勇者と女魔王の日常

夜夢

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初めの出会い

全ての始まり

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 魔王の塔の最高上階は、真夜中のように暗い、光魔法で小さな明かりを照らす球体によって、月明かり程の役割を果たして貰っている。

 魔王の塔には僕以外誰も来ていない、普通の人がそうするとただの、自殺行為だが僕は違うらしい、母国で最強少年と呼ばれていたせいか、一人で魔王退治に行けと王様から命令が来て勇者にされてしまったのだが、それのおかげて王様から十年程生活に困らない金貨を貰った、付かずになってしまったけど。

 足音が塔に響き渡るだけど、ここにはもう魔王しか居ないからどんなに忙しくしても問題が無い、いや問題多ありだ少なからず僕一人じゃなくてサポートしてくれる人かドンドン攻めて行ってくれる人が居れば楽なのに王様酷すぎる。

 そんなことを考えても僕自身の足は魔王の間にスタスタとリズム良く進み、大きな扉のような物が見つかった。この扉の向こうに魔王が居るのか、今までよりも苦戦するだろう、気を引き締めていこいかないと殺られてしまう。

 大きな扉の前で大きく息を吐き出し、そしていきを吸い身体を少しでも安定して動けるように呼吸を整えた。この扉を開けたらもしかしたら、帰って来られないかもしれない、そんな不安を抱えながらゆっくりと扉を開ける。

 扉を開けすぐさま部屋に目をやる、そして驚愕した。例えば少女だと思っていた子が実は男だったと言う結末の様に、それは目を疑いたくなるものだった。何故ならそこには、魔王が居ないのだその代わりに、魔王の代理だと言いたげに大きな玉座には、僕とそんなに歳が離れていないだろう少女がそこで身を丸くしながらニヤニヤして寝ていたからだった。

 念の為周りを見渡すが、魔物やさらには罠も無いようだった、あれ、目の前の少女こそ罠なのかこれは。

 頭が困難している中少女は起き上がり体を伸ばし、目を擦りながら夢から目覚めた。

 「へっ」

 僕を見ると少女は呆気に取られたのか、力の籠もった声では無かった。そして少女に話し掛けようと近づこうとしたら、大きな玉座の隠れてしまい一人で何がブツブツと言っている。

 気になったのでそっと少女を見ると、顔をあかめて「あぁぁぁぁ」って言ったり、「でもでも」とか言い、横に首を振ったり縦に振ったりとしている。大丈夫かな、そんな事ない大丈夫な筈が無い魔王が今居ないという事は援軍を引く連れて来る可能性も出て来る筈だ、少女を護りながら強敵を倒していくのは難しい最悪の時を想定して今すぐこの子を連れ出し逃げ出すのが適作だろう。手を掴もうとすると。

 「あ……あの……そ、その」

 モジモジしている少女は何かを訴えたいのだろうが、今は魔物達の事を想定して逃げなくてはならない。

 「早くして!」

 急かしたように言うと、少女の手を掴んで、駈け出した。少女も意を決したかの様に大きく……

 「わ、私」

 「うん」

 適当に返事をする。

 「貴方のことが好きです!つ、付き合って下さい」

 「うん」

 えっ、今なんて言った、好きです付き合って下さい、いやいやいや、僕等を初対面だし、なに、僕のどこがいいの?待って、僕今肯定しちゃったよね、ヤバイヤバイどうしよう。

 後ろを振り返るの少女はあまりの嬉しさに「えへへ」何て笑っていた。
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