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自信のない婚約者
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戦勝報告をするため、半ば義務的にラングリア伯爵家へ訪れた。あまり行きたい場所ではないが、報告に来るようにと手紙を持った使いの者まで城によこしてきたため、しかたない。
屋敷に入ると、すぐに父の執務室へ案内されるかと思ったが、客間へと行くよう執事に指示される。珍しい場所に通されるものだなと驚く。俺が入ると『汚れる』と冷たく言われるのが常だ。言われたところで、別にどうでもいいが。
ドアが開けると、父と女性がいた。その一緒にいる若い女性は少しぽっちゃりとしていて、頬を赤く染め下を向いていて、大人しそうな人だった。
「セオドア!待っていたぞ」
待たなくてけっこうだと思う。はっきりいって、この家に来てるのはこの家の家名が必要なだけだ。ウィルバード様のお傍にいるためには伯爵家の名がいる。幼い頃はわからなかったが、成長するにつれて、身分というものが必要なときもあると気付いた。
「この度の戦、怪我などなかったか?」
は!?父が……父が……俺を心配している?いや、そんなわけないたろう?
――――何か裏がある。
「ありません」
「そうか!よかった!よかった!こちらレストア子爵令嬢だ。おまえの婚約者だ」
「婚約者?」
驚いたが、淡々と聞き返す。そんな存在いたか?そんなの?
「先日、レストア子爵と話が意気投合してなあ。お互いに年頃のよく似た相手がいるから婚約させようということになった」
「はあ……?」
父はどんどん話を進めていく。
「おまえは陛下の傍にいて、信頼されていて、なにより将来も明るい。レストア子爵はぜひ!と言っていた」
随分と上機嫌で饒舌だ。その横で丸い体を小さくしているレストア子爵令嬢。婚約者を俺は必要としていない。
「いや、俺は……」
「あのっ!嫌ですよね……こんな地味で取り柄もなくて見た目も良くないわたくしなんて!」
ドレスを握っている両手が震えている。
「そういうわけじゃなくて……」
こういう時、傷つけないように言うにはどうしたらいい?……あれ?自分はそんなこと気にするやつだったか?
「しばらく二人で話すといい」
パタンと扉を閉めて父が出ていくと、レストア子爵令嬢とやらが再び口を開く。
「お断りしても……いえ、されることはわかってました。氷の騎士セオドア様は女性からとても人気のある方ですし、わたくしのような見た目が悪い女性など相手にする気はありませんでしょう。申し訳ありませんでした。わたくしの父が話を進めていってしまっただけなのです」
「断るならそちらから断ってほしい」
女性の方からの方がこういう場合には良い気がした。
「あ……はい……わたくし……その……」
わかりましたと快諾するかと思ったが、突然、言いにくそうになった。
「なんだ?」
「セオドア様との婚約ができないと二十歳も上の裕福な地方の領主のおじさまと婚約をさせられますの」
「は!?」
そしてレストア子爵令嬢は涙がたまった目を俺に向けた。
いや、俺にどうしろというんだ!?こんなことになるなど予想していなかった。ただ、女性の涙の恐ろしさを知った。立ち尽くしたまま、断ることができなかった自分がいたのだった。
屋敷に入ると、すぐに父の執務室へ案内されるかと思ったが、客間へと行くよう執事に指示される。珍しい場所に通されるものだなと驚く。俺が入ると『汚れる』と冷たく言われるのが常だ。言われたところで、別にどうでもいいが。
ドアが開けると、父と女性がいた。その一緒にいる若い女性は少しぽっちゃりとしていて、頬を赤く染め下を向いていて、大人しそうな人だった。
「セオドア!待っていたぞ」
待たなくてけっこうだと思う。はっきりいって、この家に来てるのはこの家の家名が必要なだけだ。ウィルバード様のお傍にいるためには伯爵家の名がいる。幼い頃はわからなかったが、成長するにつれて、身分というものが必要なときもあると気付いた。
「この度の戦、怪我などなかったか?」
は!?父が……父が……俺を心配している?いや、そんなわけないたろう?
――――何か裏がある。
「ありません」
「そうか!よかった!よかった!こちらレストア子爵令嬢だ。おまえの婚約者だ」
「婚約者?」
驚いたが、淡々と聞き返す。そんな存在いたか?そんなの?
「先日、レストア子爵と話が意気投合してなあ。お互いに年頃のよく似た相手がいるから婚約させようということになった」
「はあ……?」
父はどんどん話を進めていく。
「おまえは陛下の傍にいて、信頼されていて、なにより将来も明るい。レストア子爵はぜひ!と言っていた」
随分と上機嫌で饒舌だ。その横で丸い体を小さくしているレストア子爵令嬢。婚約者を俺は必要としていない。
「いや、俺は……」
「あのっ!嫌ですよね……こんな地味で取り柄もなくて見た目も良くないわたくしなんて!」
ドレスを握っている両手が震えている。
「そういうわけじゃなくて……」
こういう時、傷つけないように言うにはどうしたらいい?……あれ?自分はそんなこと気にするやつだったか?
「しばらく二人で話すといい」
パタンと扉を閉めて父が出ていくと、レストア子爵令嬢とやらが再び口を開く。
「お断りしても……いえ、されることはわかってました。氷の騎士セオドア様は女性からとても人気のある方ですし、わたくしのような見た目が悪い女性など相手にする気はありませんでしょう。申し訳ありませんでした。わたくしの父が話を進めていってしまっただけなのです」
「断るならそちらから断ってほしい」
女性の方からの方がこういう場合には良い気がした。
「あ……はい……わたくし……その……」
わかりましたと快諾するかと思ったが、突然、言いにくそうになった。
「なんだ?」
「セオドア様との婚約ができないと二十歳も上の裕福な地方の領主のおじさまと婚約をさせられますの」
「は!?」
そしてレストア子爵令嬢は涙がたまった目を俺に向けた。
いや、俺にどうしろというんだ!?こんなことになるなど予想していなかった。ただ、女性の涙の恐ろしさを知った。立ち尽くしたまま、断ることができなかった自分がいたのだった。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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