
「こいつと2人が嫌なら、俺も行こう」
俺は冷めた顔で篠宮を見て言った。
「余計に嫌だ」
俺らがワイワイ楽しそうにしているように見えたのか、1人の女子がこっちにニコニコしながら近寄ってきた。
確か、優珠の親友の……名前は春野恵だっけ?身長は165センチくらい。黒髪ショートの活発女子。バレー部だったかな、手足が長くスラッとしている。
「なんか楽しそうな話が聞こえちゃった! 私たちも行きたい~!」
ーー私たち?
その女子の後ろから、優珠がピョコッと顔を出す。
「お前ら、話をややこしくするだけ……」
俺がそう言いかけると、真生は嬉しそうに言う。
「いいぞ! このメンバーで行こう!」
「おい、真生っ!」
俺はペースに流されそうになり、焦って声をかけると、真生が小声で俺に言う。
「おいバカ……もし来なかったら、俺は別荘でこいつらにお前の恥ずかし~昔の話をしちゃうからな」
ーーなん、だと……??
***
そして、夏休みに入って3日が過ぎた日。
篠宮と優珠、優珠の友達の春野、真生と俺の5人は別荘に向かうため電車に乗っていた。1泊2日の旅行だ。
半ば無理やり連れてこられた俺は最初は不機嫌だったが、電車に乗る頃には機嫌はすっかり直っていた。
初めて乗る電車という乗り物は予想以上にカッコいい。なにより早い!タクスィよりも早い。
俺と真生は過ぎ去っていく風景を、電車の窓にひっつきながら眺めていた。
「おい、優希、電車すげえな!」
「ああ。ものすごく興味深い」
俺は珍しく優希に同感して頷いた。
「おおおお! 優希、今の見たかよ! 車なんてあっという間に越しちまったぞ!」
「これだけ早いと時間すら飛ばしてしまうのではないか?」
ほかの乗客は俺らを見てクスクスと笑っている。
すると突然電車がトンネルに入り、俺らは「うわっ!!!」と思わずビビって声を上げた。
真っ暗な空間を走る電車。ゴーーーッと鳴り響く音。俺と真生はお互いに顔を合わせる。
「おい、優希、外が見えないぞ」
「まさか……異次元に飛ばされたのか?」
すると急に電車がトンネルから外に出て、俺らは「「うおっ!!」」とビビってまた声を上げる。
外の景色を見た俺らは目を輝かせて、おーー!!!と手を叩いた。
「お前ら……マジでなにやってんの?」
優珠と春野はそんな俺達を見て恥ずかしそうに俯き、篠宮は呆れた顔をしていた。
「「篠宮、電車だぞ」」
俺らは篠宮を緊張した面持ちで見た。
「知ってるよ!! いい加減その恥ずかしい遊びやめて、席つけ!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる