転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

文字の大きさ
114 / 319

アタリとハズレ

しおりを挟む
 チャリンとコインを入れる。どれにしようかなぁ?これにしよう。ピッと人差し指でボタンを押す。ガコンと中からモノが落ちてくる。

 この説明だけで、日本のある世界の人達なら何をトトとテテが発明したか当てることができるだろう。

 ♪ピピピピ………ピッピッピ………シーン。

「ハズレたぁー!」

 だよね……日本でも当たったことは一度もないと記憶している。当たりが出たらもう一本!と書かれているが、いつもあと少しのところでハズレ。そんなものよね。

「さて、フルーツ牛乳飲もうかな」

 私が自然な流れで瓶を手にすると、ちょっと待てー!?と見物していた周囲が騒ぐ。

「すごい!どうなってるんだ?」

「中から飲み物が!」

「これ冷えてる!?冷えてますよー!」

 ナシュレの街の銭湯に『自動販売機』なるものがやってきた。

 トトとテテが腰に手をやって笑い、得意げに立つ。

「ふっ……このようなモノ、天才発明家にかかればどうってことないのだ!」

「さあ!みんな冷たい飲み物を買うのだー!」

 リヴィオはさほど驚いていないようで、冷静にオレはコーヒー牛乳にするかーとボタンを押した。

 ♪ピピピピ………ピッピッピ………シーン。

「ハズレか!これアタリでるのか?」

 冷静に買ったわりにうるさい人になってるわよと思う。

 トトとテテがプゥと頬を膨らませて反論する。

「自分の運を機械のせいにするな!なのだ」

「ちゃんとアタリもあるのだ」

 しかし周囲の人たちもしてみるものの、一向にアタリは出ない。私は空になったフルーツ牛乳の瓶をカシャンッとかごにいれる。

 ちょうどお風呂あがりのトーマスがやってきた。

「はー、今日もいい汗かきましたよ。さつまいも掘りは疲れましたけど、その分お風呂はサイコーです……ん?どうしました?皆さんお揃いで?」

 私は有無を言わさず、トーマスにチャリンと小銭を渡した。

「いつも美味しい野菜をありがとう!これ使ってみない?飲み物を奢るわ!」

「え!?おじょう……じゃない。奥様!?いいんてすか?」

 いいのよと私はふかーく頷いた。皆が見守る中、トーマスはやりかたを聞きながら、サイダーのボタンを押した。

♪ピピピピ………ピッピッピ………テレッテッテー!

『アタリだーーーっ!!』

 うおおおお!と盛り上がり、ざわめく周囲。

「で、でたーー!」

「アタリだぞ!出るんだなぁ」

 トトとテテが『当然なのだ』と証明されたことに満足げである。トーマスは「???」とハテナマークを浮かべつつ、ラッキーなもう一本は牛乳のボタンを押したのだった。

 ちょうどそこへ、ジーニーがお風呂上がりで来た。

「なに盛り上がってるのかな?」

「ジーニー、飲み物買わない?」

 ジーニーには奢らないんだなとリヴィオが、横で言うが、ジーニーはお坊ちゃんじゃない?しかもエスマブル学園の学園長!小銭など私からもらったところで……。

「買ってみようかな」

 財布を取り出し、コインを入れようとして手が止まる。

「あ、小銭がない」

 そっちーーー!?!?お札入れるところもあるけど……まぁ、しかたない。そこまで心は狭くない……たぶん。

「しかたないわね」

 小銭を渡す。あ、悪いねとジーニーが言ってコインを入れた。

「時々、たくましい商人魂というか、庶民的なセイラでるな」

 リヴィオが私を分析している。褒めている…………んだよね?

♪ピピピピ………ピッピッピ………シーン。

「まあ。そうだよなぁ」
 
 どことなくホッとしているリヴィオ。ジーニーはそこまで真剣さはなく、コーヒー牛乳ごちそうさまと笑って去っていく。

 トトとテテはみんなの反応に大満足のようでニヤニヤしている。

「我らもお風呂に入ってから飲むのだー!」

「風呂上がりにフルーツ牛乳飲むのだー!」

 私もお風呂に入っていくことにする。もう一度お風呂上がりにチャレンジしたい!

 銭湯にヒノキの香りが漂う。『海鳴亭』で木片を浮かべたところ、好評につき、銭湯でもしてみることになった。

「いい香りなのだ!」

「癒やされるのだ!」

 ヒノキの香りにほわーーんとなっている二人。立ち上る湯気も木の香りがする。新築の家とか木材置き場とかも私は好きだ。

「リヴィオとの新婚生活はどうなのだ?」

 トトに唐突に聞かれて、ザブッと滑り、溺れかける。

「危なっ!ええええーっと……もともと一緒に屋敷に住んでいたから、特に変化はないわよっ?」
 
「つまんない答えはいらないのだ!」

 テテがそう言う。『新婚さんいらっしゃい』的なオモシロサを求めないでもらいたい。

「仕事も忙しいし……」

 トトとテテが首を振る。

『それは言い訳なのだっ!』

 手厳しー!!

「秋の夜長に二人でゆっくりするのもいいのだ~」

「天才発明家に恋などしている暇はないのだ。その分、楽しませてほしいのだ!」

 そういうことなの!?人の新婚生活を質問してきたと思ったら、心配ではなく、興味だったらしい。

「えええええ!?漫才夫婦じゃないのよっ!結婚して良かったなーって思う時もあるけど大変な時もあるんだからねっ!」

 私の声はどこ吹く風。二人は声を揃えて言ったのだった。

『アタリもハズレも楽しむのだ!』

 フォスター家の双子ちゃんは発明も人生も全力で楽しんでいる。

 きっとお風呂上がりに自動販売機でアタリが出てもハズレが出ても全力で楽しみ大騒ぎするだろうと思い、私はフフフッと笑ってしまったのだった。
 

 

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

処理中です...