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第11話
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「花嫁の衣装やその季節にあった料理、花を選んでいきましょう!楽しいですねぇ!」
ジャネットが自分のことのようにウキウキしている。
「この上質のレースの模様を見てくださいよぅ!キャー!どれも可愛いー!」
「ほんとね。でも一番安いのでいいわよ」
「ええっ!?」
「宝石はいらないわ。白いドレスと手袋があれば十分なの」
「ええええええ!?」
「靴も持っているものにするから大丈夫よ。足元なんてドレスに隠れて見えないし、買っていただいた靴も立派だもの」
「えええええええええええ!?」
……なにかしら。私が言うたびにジャネットが大騒ぎしている。
「なんで、叫んでいるの?」
「奥様?ダメですよぅ!良いものを身につけてください」
「十分ドレスの生地だけで、最上級のものよ?私、それだけでもドキドキしてるんだから」
並べられている白いドレス生地は手触りがどれも良く、触り心地が良い。優しく私は生地を手のひらで撫でた。
オースティン殿下に嫁いだときすら、こんな良い生地でドレスを作れなかったわ。王家とは不釣り合いな貧乏伯爵家の身分では精一杯、いいものを用意したんだけど、その結果は……無用のものだった。
「……でもっ!こういってはなんですが、前の結婚式より派手にしましょうよ!王宮の結婚式には敵わないかもしれませんが、うちの旦那様との結婚式の方は一生に一度のすばらしかった式だったわ!と記憶に残しましょうっ!」
「そんなにがんばらなくて、大丈夫よ。前の結婚式も質素だったもの。宝石も身につけてないし、花も……贈られなかったもの。こんなに公爵家にしていただくことが心苦しいわ」
オースティン殿下は私と結婚をしたくなかった。しかし自分の父である陛下から命じられて、しぶしぶだった。だから普通は結婚相手に送る花束や装飾品も贈られなかったし、式も最低限でいいという考えだった。
儀式も殺風景で、来客たちが顔を引きつらせていたのを思い出す。それでも私の両親は結婚さえしてしまえば、うちの娘を気に入るだろうと信じていたようで、責めたり止めたりすることはなかった。
私は結婚後に『花も宝石も与えられる価値のない花嫁』『嫌われているのに結婚できるのね』『普通なら逃げるのに図太い』などと噂され、笑われていた。夜会の時に他の令嬢から聞こえるように言われたことも一度や二度ではなかった。
「そんな……くっ……女性にとって大事な式に!なんつー、ひどいことをっ!あのケチケチオースティンめ!……あ、なんでもありません!今のは気になさらないでくださいねぇ」
一瞬、とても男らしい怖い顔になったが、すぐにジャネットはにこやかになる。今の顔ははなんだったのだろう。そしてアルとジャネットの様子からして、オースティン殿下のことをよく知ってる気がするのは気のせいかしら?アルにとっては従兄弟だから、関わることもあったのもしれない。
「でもシア様はとてもお綺麗なのですから、着飾らないと損ですよ!」
「そんな綺麗じゃないわ。私なんて……」
「いいえ!そんなこと仰ることがおかしいのです!こちらへ座ってください。結婚式までにしーーーーっかり美しくしますからね!!」
化粧水や化粧道具がずらりと並べられた。見たことのない高級そうな化粧道具も見えた。
「後、ドレスの採寸もしますからね。ちょっとだけ失礼します」
薄い服をまとって立つように、ジャネットが指示を出す。どんどん数字が書き込まれていく、私の腕をめくって、ピタリととまった。
「これ……」
私の腕にあざがいくつもあったのを見て、絶句している。慌てて、私は服の布地でバッと隠した。しかしもう遅かった。
「まさか体にもあるんですか?」
「ジャネット、これはアルには言わないで!私とあなたの秘密にしてほしいの」
「で、でもシア様……」
「治らないものではないから、大丈夫よ。だいぶこちらへ来てから、薄くなってるもの」
「こんなことって……」
また泣きそうになるジャネット。顔色も青ざめている。優しいメイドに、私は微笑む。
「もう大丈夫なのよ。ジャネット、優しすぎるわよ。気にしないでちょうだい」
「シア様あああああ」
やはり泣いてしまったのだった。私の体のあざは見えないところにいくつもあった。オースティン殿下は時々、酷く乱暴になるのだ。私は彼と二人っきりになるのが怖かったため、避けていたが、それすらも面白くないようだった。
よくオースティン殿下は私に『シアが王宮からいなくなれば、自分は愛する人を苦しめずにすむんだ!』『イザベラが泣くのはお前のせいだ!』とよく言っていた。私が我慢すればするほど嫌いになっていったのだろう。
「反撃してやりたかったたんだけどね……」
なんとなく、今になって悔しい気持ちになってきて、低い声で思わずつぶやくと、なにかおっしゃいました?と涙声で優しきメイドのジャネットは聞くのだった。
ジャネットが自分のことのようにウキウキしている。
「この上質のレースの模様を見てくださいよぅ!キャー!どれも可愛いー!」
「ほんとね。でも一番安いのでいいわよ」
「ええっ!?」
「宝石はいらないわ。白いドレスと手袋があれば十分なの」
「ええええええ!?」
「靴も持っているものにするから大丈夫よ。足元なんてドレスに隠れて見えないし、買っていただいた靴も立派だもの」
「えええええええええええ!?」
……なにかしら。私が言うたびにジャネットが大騒ぎしている。
「なんで、叫んでいるの?」
「奥様?ダメですよぅ!良いものを身につけてください」
「十分ドレスの生地だけで、最上級のものよ?私、それだけでもドキドキしてるんだから」
並べられている白いドレス生地は手触りがどれも良く、触り心地が良い。優しく私は生地を手のひらで撫でた。
オースティン殿下に嫁いだときすら、こんな良い生地でドレスを作れなかったわ。王家とは不釣り合いな貧乏伯爵家の身分では精一杯、いいものを用意したんだけど、その結果は……無用のものだった。
「……でもっ!こういってはなんですが、前の結婚式より派手にしましょうよ!王宮の結婚式には敵わないかもしれませんが、うちの旦那様との結婚式の方は一生に一度のすばらしかった式だったわ!と記憶に残しましょうっ!」
「そんなにがんばらなくて、大丈夫よ。前の結婚式も質素だったもの。宝石も身につけてないし、花も……贈られなかったもの。こんなに公爵家にしていただくことが心苦しいわ」
オースティン殿下は私と結婚をしたくなかった。しかし自分の父である陛下から命じられて、しぶしぶだった。だから普通は結婚相手に送る花束や装飾品も贈られなかったし、式も最低限でいいという考えだった。
儀式も殺風景で、来客たちが顔を引きつらせていたのを思い出す。それでも私の両親は結婚さえしてしまえば、うちの娘を気に入るだろうと信じていたようで、責めたり止めたりすることはなかった。
私は結婚後に『花も宝石も与えられる価値のない花嫁』『嫌われているのに結婚できるのね』『普通なら逃げるのに図太い』などと噂され、笑われていた。夜会の時に他の令嬢から聞こえるように言われたことも一度や二度ではなかった。
「そんな……くっ……女性にとって大事な式に!なんつー、ひどいことをっ!あのケチケチオースティンめ!……あ、なんでもありません!今のは気になさらないでくださいねぇ」
一瞬、とても男らしい怖い顔になったが、すぐにジャネットはにこやかになる。今の顔ははなんだったのだろう。そしてアルとジャネットの様子からして、オースティン殿下のことをよく知ってる気がするのは気のせいかしら?アルにとっては従兄弟だから、関わることもあったのもしれない。
「でもシア様はとてもお綺麗なのですから、着飾らないと損ですよ!」
「そんな綺麗じゃないわ。私なんて……」
「いいえ!そんなこと仰ることがおかしいのです!こちらへ座ってください。結婚式までにしーーーーっかり美しくしますからね!!」
化粧水や化粧道具がずらりと並べられた。見たことのない高級そうな化粧道具も見えた。
「後、ドレスの採寸もしますからね。ちょっとだけ失礼します」
薄い服をまとって立つように、ジャネットが指示を出す。どんどん数字が書き込まれていく、私の腕をめくって、ピタリととまった。
「これ……」
私の腕にあざがいくつもあったのを見て、絶句している。慌てて、私は服の布地でバッと隠した。しかしもう遅かった。
「まさか体にもあるんですか?」
「ジャネット、これはアルには言わないで!私とあなたの秘密にしてほしいの」
「で、でもシア様……」
「治らないものではないから、大丈夫よ。だいぶこちらへ来てから、薄くなってるもの」
「こんなことって……」
また泣きそうになるジャネット。顔色も青ざめている。優しいメイドに、私は微笑む。
「もう大丈夫なのよ。ジャネット、優しすぎるわよ。気にしないでちょうだい」
「シア様あああああ」
やはり泣いてしまったのだった。私の体のあざは見えないところにいくつもあった。オースティン殿下は時々、酷く乱暴になるのだ。私は彼と二人っきりになるのが怖かったため、避けていたが、それすらも面白くないようだった。
よくオースティン殿下は私に『シアが王宮からいなくなれば、自分は愛する人を苦しめずにすむんだ!』『イザベラが泣くのはお前のせいだ!』とよく言っていた。私が我慢すればするほど嫌いになっていったのだろう。
「反撃してやりたかったたんだけどね……」
なんとなく、今になって悔しい気持ちになってきて、低い声で思わずつぶやくと、なにかおっしゃいました?と涙声で優しきメイドのジャネットは聞くのだった。
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