転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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始まりの者

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 体が緊張する。扉が開いた。

「これは!?」

 クリスタルのような石の中に眠る……人!?クリスタルはチューブのような紐で繋がれていて、帯ただしい魔法文字が所狭しと書かれている壁。銀色の長い髪をした女性か男性かわからない中性的な……美しい。だが、触れてはいけない、起こしてはいけないと心のなかで危険だと知らせるものがある。

「ミラ、これは……マズイ予感がする」

 キサもオレ同様、嫌な予感がするらしい。ミラの手をとろうとしたが、彼女は前へ進んでいく。ヨイチとアサヒの方を向くと、二人の少年も額に汗が滲み、緊迫した雰囲気だった。

「ミラさん!それは待って!」

 ヨイチが叫ぶ。アサヒが止めに行こうと足を一歩踏み出す。オレは無意識に剣の柄に手をかけた。

「それに触れるな!」

 オレは怖いような不安を掻き立てられるようなものをその眠る人物から感じて、叫ぶ。

 ミラは聞こえていない。目がこちらを見ていない。ぼんやりとしたまるで夢を見ているような顔でクリスタルの中に眠る人物に触れた。

 その瞬間、パンッという音と共に光が弾けた。

「ヨイチ!アサヒ!下がれ!キサもこっちへ!」

 咄嗟に扉の゙側へ来るように皆をオレは呼んだ。剣を抜く。その剣の柄をキサが抑える。傷つけるな……ってことか!?しかし……これは……手加減できる相手とは気配からして、到底思えない。殺気と憎悪があきらかにこちらへ向けられている。

クリスタルがパラパラと落ちてゆく。中に眠る人物が目を開く。そしてその体はスッとミラに吸い込まれるように消えていき………ミラの姿が元の大人の姿に変化した。

『久しいな。光の鳥、黒龍、白銀の狼たちよ』

「誰だよ!?」

 思わず尋ねると、フフッと妖艶に笑うミラ。

「思い出した。ルノールの民を守っていた……始祖だ。この天空の地を管理、守護していた者」

 キサの声が震えている。まさか……ミラは………!?

「ミラ!戻れ!そいつに操られるな!」

 キサが叫ぶ。しかし彼女は首を傾げる。

『ルノールの民の地を奪う者たちよ。許しを請うても許さぬぞ』

 どういうことだよ!?さっぱりわからない。わからないが……殺気を向けられていることはわかる。魔力もかなり高い。剣を握り直す。

『好都合。三つの神を名乗る者が揃っているなど最高だ。今こそ、どちらが生き残るか戦おう』

 来る!オレは気配を察して、アサヒとヨイチを突き飛ばして、自分も横へ跳ぶ。

 ゴオッとオレ達のいた場所はえぐれてなくなる。部屋の゙天井は崩れていく。空が見える。キサがミラに近づこうと地面を蹴った。

「一人で行くな!」
  
 冷静さを失っている。オレは舌打ちして追う。

『光の鳥か。お主が一番憎いわ。最後のルノールの長をたぶらかし!この地を捨てさせた!』
 
 ヒュンといくつも光の矢を放たれる。避けるキサ。……只者の王じゃないな。強いとその動きからわかる。体の使い方が軽やかで、自然だ。

「ミラの体を返せ。おまえの時代はとうに終わっている」

『この!身のほど知らずめが!どの口が言っている!』
 
 怒りと共に放たれる一撃で床が沈み込む。石礫が舞い上がる。膨大な魔力。

 とりあえず一旦、体を拘束し、眠らせる!オレはトンッと地面を軽く蹴る。キサに気を取られている間に間合いを詰めた。

「なっ!?」
  
 しかしミラがこちらを向いて、ニヤリと笑った。……しまった。迂闊だった。逆に至近距離に間合いをつめてきて、力を放たれた。すぐに防御の術を使ったが、魔力がケタ違いだ。防壁が破られて、かすった腕からポタポタ血が流れる。手が赤く染まる。自分の血にゾッとした。このオレがこんなに簡単に傷つけられたことなど無い。ヤバい相手すぎる。あのニコニコしていたミラではない。

『リヴィオ!』

 ヨイチとアサヒが慌てて、筆を取り出して治癒と防壁の術を作り上げる。しかし、その時間を相手は与えない。爆発音が起こる。キサが地面に叩きつけられる。爆風で石礫が体に当たる。

「今、光の鳥と黒龍は呼び出せない!オレ等は不利だ」

 オレは腕を抑えて、そうヨイチとアサヒに言う。対抗できるであろう力を持っているのはこの二人だけだ。キサとオレは単なる人として多少強い程度。

「どうすれはいい!?」

 アサヒが飛んでくる火球をすばやく『防壁』『氷』と文字を書いて消し去る。

「一旦、逃げる」
  
「逃げる……?ミラをおいて?」

 キサはそう声を絞り出す。頭を切ったのか血が流れて頬から滴り落ち、青ざめた表情で、今の状況を把握しようとしている。

「今の状態では無理だろ!?アサヒとヨイチだけの力で戦える相手なのかよ!?傷をつけることもだめなら……どうやって戦える相手なんだよ!?」

 キサは黙り込む。愛すべき人がこんなふうになって、攻撃してきて、反撃できるか?と言われたら、そりゃそうかもしれないけど、こっちには余裕がない。傷をつけずに囚えるのは相手の倍の強さが必要になる。

 どうしても黒龍の力がいる。悔しいが、オレの魔力では足りない。それはキサも同じだろう。

 あの魔物の発生装置を壊すために使いすぎた。力を溜めるために光の鳥と黒竜は眠っていて、起きようとしない。

 オレとキサは飛んでくる攻撃をかわすのが精一杯だ。

 アサヒが『炎龍』『風龍』と描き、2匹の龍に攻撃させる。足止めになるか!?

 オレ達は転移装置があるところまで走る。あと少しと言うところで追いつかれる。声が後ろからした。

『逃さぬ』

 オレは剣を振り切る。氷の刃が地面をパリパリと凍らせ、足止めに一瞬だけなる。そして……ミラはこちらを見て笑っていた。その表情は残酷な笑みで神秘的な美しさだった。背筋が寒くなる。

『黒龍は……おもしろい半分か。ここにもう1人いないのか……ではそちらとも遊んでもらうか』

 まさか……セイラのことか!?

「セイラのところへ行かせるかよ!」

 リヴィオ!だめだ!と叫ぶヨイチ。その声が遠くなる。踏み込んだが、あと一歩というところで、弾かれるようにオレはふっとばされる。

 体中が痛む。血がどこから流れているのかわからないほどボタボタと落ちてくる。だけどセイラのところへ行かせるわけには……。

「こっちだ!」

 キサが無理やり放り込むように転移装置にオレを乗せた。
 
 ヨイチとアサヒがオレの体に治癒魔法を施しながら、転移装置に防壁を作る。

 元の村へなんとか、たどり着く。すぐにヨイチとアサヒは行動にうつした。二人が焦っているのがわかる。

「セイラさんは僕たちが守りにいく!」

「リヴィオは動けるようになったらきて!」

 血を大量に失って、動けないし、意識も薄れる。こんなことしてる場合じゃない!立ち上がれと自分に言うが体は言うことをきかなかった。

「セイラ………ノーチェ、ラビ………」

 セイラと双子の子どもたちはどうなる?はやくはやく行かなくては……そう思いながら意識は落ちた。
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