魂×魂 〜魔王が中学生になったら?そりゃやばいでしょ〜

日芽乃

文字の大きさ
49 / 56
第6章

破壊神現る

しおりを挟む
 俺達が屋上にたどり着くと、そこに屋上から地上を見下ろしている人影が見えた。
 俺達はゆっくりと歩いてその人影に近づくと、そいつは驚いたように俺達を見た。

「え! なんで皆ここにいるの?」

 それはクラス委員の藤原だった。

「お前こそ! なんでこんな所に?」
「太陽が見えなくなって……何が起きてるんだろうって。なんか凄く不安に押しつぶされそうになって、いてもたってもいられなかった……」

 そう言うと、藤原は俺達に聞いた。

「これから、何か起こるの?」
「俺達にも分からない……けど、ここは恐らく危険だから、とりあえず離れよう」

 そう言って彼女に近づこうとした誠を、俺と真生が手でふさぎ、止める。

「何が起こるかは、お前が1番よく知っているんじゃないか?」

 そう言った俺を誠が驚いて見た。真生も藤原を見て冷や汗を垂らしながら言う。

「お前、破壊神だな? いつから、その姿で紛れ込んでいた……?」

 それを聞いた藤原はクスッと笑って俺達を見た。

「記憶操作させてもらって、体育祭の後あたりからかなー……。けど、気配消していたのに、なんで気づいたの?」
「鍵、閉まったままだったから。普通の人間はここには入って来れない」
「なるほどね……鍵、開けとけば良かった」

 そう言った後、藤原…いや破壊神が佳奈を見た。

「女神アース……」
「はっ、はい」

 俺達は女神を見て驚いて目を見開いた。彼女が、座り込みこうべれていたからだ。
 それを見て、俺は女神と破壊神の格の違いを改めて実感し、ゾッとした。

ーー女神は、いつからそうしていた!?

「こいつらはなんだ?」
「破壊神様、恐れながらお答え致します。お気づきの通り、彼らはの世界より地球を守るため私が連れて参りました」
「そこまでして、この地球の人類を守りたいか」
「……はい」

 直後。破壊神が女神に向けて目を見開くと、急に女神は後ろに吹き飛んでフェンスに激しくぶつかって倒れた。激しく咳き込む彼女の口から血が吹き出す。

「ーー!!!」
「女神!!!」

ーー今、こいつ、何をした?

 真生が女神の元に駆け寄る。

 俺が誠を見ると、彼はガタガタ震えていた。自分で避難できなさそうだと察した俺は、誠を抱えて少し離れた安全な場所に瞬時に移動すると「ここから動かないで」と伝える。そして女神の元に急いだ。

 誠はその場で腰を抜かして座り込み、その場の状況を理解しきれずにボーゼンとして呟いた。

「佳奈が……女神? 藤原が破壊神って……え、今何が起きた?」

 俺が女神の傍に駆け寄ると、真生が女神に治癒魔法を使っていた。

「女神、大丈夫か?」

 女神は弱々しく目をそっと開けて俺を見ると「だ、大丈夫」と小さい声で言った。

 俺は女神の無事を確認して少しホッとした後、ヤツを睨む。

「おい、藤原……いや、破壊神」
「なんだ、小僧」
「小僧ではない。俺様は他の世界から来た魔王だ」
「異世界から来た魔王が、この地球を守る義理はないのではないか?」
「ああ、無いさ。義理はない。けどな、貴様の考え方が気に食わん」

 破壊神は俺を睨むと「神である我の考えが気に食わないと、そうもハッキリと言うとは良い度胸だな」と言った。

「神であろうと誰だろうと、地球で生きている人間のことをちゃんと知ろうともしないで、勝手に決めてんじゃねえ!!」

 俺はそう怒鳴って、ドンッと地面を殴ると地面に亀裂が入る。

「心外だ。われはちゃんと人間のことを知った上で滅ぼすことにしたのだ」

俺は破壊神の顔を真っ直ぐに見て聞いた。

「お前は、この地球上の全ての人間が最低だと本当に思っているのか?」

 俺がそう聞くと、破壊神は俺を真顔で見つめて「どういうことだ」と聞いた。

「貴様が見ているのは、人間の悪い面だけのように思えるがな」

 破壊神は俺の言葉を聞いているのか、黙って俺を見つめている。

「もし、貴様の主観のみで気に食わぬ人間どもを排除しようというのなら、貴様の言う人類の醜い部分と同じではないか。それを強行しようというのなら、破壊神こそ自分の理想と異なるを受け入れぬ、みにくい生命体ではないか!」

 そう言い切った俺を皆が見ていた。俺は言葉を続けた。

「確かにこの地球上に醜い者は沢山いる。だが俺は、そうでない人たちのことも知っている。だから、この地球を守ると決めた……」

 俺はそう言うと破壊神をまっすぐ見て、そして言った。

「地球の人類を破滅させたければ、俺様を倒してからにしてくれないか」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...