転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

文字の大きさ
105 / 319

花火消えたるあとの星

しおりを挟む
 トトとテテがジェットバス最高!と泡で白い湯船のところでずっと入っている。

「水圧がいい感じに腰が気持ちいいのだ!発明してると体が凝るのだー」

「泡を掴むのだー!」
 
 ジェットバスが終わったと思ったら、次は滝のところへ行き、頭からバババッとお湯にうたれている。

「修行なのだーっ!」

「精神統一なのだっ!」

「ま、まさかっ!?トトとテテ、修行って!?忍者なの!?」

 私の驚きに二人は首を傾げる。

「ニンジャってなんなのだ?」

「上から水が落ちてくれば、打たれたくなるだけなのだ」

 びっくりした!私はマジマジと二人を見た。この滝にうたれて修行って……つい小学生男子がやっちゃうやつ、世界共通なのねー。

 トトとテテも転生者なのかと思った。

「『海鳴亭』のお風呂気に入ったのだ」

「楽しすぎるのだ!」

 良かったわと微笑む。

「トトとテテには多大な協力をしてもらったもの。ホントにありがとう。ここまで私のイメージが実現するとは思わなかったわ」

『我らは楽しいことしかしないのだっ!』

 おかまいなくとケラケラと楽しそうに笑う。

「カモメが飛んできたのだ!」

 窓ガラスの外の手すりにとまるカモメ。太り気味なのは近くの漁港で魚にありついているからに違いない。

「かわいーのだー!」

「ほんと!可愛いわね」

 少し塩の香りのするお風呂に浸かりながら、海とカモメを眺めてほんわかとした気持ちになる。

 今日は予約のお客さんが少ないので、『海鳴亭』完成後に初めて、4人を誘ってお風呂に入りに来た。

 都合を無理やりつけたリヴィオとイベントにはやってくるジーニーもいる。男湯からあがってきた。

「デスクワークで凝った腰と肩にジェットバスいいな」

 そういうジーニーにトトとテテが『同じこと言わないのだ!』と難色を示している。

「オレはやっぱりサウナだな!」

 どの温泉でもサウナは必須なのね……とリヴィオのサウナ好きはブレなかった。

 旅館の中をうろうろ見て回る。まずは一階の玄関近くに並んだお店たち。

「売店が4店舗!?」

 驚くジーニー。そうよと私は頷いた。

 サニーサンデーのアイスクリーム屋さんは外の海水浴客も来れるように外とも繋がっている。

 次は地酒や地元の食材などを売っているお店。ナシュレ、スタンウェル鉱山の物も売っている。ナシュレ産の野菜のピクルスやジャムの瓶詰めは好評である。
 
 3店舗目は宿泊に必要なものを忘れたときに買う雑貨のお店。下着を忘れても安心してください。

 4店舗目はお土産コーナー。温泉まんじゅう、クッキー、せんべい、キャンディー、チョコレートなどやハーブの石鹸、入浴剤など。

 ここには、サニーちゃん、カミナリどん、ゆきんこちゃんグッズも揃えてあり、購入可能です。

 4人はしばらくお見せを見て回る。トトとテテがお土産コーナーで♨マークのハンカチを買っている。まさか社交界のパーティーで使わないよね?

 ジーニーは地酒を買って、夜な夜な仕事後に飲もうと言い、ニヤリとしている。

「むっ!我らもお酒を買っておくのだ」

「けっこうお酒の種類がそろってるのだ!」

 お酒好きな双子ちゃんは物色してそういう。
 
 私も何か買っていこうかな?とお酒を眺めると、リヴィオが一言釘を刺す。

「セイラはやめとけよ。それか度数低めのにしろよ!?そこの酒飲みの双子と自分を一緒にするなよ!?」

「お酒となると……なんかやけに真剣になるわねぇ」

「なるだろっ!」

 私はなにかあるの?と首を傾げつつ、反対されてまでは飲みたくないので、りんごサイダーにしておいた。

 少し早めの夕飯を一室でとる。レイチェルの料理は和食と王都の料理の融合で新しいけど馴染みのある料理になっているとジーニーが評した。

「海鳴亭けっこういいな。花葉亭とは似ているが違うように作ったんだな」

 今日、過ごしてみての感想をリヴィオが言う。

「そうよ。客層を変えてもいいかなと思ったの」

 海鳴亭は観光地の大型の旅館をイメージして作った。ファミリー層でも泊まりやすく、また気軽に宿泊だけでなく、王都から近いので、お茶会、パーティーなど集まる場として利用してもらえるといいなぁと思った。

 花葉亭や鉱山温泉は昔ながらの伝統ある旅館で落ち着いた佇まいにしている。

 デザートのカスタードプリンとフルーツの盛り合わせを食べて、ゆっくりお茶を飲んだところで私は立ち上がる。

「そろそろね……さて、最後にお風呂へかるーく入って帰りましょう。二階の露天風呂に入ってね」

「一階じゃなくて、二階の方へ入れって指定なのか?」

 リヴィオが尋ねる。私はフフッと笑い、そうよと頷いた。

 何があるんだ?と男湯へリヴィオとジーニーは消えて聞き、私達も女湯の露天風呂へ行く。

「なにがあるのだ?」

「お風呂にさっきと変わりはないのだ」

 トトとテテがそう言うと私はこっちよーと暗い海が眼前に広がっている眺めの良い方へ誘う。夜なのでまったく海の景色は見えないが………。

 そろそろね……。

 ヒューッと音がしてパッと明るくなる。夜空にキラキラと赤や青の花が広がった。

 ドーンと重い音が響く。

『うわあ!!!』

 トトとテテが歓声をあげた。それと同時に2発、3発と花火が空に広がる。

「きれいなのだっ!」

「お風呂入りながら花火をみるのはすごいのだ!」

 はしゃぐ二人。喜んでもらえたようで、私もホッとした。

 男湯の二人も楽しんでくれているだろうか?

 日頃どころか、ずっとお世話になってる4人をもてなしなくて考えていたのだ。新しい旅館ができたら招待しようと。

『セイラ!ありがとーなのだっ!』

 私の意図に気づいて抱きついてくる双子ちゃん。3人で並んで花火をしばし楽しんだのだった。

 花火が終わった後の海は静けさを取り戻し、少しさびしげだったが……。

  閑けさや 花火消えたる あとの星 である。

 キラキラと星が空には瞬いていた。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...