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第一章 大いなる海竜種
18 護衛隊という名の変人苦労人集団
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「ぷはーっ、広かったーっ‼」
案内された船室のベッドに飛び込む。メイとは別室で、ランと同室だ。
この艦内は何階かに分かれていて、医務室と食堂は地上一階だ。船室は地上階にあり、武器庫などは甲板よりも下の階層にあるという。
船室は二人一部屋らしく、二段ベッドが一つと机が二つ据え付けられている。ドアはスライド式だ。オープン式じゃないんですね、と中佐に言うと、開けたドアに衝突する事故が相次いだらしく、キレて隊員みんなで付け換えたらしい。
仲いいな護衛隊。
最初に行った医務室ではランが医務班の人たちと話が盛り上がっており、食堂では先程のボブさん(二十一歳参謀部)と他数人の隊員と冒険者が朝食の準備をしていて、いい匂いが立ち込めていた。メイも手伝いをしていた。
「明日の昼頃に巣の近くの島に着くのか……。ってこの島知ってる高級リゾート島じゃん和ノ国の旅雑誌でも紹介されてたし」
寝転んだまま渡された地図を広げ、指で辿りながらこれからの数日間の流れを確認する。明日行くところがリゾートであるのに気付いてテンションが上がった。こんな青い海そうそう見られない。が、今は確認だ確認、と頭を振って確認作業に戻る。
これは、あくまで予定でもそのときになって迅速に行動することができるようにしておくための準備だ。計画通りに物事が進むのはほとんど無いに等しいのが常だが、予習はしっかりとしておくこと。師匠に教わったことだ。
ぶつぶつと呟きながら地図を指で追っていると、コンコンと扉が叩かれた。
「アカリいるか? 朝食できたってよ」
「あー、いるいる。ちょっと待ってくれ靴履く」
「おー」
朝食の野菜スープは、野菜がこれでもかと入ったスープだった。大量に入っていたのにパクパクといけたのはひとえにしっかり煮込まれて、具がとろとろになっていたからだろう。味付けもコンソメ味に胡椒というシンプルなものだったが、香り付けのバジルがさらに食欲をそそった。
パンはバターの風味がよく効いていて、少し固めに焼かれていたのでスープに浸けてもよく合い、美味しかった。ボブさんはパン職人の資格も持っているらしい。今は色彩の資格を取るために勉強中だというが、この人は一体何を目指しているんだ。
「ていうか、この隊の人たちってそういう業務と関係ないところでもスペック高くないか?」
食堂の端の方でミニマジックショーを開催して拍手喝采を浴びているリサさん(十九歳調査班)を眺めて呟く。マジシャンな軍人ってなんだよ。
すると近くでパンを頬張っていたレオさん(二十三歳機関班)がもごもごと言った。
「もひぇひふぁひふぁふんふぉふふぁふふぉひひふぁふふぁふぁふぁ」
「すみませんなんて言ってるかさっぱり分かりません」
「護衛隊は軍とは少し違うからな。戦えるだけじゃだめなんだよ」
「戦えるだけではだめ、とは?」
一緒に朝食を食べていたメイが首を傾げて聞く。
「王宮にずっといがちな王族の方々を楽しませる為にも、我々護衛隊は色んな芸を持っていないといけないんだ」
実にもっともな答えだが、なんだかその目が疲れているような気がして、そっと付け加える。
「…………本音は?」
「我々の目を掻い潜って街へと繰り出そうとする王族の方々が多すぎるから芸で釣ってせめて仕事が終わるまでは王宮にいてもらう為だな」
「…………お仕事、頑張ってください」
「…………ありがとな、少年少女」
多分ベネディクトもその一人なんだろうなと思って、レオさんならびに護衛隊の方々に心から同情した。
案内された船室のベッドに飛び込む。メイとは別室で、ランと同室だ。
この艦内は何階かに分かれていて、医務室と食堂は地上一階だ。船室は地上階にあり、武器庫などは甲板よりも下の階層にあるという。
船室は二人一部屋らしく、二段ベッドが一つと机が二つ据え付けられている。ドアはスライド式だ。オープン式じゃないんですね、と中佐に言うと、開けたドアに衝突する事故が相次いだらしく、キレて隊員みんなで付け換えたらしい。
仲いいな護衛隊。
最初に行った医務室ではランが医務班の人たちと話が盛り上がっており、食堂では先程のボブさん(二十一歳参謀部)と他数人の隊員と冒険者が朝食の準備をしていて、いい匂いが立ち込めていた。メイも手伝いをしていた。
「明日の昼頃に巣の近くの島に着くのか……。ってこの島知ってる高級リゾート島じゃん和ノ国の旅雑誌でも紹介されてたし」
寝転んだまま渡された地図を広げ、指で辿りながらこれからの数日間の流れを確認する。明日行くところがリゾートであるのに気付いてテンションが上がった。こんな青い海そうそう見られない。が、今は確認だ確認、と頭を振って確認作業に戻る。
これは、あくまで予定でもそのときになって迅速に行動することができるようにしておくための準備だ。計画通りに物事が進むのはほとんど無いに等しいのが常だが、予習はしっかりとしておくこと。師匠に教わったことだ。
ぶつぶつと呟きながら地図を指で追っていると、コンコンと扉が叩かれた。
「アカリいるか? 朝食できたってよ」
「あー、いるいる。ちょっと待ってくれ靴履く」
「おー」
朝食の野菜スープは、野菜がこれでもかと入ったスープだった。大量に入っていたのにパクパクといけたのはひとえにしっかり煮込まれて、具がとろとろになっていたからだろう。味付けもコンソメ味に胡椒というシンプルなものだったが、香り付けのバジルがさらに食欲をそそった。
パンはバターの風味がよく効いていて、少し固めに焼かれていたのでスープに浸けてもよく合い、美味しかった。ボブさんはパン職人の資格も持っているらしい。今は色彩の資格を取るために勉強中だというが、この人は一体何を目指しているんだ。
「ていうか、この隊の人たちってそういう業務と関係ないところでもスペック高くないか?」
食堂の端の方でミニマジックショーを開催して拍手喝采を浴びているリサさん(十九歳調査班)を眺めて呟く。マジシャンな軍人ってなんだよ。
すると近くでパンを頬張っていたレオさん(二十三歳機関班)がもごもごと言った。
「もひぇひふぁひふぁふんふぉふふぁふふぉひひふぁふふぁふぁふぁ」
「すみませんなんて言ってるかさっぱり分かりません」
「護衛隊は軍とは少し違うからな。戦えるだけじゃだめなんだよ」
「戦えるだけではだめ、とは?」
一緒に朝食を食べていたメイが首を傾げて聞く。
「王宮にずっといがちな王族の方々を楽しませる為にも、我々護衛隊は色んな芸を持っていないといけないんだ」
実にもっともな答えだが、なんだかその目が疲れているような気がして、そっと付け加える。
「…………本音は?」
「我々の目を掻い潜って街へと繰り出そうとする王族の方々が多すぎるから芸で釣ってせめて仕事が終わるまでは王宮にいてもらう為だな」
「…………お仕事、頑張ってください」
「…………ありがとな、少年少女」
多分ベネディクトもその一人なんだろうなと思って、レオさんならびに護衛隊の方々に心から同情した。
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