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第二章 人魚の宴
3 二人の会合
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アカリとメイが喧嘩をした次の日。天気は快晴。威勢のいい客寄せの声が飛び交う市場を薬草の束を抱えて歩く青年。ランだ。その頭上ではルリも同じように薬草の入った袋を咥えて飛んでいる。
「帰ったらこれを薬にしないとね」
『グル』
鷲程の大きさである第二形態のルリはランの言葉に力強く頷いて袋を咥え直す。竜であるルリはそれだけで周りの視線を集めやすい。そしてこの世の中、竜を連れて歩いているのは大体が魔術師か医者__それもかなりの腕前の__だ。
周囲の人々はルリを見て、そしてランを見て尊敬の混ざった眼差しを向ける。
だが、それ以外の眼差しもある。
「凄いなぁ、まだあんなに若いのに」
「あら、よく見たらイケメンじゃない」
「ちょっとあんた、声かけて来なさいよ!」
「えー? 恥ずかしーい!」
黄色い声の発生源である若い獣人と人間の女子二人組をちらりと見たランはにこりと微笑みかける。たったそれだけの事できゃあ、と頬を染めるのだから彼の顔の良さは予想がつくかと思う。
しかしランはその顔をあまり良くは思っていなかった。
(やはりこの顔は目立つな……。整形魔術でもかけてやりたいけど……)
考えながら歩いて、やがてあるカフェの前で立ち止まる。
「ここ…………。で、お茶しよっか」
僕疲れちゃった、とルリに微笑んで手を差し出す。
『ギュ』
ルリはその手に咥えていた袋を持たせ、見る見るうちに第一形態になった。そしてランの肩に乗る。彼はそれに満足げに頷くとカランカラン、とドアベルを鳴らして店内に入った。
「そのお店のおすすめは? ……そう、ならその紅茶を一杯と、えぇっと、このタルトを一切れ。ああ、あと綺麗なお水を口が広めのカップに。……うん、この子が飲みやすいようにね」
ウェイトレスに愛想のいい笑みで注文をして、ほうと息をつく。机の反対側の椅子に薬草を置いて、側の床に降ろした鞄からぶ厚い医学書と眼鏡を取り出したランはそれを机に広げた。
読書用の眼鏡をかけた彼は普段よりも知的な雰囲気を醸し出し、先程から集めていた店内の視線をよりいっそう集める。
やがて注文したものを運んできたウェイトレスが医学書に注意しながら机に紅茶を置いた。
「こちらご注文の品と、こちらはそのドラゴンさんにおまけです」
そう言って差し出されたのは果物が小さな皿に山になっているものだ。この店のケーキやタルトは大ぶりな果物を多く使っている。その規定の大きさに達しなかったのであろう果物たちが小皿から溢れんばかりに盛られている。
「ありがとう。よかったね、ルリ」
『キャウ!』
さっそく山に飛び込んだルリに笑うラン。ウェイトレスは微笑ましげに目尻を下げ、一礼して戻ってゆく。
「さて、と」
それを確認したランは周りに気付かれないよう、そっと指を動かして魔術式を書いた。最後にトントン、とそれを指先で叩くと一瞬かれの周りを薄いベールが取り囲む。
それが消えると、先程まで痛いほどだった視線は彼のことなど忘れたかのように外された。
ランはふ、と笑うと唯一彼以外でベールの中に入っていた人物、彼と背中合わせのように別の席に座っていた金融マン風の男性に語りかけた。
「首尾はどう、兄さん?」
兄さん。
二人の間でそんな言葉がいやに響いた気がした。
そう呼ばれた男性な小さくため息をつく。
「そのような呼称はお止めください。お戯れが過ぎます」
振り返ることなく返された声にランは上機嫌に笑った。
「こう呼んだら一瞬、君の鉄仮面が緩むからね」
行き交うのは世界で通用する共通語では無く、テッラ帝国の、それも古く、テッラ王国時代の言葉だ。今となっては理解出来る者なんてほとんどいない言葉。
しかしそれでも不都合もなく二人は会話をする。
面白いんだよ、と茶目っ気をたっぷりと含んだ言葉に男性はもう一度ため息をついた。それには呆れの感情が乗せられている。
これ以上文句を言ってもランが更に面白がるだけだともう分かっている彼は最初のランの質問に答えた。
「順調と言えば順調です。恐らくもう長くはお保ちにならないでしょう。例の件につきましては思っていたよりも苦戦していますが想定内です」
すらすらと紡がれた内容。周りを警戒しているのかかなりの単語が省略されているがランはその全てを理解した。
そしてその上であれ、とティーカップを手に首を傾げた。
「彼ら、それなりに見込みあったと思うんだけど。彼らが弱かったのかな、それともあっちが強かったのかな?」
口調では不思議そうだがその顔は微笑みを絶やさない。あくまで全てが想定の範囲内で進行している中でのニュアンスの違いが気になった、せいぜいそんなところだ。
男性はそんなランの思考はよく知っていた。だから彼の求めるものを素早く提示する。
「後者です。これが今回の報告の目玉のつもりだったのですがね」
もう少し勿体つけたかった、と暗に言った男性にランはつまらなそうに言う。
「どうせそれ以外は全部レールの上なんでしょ、わかるよそれくらい」
「では他の報告を省略致します」
「うん、それがいいよ」
彼が満足そうに頷いたのを感じた男性はコップの水で唇を湿らせてから口を開いた。彼の手元には何も無い。情報は全て、脳内に叩き込まれてあった。
「紅い彼が副団長に就任しました。それ以降、勢いを盛り返しています。あそこは良くも悪くも一心不乱に突き進むきらいがありますから。そんな集団において正義感が服を着て歩いていると言っても過言ではない彼が良い柱になったと思われます。それに彼自身の能力も申し分ない。剣術は勿論、それに強い魔力がプラスされるのですからこちらとしてはあっちにやってしまったのが悔やまれる程です」
分析を加えて話す男性にランは仕方ないじゃんと口を尖らせた。さすがにこれはお手上げ、と言うように。
「ガードが固すぎるんだよ。そんなに大事な駒ならもっと他に手はあっただろうに。……ホンット、頭はいいのに頭悪い」
急に不機嫌になった声に男性は肩を竦める。少し黙って、軽く言った。
「じゃあ、壊しますか」
表情を変えず平坦に言われた言葉にランは苦笑する。
「たしかにそれも手の一つだ。けど、彼は放っておく方がいいよ。きっといつか自分からこっちに来て、僕らの目的の為に尽力してくれるさ。あの子は根は賢者だからね」
自分の考えに絶対的な自信を持っている口調。それにずっと無表情だった男性は小さく微笑んだ。
「それでは」
一瞬浮かべた微笑みを消し、男性は一息ついた。
「貴方様の報告をお願い致します」
その言葉にランは変わりないよ、と返す。何度も繰り返され、まう飽きたと言いたげな声色である。
「いつもどおり薬作って売って……ってだけ。あとはこないだもルリに届けさせた手紙にも書いたように女の子に魔術を教えてる」
少し行儀悪くタルトを食べていたフォークを振って不満げに言った。
「ちょっと心配性が過ぎないかい?」
「自らの生きがいを全力で守ろうとして何が悪いのです?」
ぴしゃりと言い返されたランは片頬を膨らませる。男性はそれに、と続けた。
「あの刀を引っ提げている少年……。アカリ、と言いましたっけ。彼と親しくするのはあまりお勧めできません」
「……へぇ?」
片眉を上げたランは怒りを堪えるように次を促す。感情の無い声は彼について調べたのですが、と話した。
「彼の実家は和ノ国、タカドの大旅館です。彼は子供の頃からそこで手伝いをして育っています。宿泊客の中にも馴染みの者がいるようです。これがどういう意味か、お分かりでしょう」
「……アカリ君は田舎の宿屋って言ってたけど」
「謙遜も含んでいるでしょうがね……。タカドはある意味で隔離された場所です。あそこは人口も少ないですし、ある娯楽は殆どが大人向け。彼が人口が多くて面白い娯楽があるイコール都会と認識するのも無理はありません」
「………………」
黙り込んでしまったランに男性はため息をついた。グラスの縁を指先で撫でながら言う。
「ともかく、人付き合いはほどほどにしてくださいませ」
機嫌が悪い、というのをオーラのように発し始めたランに更に言おうとしたことを飲み込む。彼を不愉快にさせるようなことはしたくないし、正直あまり確証のないことでもあるからだ。
(アカリという少年の紅い瞳……。あれは血の色ではなく明らかに霊力の色だ。霊力の色が瞳に出てるなんて、人であるはずがない。人でたまるか。得体の知れないモノと関わってほしくはないのだが、証拠がないしな……)
きっと今思っていることを言ってもランは取り合わないだろう。男性は念には念を入れる性格だが、ランはそのようにして自由が縛られるのを好まない。
そんな思案を男性がしているうちにランは立ち上がった。
「大丈夫だよ、うまくやってみせるさ」
きゅっと口角を持ち上げて微笑んで見せた顔を男性は初めて振り返り仰ぎ見る。
実はこの二人、言葉を交わすことはあれどこのようにして顔を見合わせるのは数年振りであった。
「……前より若返ってない? やっぱり僕より少し上にしか見えないよ、兄さんでいいじゃないか」
「もう三十路越えですよ、ご冗談はよしてください。私といたしましては貴方様に身長を越されたことの方がショックですが」
「いつまでも子供じゃないんだから。それ、頭に入れといてよ。……ルリ、行くよ」
代金を机に置いてから荷物を持ってじやあね、と歩いて行く後ろ姿を見送った男性は今日何度目かもう分からないため息を吐いた。
「前は俺の胸くらいまでしかなかったのに……」
子供の成長ってこわい。
小さな呟きはカフェのざわめきの中に消えた。
「帰ったらこれを薬にしないとね」
『グル』
鷲程の大きさである第二形態のルリはランの言葉に力強く頷いて袋を咥え直す。竜であるルリはそれだけで周りの視線を集めやすい。そしてこの世の中、竜を連れて歩いているのは大体が魔術師か医者__それもかなりの腕前の__だ。
周囲の人々はルリを見て、そしてランを見て尊敬の混ざった眼差しを向ける。
だが、それ以外の眼差しもある。
「凄いなぁ、まだあんなに若いのに」
「あら、よく見たらイケメンじゃない」
「ちょっとあんた、声かけて来なさいよ!」
「えー? 恥ずかしーい!」
黄色い声の発生源である若い獣人と人間の女子二人組をちらりと見たランはにこりと微笑みかける。たったそれだけの事できゃあ、と頬を染めるのだから彼の顔の良さは予想がつくかと思う。
しかしランはその顔をあまり良くは思っていなかった。
(やはりこの顔は目立つな……。整形魔術でもかけてやりたいけど……)
考えながら歩いて、やがてあるカフェの前で立ち止まる。
「ここ…………。で、お茶しよっか」
僕疲れちゃった、とルリに微笑んで手を差し出す。
『ギュ』
ルリはその手に咥えていた袋を持たせ、見る見るうちに第一形態になった。そしてランの肩に乗る。彼はそれに満足げに頷くとカランカラン、とドアベルを鳴らして店内に入った。
「そのお店のおすすめは? ……そう、ならその紅茶を一杯と、えぇっと、このタルトを一切れ。ああ、あと綺麗なお水を口が広めのカップに。……うん、この子が飲みやすいようにね」
ウェイトレスに愛想のいい笑みで注文をして、ほうと息をつく。机の反対側の椅子に薬草を置いて、側の床に降ろした鞄からぶ厚い医学書と眼鏡を取り出したランはそれを机に広げた。
読書用の眼鏡をかけた彼は普段よりも知的な雰囲気を醸し出し、先程から集めていた店内の視線をよりいっそう集める。
やがて注文したものを運んできたウェイトレスが医学書に注意しながら机に紅茶を置いた。
「こちらご注文の品と、こちらはそのドラゴンさんにおまけです」
そう言って差し出されたのは果物が小さな皿に山になっているものだ。この店のケーキやタルトは大ぶりな果物を多く使っている。その規定の大きさに達しなかったのであろう果物たちが小皿から溢れんばかりに盛られている。
「ありがとう。よかったね、ルリ」
『キャウ!』
さっそく山に飛び込んだルリに笑うラン。ウェイトレスは微笑ましげに目尻を下げ、一礼して戻ってゆく。
「さて、と」
それを確認したランは周りに気付かれないよう、そっと指を動かして魔術式を書いた。最後にトントン、とそれを指先で叩くと一瞬かれの周りを薄いベールが取り囲む。
それが消えると、先程まで痛いほどだった視線は彼のことなど忘れたかのように外された。
ランはふ、と笑うと唯一彼以外でベールの中に入っていた人物、彼と背中合わせのように別の席に座っていた金融マン風の男性に語りかけた。
「首尾はどう、兄さん?」
兄さん。
二人の間でそんな言葉がいやに響いた気がした。
そう呼ばれた男性な小さくため息をつく。
「そのような呼称はお止めください。お戯れが過ぎます」
振り返ることなく返された声にランは上機嫌に笑った。
「こう呼んだら一瞬、君の鉄仮面が緩むからね」
行き交うのは世界で通用する共通語では無く、テッラ帝国の、それも古く、テッラ王国時代の言葉だ。今となっては理解出来る者なんてほとんどいない言葉。
しかしそれでも不都合もなく二人は会話をする。
面白いんだよ、と茶目っ気をたっぷりと含んだ言葉に男性はもう一度ため息をついた。それには呆れの感情が乗せられている。
これ以上文句を言ってもランが更に面白がるだけだともう分かっている彼は最初のランの質問に答えた。
「順調と言えば順調です。恐らくもう長くはお保ちにならないでしょう。例の件につきましては思っていたよりも苦戦していますが想定内です」
すらすらと紡がれた内容。周りを警戒しているのかかなりの単語が省略されているがランはその全てを理解した。
そしてその上であれ、とティーカップを手に首を傾げた。
「彼ら、それなりに見込みあったと思うんだけど。彼らが弱かったのかな、それともあっちが強かったのかな?」
口調では不思議そうだがその顔は微笑みを絶やさない。あくまで全てが想定の範囲内で進行している中でのニュアンスの違いが気になった、せいぜいそんなところだ。
男性はそんなランの思考はよく知っていた。だから彼の求めるものを素早く提示する。
「後者です。これが今回の報告の目玉のつもりだったのですがね」
もう少し勿体つけたかった、と暗に言った男性にランはつまらなそうに言う。
「どうせそれ以外は全部レールの上なんでしょ、わかるよそれくらい」
「では他の報告を省略致します」
「うん、それがいいよ」
彼が満足そうに頷いたのを感じた男性はコップの水で唇を湿らせてから口を開いた。彼の手元には何も無い。情報は全て、脳内に叩き込まれてあった。
「紅い彼が副団長に就任しました。それ以降、勢いを盛り返しています。あそこは良くも悪くも一心不乱に突き進むきらいがありますから。そんな集団において正義感が服を着て歩いていると言っても過言ではない彼が良い柱になったと思われます。それに彼自身の能力も申し分ない。剣術は勿論、それに強い魔力がプラスされるのですからこちらとしてはあっちにやってしまったのが悔やまれる程です」
分析を加えて話す男性にランは仕方ないじゃんと口を尖らせた。さすがにこれはお手上げ、と言うように。
「ガードが固すぎるんだよ。そんなに大事な駒ならもっと他に手はあっただろうに。……ホンット、頭はいいのに頭悪い」
急に不機嫌になった声に男性は肩を竦める。少し黙って、軽く言った。
「じゃあ、壊しますか」
表情を変えず平坦に言われた言葉にランは苦笑する。
「たしかにそれも手の一つだ。けど、彼は放っておく方がいいよ。きっといつか自分からこっちに来て、僕らの目的の為に尽力してくれるさ。あの子は根は賢者だからね」
自分の考えに絶対的な自信を持っている口調。それにずっと無表情だった男性は小さく微笑んだ。
「それでは」
一瞬浮かべた微笑みを消し、男性は一息ついた。
「貴方様の報告をお願い致します」
その言葉にランは変わりないよ、と返す。何度も繰り返され、まう飽きたと言いたげな声色である。
「いつもどおり薬作って売って……ってだけ。あとはこないだもルリに届けさせた手紙にも書いたように女の子に魔術を教えてる」
少し行儀悪くタルトを食べていたフォークを振って不満げに言った。
「ちょっと心配性が過ぎないかい?」
「自らの生きがいを全力で守ろうとして何が悪いのです?」
ぴしゃりと言い返されたランは片頬を膨らませる。男性はそれに、と続けた。
「あの刀を引っ提げている少年……。アカリ、と言いましたっけ。彼と親しくするのはあまりお勧めできません」
「……へぇ?」
片眉を上げたランは怒りを堪えるように次を促す。感情の無い声は彼について調べたのですが、と話した。
「彼の実家は和ノ国、タカドの大旅館です。彼は子供の頃からそこで手伝いをして育っています。宿泊客の中にも馴染みの者がいるようです。これがどういう意味か、お分かりでしょう」
「……アカリ君は田舎の宿屋って言ってたけど」
「謙遜も含んでいるでしょうがね……。タカドはある意味で隔離された場所です。あそこは人口も少ないですし、ある娯楽は殆どが大人向け。彼が人口が多くて面白い娯楽があるイコール都会と認識するのも無理はありません」
「………………」
黙り込んでしまったランに男性はため息をついた。グラスの縁を指先で撫でながら言う。
「ともかく、人付き合いはほどほどにしてくださいませ」
機嫌が悪い、というのをオーラのように発し始めたランに更に言おうとしたことを飲み込む。彼を不愉快にさせるようなことはしたくないし、正直あまり確証のないことでもあるからだ。
(アカリという少年の紅い瞳……。あれは血の色ではなく明らかに霊力の色だ。霊力の色が瞳に出てるなんて、人であるはずがない。人でたまるか。得体の知れないモノと関わってほしくはないのだが、証拠がないしな……)
きっと今思っていることを言ってもランは取り合わないだろう。男性は念には念を入れる性格だが、ランはそのようにして自由が縛られるのを好まない。
そんな思案を男性がしているうちにランは立ち上がった。
「大丈夫だよ、うまくやってみせるさ」
きゅっと口角を持ち上げて微笑んで見せた顔を男性は初めて振り返り仰ぎ見る。
実はこの二人、言葉を交わすことはあれどこのようにして顔を見合わせるのは数年振りであった。
「……前より若返ってない? やっぱり僕より少し上にしか見えないよ、兄さんでいいじゃないか」
「もう三十路越えですよ、ご冗談はよしてください。私といたしましては貴方様に身長を越されたことの方がショックですが」
「いつまでも子供じゃないんだから。それ、頭に入れといてよ。……ルリ、行くよ」
代金を机に置いてから荷物を持ってじやあね、と歩いて行く後ろ姿を見送った男性は今日何度目かもう分からないため息を吐いた。
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小さな呟きはカフェのざわめきの中に消えた。
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