転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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未来へ飛び込む!

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『誕生日おめでとう!』

 クラッカーがパンパンパーンと鳴り響き、祝う声が重なりあう。テーブルの上にはノーチェとラビの好物ばかり並んでいる。天井にはフラッグが垂れ下がり、風船がフワフワ浮かんでいる。

 気恥ずかしそうにノーチェがありがとうと言う。サンキューサンキュー!と明るく手をあげて言うラビ。

「学園に入学するんだって?人事部から聞いたよ」

 学園長のジーニーが嬉しそうに尋ねると二人は、まぁねと答える。

「魔力は高いし、制御させるためには学園で学ぶ方が良い」

 リヴィオがそう言う。私は寂しさを隠せず嘆息した。

「とうとう行っちゃうのね。エスマブル学園は基本的に寮ぐらしだものね。静かになっちゃうわ」
 
 まだ少年といえる彼らを手放すのは寂しかった。

「大丈夫だよ。二人で行くし、ちゃんとボクがラビの面倒を見るよ」

 ノーチェが冷静にそう言う。ラビがこっちのセリフだっ!と食って掛かる。ああ……心配だわ……。

 ドアがノックされる。

「あっ!お客様かしら?」

 皆、仕事を終えたら来るよ!と言っていたし……ドアを開くと立っていたのは二人の少年だった。ノーチェとラビと同じ年にみえる。それはずっと成長しないままのヨイチとアサヒだった。

「どうしたんだ!?」

 リヴィオが驚く。ノーチェとラビは目を丸くした。

「そろそろさ~、帰るよ。日本へ」

「二人で決めていたんだ。ノーチェとラビが僕らがこの世界へ来た時と同じ年になったら帰ろうって」

 アサヒとヨイチはいつの間にか決心したのか、揺らぎない眼差しでそう行った。

「じゃあね。ノーチェとラビ、白銀の狼をよろしく頼むよ。ポチ、ああ見えて、意外と寂しがり屋なんだ」

「また日本で……来世で会おう」

 待て!とリヴィオが叫ぶ。しかし二人は待たなかった。

「引き止められると帰りにくいからさ」

「ごめんね。シン。ありがとうリヴィオ」

 そう言って、ノーチェとラビに触れる。まばゆい白い光。フッと消えた。なんて短い別れ。なんてあっけない帰り方なの!?
 
「あの二人、この世界に未練があるからこそ、さっさと帰ったんだ。そんな気がする。特にセイラに行くなと言われたら帰りにくい」

 リヴィオがいなくなった空間を見つめる。そう言いながらも、寂しさを隠しているリヴィオの目は潤んでいた。シンである時も二人と関わっていたから思い入れはすごくあるのだろう。

 私とリヴィオが振り返るとノーチェとラビがポロポロと大粒の涙を目から零していた。

「ど、どうしたの!?」

 慌てる私、リヴィオも頭をかいて、困っている。

「記憶あったんだ……ニホンの記憶あるんだよ。僕達。あの人達、僕らのために帰ったんだ」

 ラビが言う。

「帰る方法があるのに、年月を重ねれば重ねるほど、逃げてるんじゃないかって心が重くなる。今度こそ未来へ飛び込むんだ」

 ノーチェが涙を拭った。

「もう一度、日本で、できなかったことをやってみるって……力は無いけど、自分たちの力でやってみるって……僕達決めたんだ」

 ラビとノーチェは顔を見合わせて頷く。

「だから僕達も学園で頑張ってくるよ。家から離れるのは寂しいけど頑張るよ」
  
 ジーニーがポンポンと二人の頭を撫でた。私とリヴィオは微笑む。

「学園長として、二人の成長、楽しみにしている……まぁ、魔力の制御は急務だな。白銀の狼の力を継承するとなると……」

「ジーニー、お願いします」

 私が頭を下げて頼むと、ジーニーはもちろんだよと笑った。

 皆がそれぞれの道を歩いていく。

 私もまた新たな人の出会いや別れもあるだろう。それが生きてるということだし、温泉旅館をしていると出会いと別れは必ずある。人と会うということはいつか別れがくるもの。寂しさがある。だけど、私はこう言うだろう。

 『またのお越しをお待ちしてます』

 旅館の入口で皆を待っている。

 笑顔で待っている。

 どんな未来が待ち受けていても、安心して皆が帰れるように、私は待っている。ここで、ずっとずっとあなたを待っている。


                ~Fin~
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