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第22話
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陛下……叔父上から呼び出されたのは、久しぶりだった。使いの者がやってきて、まず、シアとフランの様子を聞かれた。元気だと告げると、安堵した様子だった。陛下が心配されていましたと言い残して使いの者は帰っていった。オースティン殿下と陛下の思いは違うのかもしれない。
……と、なると。話は変わってくる。
揺れる馬車の中で、オレは考えていた。これは先に神殿に『結婚承諾書』を出しておいた方が良さそうだ。『結婚破棄状』をオースティン殿下に叩きつけられて、シアは神殿に提出し、受理されていることは確認済みだ。
この二枚は陛下も手が出せないくらい絶対的なものだ。だから今更、陛下がなんといおうと、オースティン殿下とシアの結婚破棄は動かせない。同様にオレとシアの結婚も動かせないものにしておこう。
陛下に会うまえに書類を神殿に置いてくる。まったく、オレとしたことが、いろいろあって、出すのが遅れた。こんなぎりぎりになるなど……。受け取った神官は『え?公爵様!?結婚ですか!?』と驚いていたが、なぜだ?書類の内容も手順も間違ってないはずだ。
……まぁ、普通は式を盛大におこなって、皆に披露してから出すものか。だが、その間にシアの気が変わったらどうする?今のうちなんだ!
やや自分が結婚詐欺師のような気持ちになったが、まぁ、いいだろう。
「旦那様、そろそろ王城に到着いたします」
シリルの言葉にああと頷く。さて。陛下はどうでてくるか?オレはシアとフランをどうしたいのか王家の考えがわからなかった。だが、これだけは言える。オレは思った以上に二人を気に入っている。だから傍に置いておきたい。彼女はオレのものだ!
意を決して、陛下のいる部屋のドアをあけた。
「すまなかった!!アルバート!!」
……突然謝られた。中年の優しそうな王が玉座に鎮座していた。
「おちついてください。陛下。アルバートではなく、人前では、どうぞクラウゼ公爵と呼んでいただけると嬉しいのですが」
「陛下や公爵など、他人行儀なことを言うな!おまえには叔父さんと呼んでもらいたいとあれほど言ってるだろう!?両親が亡くなった時から、わたしのことをアルバートの親だと思えと!!」
「いや、それは無理なんで……」
オレの両親はこんなんじゃないし。
「それで、話って……」
「本題に入るのが、早すぎるぞ。まずは久々に会ったことに喜びあおう。最近の話題などないのか?」
「それはいらないです」
「冷たいな。昔は可愛かったのになあ。叔父様大好きと天使のような顔で言っていたぞ」
それだいぶ子どもの頃じゃ?
「それで話とはなんです?」
二度目の質問を淡々と繰り替えす。ちょっと陛下は寂しそうになった。横にいる年寄りの宰相が陛下と名を呼んで、話を進めるよう促してくれる。
「うちのバカ息子、オースティンのためにおまえが犠牲になることはないんだぞ!」
えっ!?とオレは思わず驚きの声をあげた。犠牲ってオレのことか?
「シアとフランは王家で引き取ろう。おまえはちゃんとした嫁をもらいなさい」
引き取る?ちゃんとした嫁?
「昔からオースティンの友として付き合ってくれ、尻ぬぐいをしたり止めてくれたりしていたな。こんなことまでしなくていい。あのような、たかが、女一人、気に病むことではない」
あのような?たかが?
「アルバートには良い令嬢がたくさんいる。なにも落ちつぶれた伯爵家のオースティンが見限った妃などを拾わなくとも、良い娘を紹介してやろう」
「……何をいっているのかわかりません」
「うむ?同情してシアとフランを拾って結婚しようとしているのではないか?昔からアルバートは優しいところがあるからな」
オレはシアの王家での扱いがわかった気がした。陛下すらこんな様子では、味方は誰もいなかっただろう。
「陛下、もうオレは神殿に『結婚承諾書』を出しました。それにシアは良い女性ですよ。彼女に声をかけたのはオレからです。聡明で我慢強くて、優しい女性です」
「なんと……」
「彼女の良さをだれもここでは気付かなかったんですか?フランもとてもいい子です。むしろ王家が彼女たちを捨ててくれてありがとうざいますとオレは礼を言いたいですね」
陛下はポカンとしていた。オレの言っていることに驚いているのだろうか?
「い、いや……しかし、オースティンが言うには……あれは陰気臭く、王家の財を狙う女性だと……」
バカ息子の言葉と知りながら、それを人の良い陛下は信じたのか?あのバカオースティンを信じるなんて、呆れたものだ……人の良さは王としてある程度必要だが、時には愚王にしてしまう。良い人ではあるんだがとオレは嘆息する。
「金を狙ってる女性が、実家である伯爵家に帰って、自分で自立しようとするでしょうか?金を請求することなく、自分の子だけ連れて出ていった。それが答えになりませんか?陛下?陰気臭くもありません。明るく笑顔が似合う女性ですよ」
オレだけは彼女の味方でいようと思った。どんなことがあっても。花をプレゼントした時の、あの笑顔は本当に綺麗だなと思った。たった花一輪置いただけなのに、とても幸せそうなうれしい顔をした。その表情をずっと見ていたくなってしまい、数秒、見惚れてしまったが、彼女にバレなかっただろうか?
誰も味方がいないシアが、ここでどんな目にあっていたのか……それを思うと胸が痛かった。
……と、なると。話は変わってくる。
揺れる馬車の中で、オレは考えていた。これは先に神殿に『結婚承諾書』を出しておいた方が良さそうだ。『結婚破棄状』をオースティン殿下に叩きつけられて、シアは神殿に提出し、受理されていることは確認済みだ。
この二枚は陛下も手が出せないくらい絶対的なものだ。だから今更、陛下がなんといおうと、オースティン殿下とシアの結婚破棄は動かせない。同様にオレとシアの結婚も動かせないものにしておこう。
陛下に会うまえに書類を神殿に置いてくる。まったく、オレとしたことが、いろいろあって、出すのが遅れた。こんなぎりぎりになるなど……。受け取った神官は『え?公爵様!?結婚ですか!?』と驚いていたが、なぜだ?書類の内容も手順も間違ってないはずだ。
……まぁ、普通は式を盛大におこなって、皆に披露してから出すものか。だが、その間にシアの気が変わったらどうする?今のうちなんだ!
やや自分が結婚詐欺師のような気持ちになったが、まぁ、いいだろう。
「旦那様、そろそろ王城に到着いたします」
シリルの言葉にああと頷く。さて。陛下はどうでてくるか?オレはシアとフランをどうしたいのか王家の考えがわからなかった。だが、これだけは言える。オレは思った以上に二人を気に入っている。だから傍に置いておきたい。彼女はオレのものだ!
意を決して、陛下のいる部屋のドアをあけた。
「すまなかった!!アルバート!!」
……突然謝られた。中年の優しそうな王が玉座に鎮座していた。
「おちついてください。陛下。アルバートではなく、人前では、どうぞクラウゼ公爵と呼んでいただけると嬉しいのですが」
「陛下や公爵など、他人行儀なことを言うな!おまえには叔父さんと呼んでもらいたいとあれほど言ってるだろう!?両親が亡くなった時から、わたしのことをアルバートの親だと思えと!!」
「いや、それは無理なんで……」
オレの両親はこんなんじゃないし。
「それで、話って……」
「本題に入るのが、早すぎるぞ。まずは久々に会ったことに喜びあおう。最近の話題などないのか?」
「それはいらないです」
「冷たいな。昔は可愛かったのになあ。叔父様大好きと天使のような顔で言っていたぞ」
それだいぶ子どもの頃じゃ?
「それで話とはなんです?」
二度目の質問を淡々と繰り替えす。ちょっと陛下は寂しそうになった。横にいる年寄りの宰相が陛下と名を呼んで、話を進めるよう促してくれる。
「うちのバカ息子、オースティンのためにおまえが犠牲になることはないんだぞ!」
えっ!?とオレは思わず驚きの声をあげた。犠牲ってオレのことか?
「シアとフランは王家で引き取ろう。おまえはちゃんとした嫁をもらいなさい」
引き取る?ちゃんとした嫁?
「昔からオースティンの友として付き合ってくれ、尻ぬぐいをしたり止めてくれたりしていたな。こんなことまでしなくていい。あのような、たかが、女一人、気に病むことではない」
あのような?たかが?
「アルバートには良い令嬢がたくさんいる。なにも落ちつぶれた伯爵家のオースティンが見限った妃などを拾わなくとも、良い娘を紹介してやろう」
「……何をいっているのかわかりません」
「うむ?同情してシアとフランを拾って結婚しようとしているのではないか?昔からアルバートは優しいところがあるからな」
オレはシアの王家での扱いがわかった気がした。陛下すらこんな様子では、味方は誰もいなかっただろう。
「陛下、もうオレは神殿に『結婚承諾書』を出しました。それにシアは良い女性ですよ。彼女に声をかけたのはオレからです。聡明で我慢強くて、優しい女性です」
「なんと……」
「彼女の良さをだれもここでは気付かなかったんですか?フランもとてもいい子です。むしろ王家が彼女たちを捨ててくれてありがとうざいますとオレは礼を言いたいですね」
陛下はポカンとしていた。オレの言っていることに驚いているのだろうか?
「い、いや……しかし、オースティンが言うには……あれは陰気臭く、王家の財を狙う女性だと……」
バカ息子の言葉と知りながら、それを人の良い陛下は信じたのか?あのバカオースティンを信じるなんて、呆れたものだ……人の良さは王としてある程度必要だが、時には愚王にしてしまう。良い人ではあるんだがとオレは嘆息する。
「金を狙ってる女性が、実家である伯爵家に帰って、自分で自立しようとするでしょうか?金を請求することなく、自分の子だけ連れて出ていった。それが答えになりませんか?陛下?陰気臭くもありません。明るく笑顔が似合う女性ですよ」
オレだけは彼女の味方でいようと思った。どんなことがあっても。花をプレゼントした時の、あの笑顔は本当に綺麗だなと思った。たった花一輪置いただけなのに、とても幸せそうなうれしい顔をした。その表情をずっと見ていたくなってしまい、数秒、見惚れてしまったが、彼女にバレなかっただろうか?
誰も味方がいないシアが、ここでどんな目にあっていたのか……それを思うと胸が痛かった。
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