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シン=バシュレと父の出会い
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この世界にはもう一つ、白銀の狼の神が守護する国がある。だが、その国は魔物に滅ぼされた地で、街も人も国もボロボロの状態だった。
あの地に神はいたんだが、何故か、しばらく神が行方不明になっていた。それで魔物に蹂躙されて王都も滅びた。
三神の中で、黒龍が守護するウィンダム王国の大陸が一番平和だな。
しかし何度か訪れているうちに、あっちの神も帰ってきて、希望も見えてきていたんだ。気になることがあるから、また一度、訪れて、状況を見に行く必要があると思ってる。
そんな国をウロウロしていた時だった。
ボサボサ頭で伸び切った灰色の髪、その奥からギョロッとした目でこちらを見ていた子どもがいた。
その街は半壊ってところで、町の人も逃げ出して行く途中だったな。
「あんた、どこから来たんだ?」
「オレ?……どっかそのへんからだ」
廃墟の家の前に座り込んでいて、声をかけてきた灰色の髪の子どもはセイラの父であるアルトだ。テキトーに答えて去っていこうとしたオレに話しかけてきた。
「助けてくれないか?」
「なんでオレ!?」
アルトは絶望と不安の入り混じる雰囲気を持つ生意気な子どもだった。ついオレはそんなやつが面白く感じてしまって、無視できなかった。
「他のやつらとはどこか違うからだ」
「どこが違うんだよ?」
「余裕がある。慌てていない。怖がっていない。身なりもきちんとしている。あんた相当強い人だろ?」
「ふーん……でもオレは助けることはできない。おまえみたいな子どもをいちいち拾っていたらキリが無い。どっか安全な街まで送ってってやるよ」
「それじゃあ、だめなんだ!」
「なにがだよ?」
「どうしても生き延びたいんだ!一緒に連れてってくれ!こんなところで死にたくないんだ!」
アルトは必死で頼んできた。だけどオレは無視することにした。
セイラ、冷たいとか思うなよ?孤児なんて山ほどこの国で見た。一人救ったところでなんにもならないし、際限がなかったんだ。
「おまえを拾ったところで、オレになんの利点があるんだよ。めんどくさいのは嫌なんだ」
そう冷たくあしらって去ろうとしたが、アルトはオレの服を掴んできた。
「この国がだいっきらいなんだ!たのむから連れてってくれ!」
「……この国が嫌いか。そう言われても、おまえら国民も頑張らねーと、この国は立ち直ることはできないぞ」
アルトにはオレの言葉は伝わらなかった。まあ、子どもにそんな話をしたところでどうしようもないと思っていた。
「たのむから!ここから逃げたいんだ!なんでもする!あんたのためになることならなんでもすると誓う!」
「そんな誓いを勝手に言われてもなぁ……うーん、じゃあ、しかたねーな。その自分の言ったことを忘れんなよ?」
鬼気迫るような必死さとしつこさにオレも負けてあまり深く考えずに連れてきてしまったんだ。他国の者をウィンダム王国へと。
これがセイラの父、アルト=バシュレとの出会いだった。
「それから、多少大きくなってからはめんどくさい領地経営をおしつけ……いや、領地を任せてオレはアオと役目を果たすために忙しくしていたってわけだ」
リヴィオの説明はそこで終わった。ざっくりとした説明だったけど……私はなんとなく父のひね曲がった性格が曲がったまま来てしまった理由がわかったような気がした。
「その放っておかれたのが……」
いじけちゃったのかもと言いかけてやめた。彼は子育てには向かないだろう。なにせシン=バシュレはシンヤ君なのだ。高校生だった彼には、衣食住を与えるくらいしかできないだろうし、思い浮かばないだろう。
それどころではなかったのもわかる。役目を早く終えて……カホに会いたい、救いたい思いが強かったのだろう。
しかし父に関心を示さなかったのに孫娘と言われた私には優しく、学校まで選び、仕事の合間には休暇を一緒に過ごす……とてつもなく父は面白くなかっただろう。
シン=バシュレの役に立ちたい。力になれるように努力もしてきたのかもしれない。
……すべて、私の推測だけど。
しかし生まれ故郷を魔物がいるというだけでそこまで国を憎めるものだろうか?父はなにかを隠していないだろうか?
新しく知った隣国のことも気になったが、父のセリフも心にのこった。
アルト=バシュレをシン=バシュレがみつけたのは偶然だったのだろうか?
あの地に神はいたんだが、何故か、しばらく神が行方不明になっていた。それで魔物に蹂躙されて王都も滅びた。
三神の中で、黒龍が守護するウィンダム王国の大陸が一番平和だな。
しかし何度か訪れているうちに、あっちの神も帰ってきて、希望も見えてきていたんだ。気になることがあるから、また一度、訪れて、状況を見に行く必要があると思ってる。
そんな国をウロウロしていた時だった。
ボサボサ頭で伸び切った灰色の髪、その奥からギョロッとした目でこちらを見ていた子どもがいた。
その街は半壊ってところで、町の人も逃げ出して行く途中だったな。
「あんた、どこから来たんだ?」
「オレ?……どっかそのへんからだ」
廃墟の家の前に座り込んでいて、声をかけてきた灰色の髪の子どもはセイラの父であるアルトだ。テキトーに答えて去っていこうとしたオレに話しかけてきた。
「助けてくれないか?」
「なんでオレ!?」
アルトは絶望と不安の入り混じる雰囲気を持つ生意気な子どもだった。ついオレはそんなやつが面白く感じてしまって、無視できなかった。
「他のやつらとはどこか違うからだ」
「どこが違うんだよ?」
「余裕がある。慌てていない。怖がっていない。身なりもきちんとしている。あんた相当強い人だろ?」
「ふーん……でもオレは助けることはできない。おまえみたいな子どもをいちいち拾っていたらキリが無い。どっか安全な街まで送ってってやるよ」
「それじゃあ、だめなんだ!」
「なにがだよ?」
「どうしても生き延びたいんだ!一緒に連れてってくれ!こんなところで死にたくないんだ!」
アルトは必死で頼んできた。だけどオレは無視することにした。
セイラ、冷たいとか思うなよ?孤児なんて山ほどこの国で見た。一人救ったところでなんにもならないし、際限がなかったんだ。
「おまえを拾ったところで、オレになんの利点があるんだよ。めんどくさいのは嫌なんだ」
そう冷たくあしらって去ろうとしたが、アルトはオレの服を掴んできた。
「この国がだいっきらいなんだ!たのむから連れてってくれ!」
「……この国が嫌いか。そう言われても、おまえら国民も頑張らねーと、この国は立ち直ることはできないぞ」
アルトにはオレの言葉は伝わらなかった。まあ、子どもにそんな話をしたところでどうしようもないと思っていた。
「たのむから!ここから逃げたいんだ!なんでもする!あんたのためになることならなんでもすると誓う!」
「そんな誓いを勝手に言われてもなぁ……うーん、じゃあ、しかたねーな。その自分の言ったことを忘れんなよ?」
鬼気迫るような必死さとしつこさにオレも負けてあまり深く考えずに連れてきてしまったんだ。他国の者をウィンダム王国へと。
これがセイラの父、アルト=バシュレとの出会いだった。
「それから、多少大きくなってからはめんどくさい領地経営をおしつけ……いや、領地を任せてオレはアオと役目を果たすために忙しくしていたってわけだ」
リヴィオの説明はそこで終わった。ざっくりとした説明だったけど……私はなんとなく父のひね曲がった性格が曲がったまま来てしまった理由がわかったような気がした。
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