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傷はいつしか癒やされて
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騎士団でウィルバート様は訓練を受けている。俺もそこで共に鍛えられることになった。
「王子だからと言って特別扱いはしねーからな!」
「してもらおうなんて思ってないさ」
ガルシア騎士団長がそう言ってニヤニヤ笑った。ウィルバート様はこの後に与えられる痛みに怯えて剣先が震えているが、立ち向かおうとガルシア騎士団長を睨む。
言葉通り、ウィルバート様に手加減はせず、何度もふっ飛ばされて、倒れ込む。
「おいおい。そんな弱いことで国を守れんのかよ?もっと早く動かないと格上の相手には敵わんぞ。後、右側から踏み込んでくるのが癖になってる。変則的な動きの方が読まれにくい」
「……っ………もう一回だ!」
青い目で悔しげに相手を見据えるウィルバート様。蹴られた場所が痛むのか、右足をひきずっている。
「待ってください!次は俺の番でしょう!?」
思わず飛び出してしまう。怖い……痛いのは嫌だ……。だけど、このままウィルバート様がやられてるのも嫌だ。
このガルシア騎士団長はかなり強い。俺の義兄たちとケンカのようにやり合った程度の腕では敵わないのがわかる。
「セオドア!どけ!」
ピシャリとウィルバート様が俺に言う。模擬刀を構えている。呼吸を整えて、口の端の血を拭う。
「次にちゃんとおまえも訓練してやるから、待ってろ」
ガルシア騎士団長がそう言う。ウィルバート様は必死に剣を振り回し、鋭く打ち込んで行くが、体格差もあり、剣は弾かれて腹を蹴られる。
ゲホッと咳込み、膝をつく。顎の下から蹴られてさらに倒れた。
「もう止めてください!」
ウィルバート様に駆け寄り、模擬刀を奪う。痛みで立ち上がれないようだった。
「ガルシア騎士団長!次は俺が相手になります!」
「おう。来い!」
床を蹴った数十秒後に俺もふっ飛ばされていた……。
医務室で手当てを受ける俺だったが、いつの間にかウィルバート様はいなかった。魔法で傷を癒やしてもらえばいいのに、時々、自分の身がどうでもいいように消える。
「ガルシア騎士団長、もう少し、手加減してあげたらどうです?まだウィルバート殿下もセオドアも幼いのにひどいですよ」
医務室の騎士が魔法で俺の傷を消しながら苦々しく言った。
「ひどい?あのなぁ……もっとひどい目にあいたいなら、良いけどよ」
どういうことだろう?俺を上からデカい体で見下ろしてギロッと見てくる。
「おまえら早く強くならねーと、死ぬだろ」
……ああ。なるほどとわかった。
他のやつに殺されないために早く俺とウィルバート様を強くしたいのだ。ガルシア騎士団長のしていることはイジメではない。
そのことに気づいてから、毎日訓練の後も手に血豆ができるまで剣を振り続けた。どの騎士よりも遅くまで残って訓練をした。
「セオドア大丈夫か?ちょっと必死すぎないか?」
他の騎士から心配されるが、平気だと答える。
そういえば、ウィルバート様の傷が医務室で治してないのに治ってることがあった。
「ウィルバート様、怪我は大丈夫なんですか?」
「怪我なら治ってる。大丈夫だ」
不思議だったが、その秘密をずっと教えてはくれなかった。後で俺は知ることになる。
傷を治したのはリアン様だったのだと。同時にウィルバート様が人形のようにならずにいたのは彼女のおかげだった。
俺もいつか人形から人になれるのだろうか?
「王子だからと言って特別扱いはしねーからな!」
「してもらおうなんて思ってないさ」
ガルシア騎士団長がそう言ってニヤニヤ笑った。ウィルバート様はこの後に与えられる痛みに怯えて剣先が震えているが、立ち向かおうとガルシア騎士団長を睨む。
言葉通り、ウィルバート様に手加減はせず、何度もふっ飛ばされて、倒れ込む。
「おいおい。そんな弱いことで国を守れんのかよ?もっと早く動かないと格上の相手には敵わんぞ。後、右側から踏み込んでくるのが癖になってる。変則的な動きの方が読まれにくい」
「……っ………もう一回だ!」
青い目で悔しげに相手を見据えるウィルバート様。蹴られた場所が痛むのか、右足をひきずっている。
「待ってください!次は俺の番でしょう!?」
思わず飛び出してしまう。怖い……痛いのは嫌だ……。だけど、このままウィルバート様がやられてるのも嫌だ。
このガルシア騎士団長はかなり強い。俺の義兄たちとケンカのようにやり合った程度の腕では敵わないのがわかる。
「セオドア!どけ!」
ピシャリとウィルバート様が俺に言う。模擬刀を構えている。呼吸を整えて、口の端の血を拭う。
「次にちゃんとおまえも訓練してやるから、待ってろ」
ガルシア騎士団長がそう言う。ウィルバート様は必死に剣を振り回し、鋭く打ち込んで行くが、体格差もあり、剣は弾かれて腹を蹴られる。
ゲホッと咳込み、膝をつく。顎の下から蹴られてさらに倒れた。
「もう止めてください!」
ウィルバート様に駆け寄り、模擬刀を奪う。痛みで立ち上がれないようだった。
「ガルシア騎士団長!次は俺が相手になります!」
「おう。来い!」
床を蹴った数十秒後に俺もふっ飛ばされていた……。
医務室で手当てを受ける俺だったが、いつの間にかウィルバート様はいなかった。魔法で傷を癒やしてもらえばいいのに、時々、自分の身がどうでもいいように消える。
「ガルシア騎士団長、もう少し、手加減してあげたらどうです?まだウィルバート殿下もセオドアも幼いのにひどいですよ」
医務室の騎士が魔法で俺の傷を消しながら苦々しく言った。
「ひどい?あのなぁ……もっとひどい目にあいたいなら、良いけどよ」
どういうことだろう?俺を上からデカい体で見下ろしてギロッと見てくる。
「おまえら早く強くならねーと、死ぬだろ」
……ああ。なるほどとわかった。
他のやつに殺されないために早く俺とウィルバート様を強くしたいのだ。ガルシア騎士団長のしていることはイジメではない。
そのことに気づいてから、毎日訓練の後も手に血豆ができるまで剣を振り続けた。どの騎士よりも遅くまで残って訓練をした。
「セオドア大丈夫か?ちょっと必死すぎないか?」
他の騎士から心配されるが、平気だと答える。
そういえば、ウィルバート様の傷が医務室で治してないのに治ってることがあった。
「ウィルバート様、怪我は大丈夫なんですか?」
「怪我なら治ってる。大丈夫だ」
不思議だったが、その秘密をずっと教えてはくれなかった。後で俺は知ることになる。
傷を治したのはリアン様だったのだと。同時にウィルバート様が人形のようにならずにいたのは彼女のおかげだった。
俺もいつか人形から人になれるのだろうか?
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