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1話
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夕暮れ時の空は眩いオレンジ色。
絵の具で塗られたように美しいグラデーションをもった雲。
そんな放課後の帰り時、俺、長瀬蒼 (ながせあお) は幼なじみとのんびり家に帰っていた。
俺の隣にいるこの女子が俺の幼なじみの斎藤ミヤ (さいとうみや)。
肩ぐらいまでのショートカットの普通の女子中学生。特に筆記することはないくらい普通なやつである。
あえて言えば九州出身のやつなので微妙にアクセントが違ったり、博多弁でしゃべる時がある。普段は使わないんだが、つい使ってしまうらしい。癖ってやつだな。
別に、幼なじみだからってみんなが期待するようなイチャイチャする関係じゃない。
普通の女友達より親しくて、小学校から一緒のクラスなのでお互いのことはなんとなくわかる程度だ。
そんなもんだろ、幼なじみって。
ミヤが手を組んで腕をぎゅーっと前に出しながら言った。
「ふぁ~…疲れた~」
俺は苦笑して言った。
「今日の授業なんてガイダンスばっかだっただろ。そんな疲れることしてないぞ?」
新学期が始まったばかりなのでそんな本格的な授業はやらない。
教科担任の先生に自己紹介をやらされたり、これからこんな授業をしていきます、みたいな話をしただけだ。
ミヤがちょっと笑って
「まぁね~。
…でも、宿題出されちゃったのやだなー。
終わる気がしないよ…」
言いながらげんなりする。
ミヤの成績は中の下というところなので、春休み明けのテストまでに出す課題もきっとまだ終わらせていないだろう。
「おい、ミヤ」
「なぁに?」
くる、と俺の方を向き直る。
「課題、一緒にやんないか?
期限近いからそろそろやらないと」
ミヤの表情がぱあっと明るくなる。
「蒼くん教えてくれるの!?」
「おう、いいぞ。」
俺は一応学級委員だから、人にもそれなりに教えられる。
「じゃあ、蒼くんの家ね!」
にっこり、と笑うミヤ。
俺もつられて微笑んだ。
「蒼くんのお家、久しぶりだね~。
華さん元気?」
華さんというのは俺の母親。
音楽事務所で働いている。
「母さんが風邪ひくと思うか?」
「ううん、思わない」
あっさり否定しやがった…。
俺の母親はバリバリのキャリアウーマンなのだ。楽しみはお金がたっぷり入った通帳を眺めること、というくらい。
俺の成長は?と聞いてやりたい。
「母さん、今日遅いからさ。
ミヤんちに連絡入れればのんびり勉強できるぜ。」
「あっ、LINE入れるの忘れてた!」
慌ててスマホを取り出してLINEする。
俺はその様子を何気なく見ていたが…
「お前、打つの早くね?」
結構な速さでタッチパネルに触れていて、それに伴ったフリック音もしている。
「え、えぇ?
そげんことなかよ」
おーい、博多弁になってんぞ。
「いやいや、速いって。
すごいな、いつの間にそんな速くなったんだよ?」
こいつがスマホを持ち始めたのって俺より遅かったのにな。
「ん~…最近LINEが多いから…」
まぁ、女子のLINEって多そうだもんな。
打ってるうちに速くなりそうだ。
そんな話をしているうちに俺の家に着いた。赤い屋根の、普通の一軒家。
玄関の鍵を開けてミヤを招き入れる。
「部屋、上がってろ」
と背中越しに声をかけると下から
「はいはーい!」
と元気なお返事。
きっと靴を揃えているところだろう。
今時珍しいくらい礼儀正しい所のあるヤツなのだ。
キッチンに入って麦茶を注いだコップをお盆に乗せて部屋へ持っていく。
俺の部屋はシンプルで必要最低限のものしかない。パソコンの乗った小さめなテーブルと四角いクッション、1時期ハマっていた推理小説がギッシリ詰まった本棚、洋服の入ったタンスにベッドなど。
ミヤはクッションに座っていた。
「あ、蒼くん。
お茶ありがと!ごめんね、私…」
立ち上がってわたわたしだす。
「いいよ。ミヤはお客さんなんだし」
俺がそう言ってやると安心したように微笑んだ。
「えへへ…ありがと、蒼くん」
俺は、こいつのふにゃっとした笑顔を見るのが好きだったりする。なんか安心するんだよね。ミヤは幼い妹が幼稚園で友達ができた、みたいな無邪気な笑顔で笑うからつられてこっちも笑顔になれる。
「ああ」
俺が望むのはこんな日常だ。
絵の具で塗られたように美しいグラデーションをもった雲。
そんな放課後の帰り時、俺、長瀬蒼 (ながせあお) は幼なじみとのんびり家に帰っていた。
俺の隣にいるこの女子が俺の幼なじみの斎藤ミヤ (さいとうみや)。
肩ぐらいまでのショートカットの普通の女子中学生。特に筆記することはないくらい普通なやつである。
あえて言えば九州出身のやつなので微妙にアクセントが違ったり、博多弁でしゃべる時がある。普段は使わないんだが、つい使ってしまうらしい。癖ってやつだな。
別に、幼なじみだからってみんなが期待するようなイチャイチャする関係じゃない。
普通の女友達より親しくて、小学校から一緒のクラスなのでお互いのことはなんとなくわかる程度だ。
そんなもんだろ、幼なじみって。
ミヤが手を組んで腕をぎゅーっと前に出しながら言った。
「ふぁ~…疲れた~」
俺は苦笑して言った。
「今日の授業なんてガイダンスばっかだっただろ。そんな疲れることしてないぞ?」
新学期が始まったばかりなのでそんな本格的な授業はやらない。
教科担任の先生に自己紹介をやらされたり、これからこんな授業をしていきます、みたいな話をしただけだ。
ミヤがちょっと笑って
「まぁね~。
…でも、宿題出されちゃったのやだなー。
終わる気がしないよ…」
言いながらげんなりする。
ミヤの成績は中の下というところなので、春休み明けのテストまでに出す課題もきっとまだ終わらせていないだろう。
「おい、ミヤ」
「なぁに?」
くる、と俺の方を向き直る。
「課題、一緒にやんないか?
期限近いからそろそろやらないと」
ミヤの表情がぱあっと明るくなる。
「蒼くん教えてくれるの!?」
「おう、いいぞ。」
俺は一応学級委員だから、人にもそれなりに教えられる。
「じゃあ、蒼くんの家ね!」
にっこり、と笑うミヤ。
俺もつられて微笑んだ。
「蒼くんのお家、久しぶりだね~。
華さん元気?」
華さんというのは俺の母親。
音楽事務所で働いている。
「母さんが風邪ひくと思うか?」
「ううん、思わない」
あっさり否定しやがった…。
俺の母親はバリバリのキャリアウーマンなのだ。楽しみはお金がたっぷり入った通帳を眺めること、というくらい。
俺の成長は?と聞いてやりたい。
「母さん、今日遅いからさ。
ミヤんちに連絡入れればのんびり勉強できるぜ。」
「あっ、LINE入れるの忘れてた!」
慌ててスマホを取り出してLINEする。
俺はその様子を何気なく見ていたが…
「お前、打つの早くね?」
結構な速さでタッチパネルに触れていて、それに伴ったフリック音もしている。
「え、えぇ?
そげんことなかよ」
おーい、博多弁になってんぞ。
「いやいや、速いって。
すごいな、いつの間にそんな速くなったんだよ?」
こいつがスマホを持ち始めたのって俺より遅かったのにな。
「ん~…最近LINEが多いから…」
まぁ、女子のLINEって多そうだもんな。
打ってるうちに速くなりそうだ。
そんな話をしているうちに俺の家に着いた。赤い屋根の、普通の一軒家。
玄関の鍵を開けてミヤを招き入れる。
「部屋、上がってろ」
と背中越しに声をかけると下から
「はいはーい!」
と元気なお返事。
きっと靴を揃えているところだろう。
今時珍しいくらい礼儀正しい所のあるヤツなのだ。
キッチンに入って麦茶を注いだコップをお盆に乗せて部屋へ持っていく。
俺の部屋はシンプルで必要最低限のものしかない。パソコンの乗った小さめなテーブルと四角いクッション、1時期ハマっていた推理小説がギッシリ詰まった本棚、洋服の入ったタンスにベッドなど。
ミヤはクッションに座っていた。
「あ、蒼くん。
お茶ありがと!ごめんね、私…」
立ち上がってわたわたしだす。
「いいよ。ミヤはお客さんなんだし」
俺がそう言ってやると安心したように微笑んだ。
「えへへ…ありがと、蒼くん」
俺は、こいつのふにゃっとした笑顔を見るのが好きだったりする。なんか安心するんだよね。ミヤは幼い妹が幼稚園で友達ができた、みたいな無邪気な笑顔で笑うからつられてこっちも笑顔になれる。
「ああ」
俺が望むのはこんな日常だ。
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