魂×魂 〜魔王が中学生になったら?そりゃやばいでしょ〜

日芽乃

文字の大きさ
20 / 56
第3章

別荘

しおりを挟む
 俺らが座席に大人しく座ると、篠宮は自分のリュックからトランプを出した。
 それを見た真生は目を輝かせた。

「おー! カードゲーム! 優希、勝負しようぜ。負けたらジュース奢りだからな」

 俺は「その話乗った」と言うと、篠宮からトランプを受け取り全員に配った。

 1時間30分くらいかかっただろうか、電車は鎌倉駅に着き、俺らはそこから江ノ電という小さい電車に乗り換えた。

 俺の片手には戦利品のジュース。ドヤ顔で真生の目の前で飲んでやった。
 悔しがる真生の肩を篠宮がポンポンと叩きなぐさめていた。

 そして、七里ヶ浜しちりがはまという駅で降りる。目の前はもう、すぐそこが海だ。

 改札を出ると、そこに1人の同い年くらいの女が立っていた。

「優希~! 真生~!」

 そいつは俺らを見つけると、名前を呼びながら手を振った。
 俺と真生、そして篠宮、優珠、春野も彼女を見て固まる。

「な、だっ、誰だよ、あの美人!!」

 篠宮が俺と真生を交互に見て「紹介しろよ!!」と言ってきたが、優希の記憶を探ってみてもその女は出てこない。

 色白で髪は銀色ストレートロング。瞳は赤色と水色のオッドアイ。身長は俺と同じくらい。

ーー誰だこのスタイル抜群の異世界から抜け出たような美少女は。

 俺と真生は顔を見合わせて、少し考えた。が、全て察するのに時間はかからなかった。
 そして、その女のところまで2人してもうダッシュ。

「「女神か!?」」

 俺らが小声でそう聞くと、その女はニコッと笑った。

「気配消してるのによく分かったね!」
「俺ら2人のことを知ってるのは女神しかいないだろ」

 真生が、呆れたように言う。

「何しに来た?」

 俺がそう言うと女神はほっぺたを膨らましながら言う。

「最近つまらなかったのよねー。まさかここまで来て、私を仲間外れにするとか、ないよねえ?」

 俺と真生は「うわーこの女……」って顔して女神から顔をそむけた。

「あ、初めまして皆さん! 私、優希と真生の友達です! 雪白ゆきしろ佳奈かなっていうので、よろしくね!」

ーーもう、好きなようにしてくれ。

 俺はもう面倒くさくなり、全てどーでも良くなってきていた。

「ねえねえ! その瞳コンタクト!?」
「オッドアイっていうんだよな、めっちゃかっけえー!」
「髪、染めてるの? すごく綺麗!」

 俺と真生がうんざりとした顔をしている横で、篠宮と春野と優珠3人は興味津々に女神に話しかけていた。

 佳奈という女神も加わり、俺ら6人は駅から少し坂を登った所にある、小洒落こじゃれた一軒家に到着した。

「素敵~~!!」

 優珠と春野が目を輝かせる。

『電車に初めて乗ったってことは、お前も始めてきたんだろ?』

 俺は真生にテレパシーで語りかけた。

『あぁ、記憶操作した時、家族の記憶も全部見させてもらって。その時、この別荘の存在も知ってさ。ずっと海外生活だったから、たまに日本に帰ってきた時は俺の家族、ここに泊まってたんだよ。家族の記憶では俺も一緒にな』
『なるほど』

 俺らは、玄関の鍵を開けて中に入る真生に続く。なんだか新しい木の香りがした。
 二階建てで、玄関入ると正面に2階に上がる階段。右には10帖はある開けたリビングスペースとキッチン。

「ここの部屋は、ばーちゃんの寝室だから開けないでな~」

 真生は玄関入って左の部屋を指さしながら言った。

「トイレと風呂は?」

 篠宮が聞くと、真生が指を指す。

「そこ。階段通り越して突き当たり」
「リビングひろーい! 窓おっきい~!」

 春野が興奮気味にあっち見たりこっち見たりしている。

「夕方くらいに母さんも到着するから、とりあえず荷物置いて、俺らはそれまで楽しもうぜ!」

 そう言って真生は階段を指さした。

「2階行くぞ!」

 俺達は真生について2階に上がる。
 階段を上がると左にはすぐに部屋があり、右には廊下。その先に2部屋あるようだった。

「この左の部屋は両親の寝室だから、立ち入り禁止な」

 そして右の方向を指さして真生は言った。

「んで、そっちの2部屋、女子と男子で1部屋ずつ使おう」

 俺らは男子と女子に分かれてそれぞれ部屋に入り、荷物を置きに行った。

「あー! 重かった!」

 篠宮はそう言って荷物を置くと、その場に大の字に寝そべった。

 部屋にはテーブルがひとつ置いてあるだけで何にも無かった。

ーー床は畳か。良いな。

 俺はキョロキョロと周りを見渡し、奥まで進むと窓を開ける。

「ベランダ、隣の部屋と繋がってるのか」
「あー、そうそう。女子の部屋と繋がってるからな。特に篠宮、のぞくなよ~」
「覗かねーよ!!」

「11時か……この後どうすんの?」

 俺がそう聞くと真生は即答した。

「そりゃあ、ここまで来たんだから鎌倉観光しないでどうするのさ!」

 篠宮がうなずく。

「確かにそうだ! とりあえず昼飯! んで観光だな!!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...