つよすぎた想い

はらわた

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プロローグ

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外でパラパラと降る雨音で僕は目を覚ました。
消し忘れていたテレビの中の女性が、優しそうな笑顔をこちらに向け1日の天気予報を伝えてくる。

僕「今日も1日雨か、」

ボソっと呟いた独り言が、外の雨音にかき消され
テレビの中の女性の声と雨音だけが僕の鼓膜を優しく叩く。

梅雨どきのじめじめした空気が、エアコンをかけていない部屋の中を漂い、天気の悪さで不機嫌な僕をより一層不快な気分にさせた。
冷房をかけようとリモコンに手を伸ばし、スイッチを押すと大分古くなったエアコンは、威嚇する犬の唸り声のような音で生ぬるい風を吐き出しはじめた。

僕「エアコン、買い換えたいなぁ」

独り言を呟きながら、僕はバスルームへと足を運ぶ。

眠そうな目を擦りながらバスルームの鏡に目をやると冴えない顔の男が映っていた。
いわゆる塩顔と呼ばれる顔つきの、お世辞でイケメンと言われるレベルの顔に僕は話し掛けた。

僕「お前は今日も絶妙に不細工だなぁ」

そう言ってシャワーの蛇口を目一杯ひねり、鏡の中の自分を湯気で覆い隠した。

シャワーを浴びて出てきた僕に、夜通ししゃべり続けたであろうテレビが疲れた様子も見せずに、今日の星座占いの第1位を発表してきた。

テレビ「今日、1番良い運勢なのは、蟹座のあなた!!」
「運命的な出会いが訪れるかも、ラッキーアイテムは、カラフルなはにわです!!」

僕「カラフルなはにわ!?」
 「誰が持ってんだよそんなの、」

テレビにツッコミを入れ、今日調子いいな、俺!!と思いながらメガネを掛けて身支度を済ませ、テレビの電源をOFFにしてアパートを出た。

形落ちのMINI COOPERに乗り込みエンジンをかけて、行きつけの図書館に向かうべく、アクセルペダルを踏み駐車場を出発した。

車の中で日曜日のラジオ番組が、外の天気に合わない陽気な音楽を流している。
ユッコユッコと音を立てて揺れるワイパーをメトロノームに見立て、ラジオの音楽を鼻歌でなぞりながらハンドルを右に切り目的地である図書館の駐車場に車を乗り入れた。

僕「あっ!!」
 「エアコン切るの忘れた、」

少し気分が良くなっていたのだが、大きなため息とともにそれもどこかえ抜けていった。
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