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第21話
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アルは忙しい。公爵としての仕事があり、領地の経営、社交でなにかと不在にしている。
私は自由にしていいと言われながらも、毎日勉強していることが多い。なかなかゆっくりと関わる時間はないのが現状だった。
部屋に庭園の花が飾られている。庭園の花を見て、好きなものを庭師が切ってくれて、ジャネットが可愛らしくアレンジしてくれるのだ。
アルからもらったあの花一輪は大切にし、栞にしていた。その花をみるたびに、嬉しい気持ちになりながも、なぜか複雑な気持ちにもなるのだった。
そうよ。契約上の妻だもの。期待を持っちゃだめ。ブンブンと首を横に振る。ビジネスなのよ!これは!!
私は考える。ここを追い出されることもあると思うのよ。だって、もしアルの女アレルギーが治ったとしたら、こんなバツイチの私……オースティン殿下に触れられた私なんて必要ない。もっと若くて純真で可愛くて素直で気品のある令嬢はいくらでもいるわ。
フランはここなら……ここなら……アルなら任せておける気がした。たとえ実の子でなくとも、王家の血が入ってるフランをアルなら邪険にはしないだろう。それにフランもその頃になると成長し、私のこと必要なくなっているかよしれない。
勉強していたが、身が入らなくなってきて、ペンを置いた。ぼんやり考える。
私は私で、一人でもなんとかできる術を身に付けなきゃダメね。
とりあえず、裁縫の腕をあげよう。どこかの衣料品店に雇ってもらえるかも。レースを編んだり細かい刺繍の練習をしたり、勉強とともにしていこう。
それからは夜遅くまで、勉強とその独り立ちのための技術を磨く私になった。
ある夜、フランがムクッと起きて言った。半分寝ぼけているようでもあった。
「母様、大好きです」
そう言って、またパタッと寝てしまう。
私も大好きよ。いつか離れる日が来ても私はフランのこと大好きだわ。そうロウソクに照らされた幼い寝顔を見て思うのだった。
ジャネットはいつも夜に私の髪や肌の手入れをしてくれる。他のメイドも連れてきていて、テキパキと指示を出している。
「シア様の髪質、だいぶ良くなってきましたね!」
満足気に櫛をとおしながら言う。誇らしげなジャネット。
「確かに、今までで一番良いかもしれないわ。ジャネットの手入れ、すごいわね」
あれだけパサパサしていたのに、私は本来の金色の髪の色を取り戻していた。毎晩、丁寧な手の抜かないジャネットに感心してしまう。
「このヘアオイルは花の香りもいいでしょう?あたしが選んでみました。旦那様の好みだと思うんですよねぇ」
「アルの好みなの?」
はいー!と笑う。アルの好みを予想しているなんてさすがだわ。しかもヘアオイルにも詳しいし、最高品質の物だとわかる。ジャネット、私より女性レベル高いわ。
「肌もいい感じだと思うのですがねぇ……顔色、あまり良くなりませんね。あと、食事の量も増えませんし……」
うーんと顎に手をやるジャネット。
「どこか体調が優れない箇所とかありませんか?」
「大丈夫よ。あまり食事の量はもともと食べれないの。ごめんなさい。いつも美味しそうなものを出してくれてるのに……」
「そこは謝るところではありませんよぉ」
なんとなく私は気付いていた。夜、あまり寝ずに勉強したり裁縫をしたりしているせいだと。あまり休めてないせいかもしれない。最近、ずっと眠い。だけどそれを口にしてはいけない気がした。アルや他の人達からできない公爵夫人と失望されたくない。それにいつか来る日のために何か技術が私にはいるもの。
では、ゆっくり休んでくださいよとジャネットと他のメイドたちが頭を下げて出て行った。
次の日のことだった。
「シア!これにサインしてくれ。忘れていた」
アルの手には『結婚承諾書』というものがあった。これにサインして神殿に提出すれば結婚が成り立つ。そういえば、書いてなかったわ。
私はためらうことなく、スラスラとサインをした。アルはありがとうと言ってしまう。
「じゃ、ちょっと王都まで行ってくる」
「え?」
いたずらっ子がいたずらをバレた時のように、アルはハハッと笑う。だけど、内容はいたずらどころの話ではなかった。
「陛下に呼び出されたんだ。シアとフランのことで話があるってね。結婚の承諾を一応、陛下からも得ないとまずいだろう?たぶんその話だと思う。ちょっと行ってくるよ」
「そんな……」
「不安な顔をしなくていい。すぐ帰ってくるよ」
そう言って、アルは王都へと出かけていったのだった。オースティン殿下の父であり、現王。そしてアルの叔父様にあたる方になる。
私はもちろん会ったことがある。それほど気難しい方ではなく、どちらかといえば、誠実な方だと思っている。だけど、どうだろう?どんなふうに思っているかしら?私のことやフランのこと。
不安がジワリと胸にしみていくのだった。
私は自由にしていいと言われながらも、毎日勉強していることが多い。なかなかゆっくりと関わる時間はないのが現状だった。
部屋に庭園の花が飾られている。庭園の花を見て、好きなものを庭師が切ってくれて、ジャネットが可愛らしくアレンジしてくれるのだ。
アルからもらったあの花一輪は大切にし、栞にしていた。その花をみるたびに、嬉しい気持ちになりながも、なぜか複雑な気持ちにもなるのだった。
そうよ。契約上の妻だもの。期待を持っちゃだめ。ブンブンと首を横に振る。ビジネスなのよ!これは!!
私は考える。ここを追い出されることもあると思うのよ。だって、もしアルの女アレルギーが治ったとしたら、こんなバツイチの私……オースティン殿下に触れられた私なんて必要ない。もっと若くて純真で可愛くて素直で気品のある令嬢はいくらでもいるわ。
フランはここなら……ここなら……アルなら任せておける気がした。たとえ実の子でなくとも、王家の血が入ってるフランをアルなら邪険にはしないだろう。それにフランもその頃になると成長し、私のこと必要なくなっているかよしれない。
勉強していたが、身が入らなくなってきて、ペンを置いた。ぼんやり考える。
私は私で、一人でもなんとかできる術を身に付けなきゃダメね。
とりあえず、裁縫の腕をあげよう。どこかの衣料品店に雇ってもらえるかも。レースを編んだり細かい刺繍の練習をしたり、勉強とともにしていこう。
それからは夜遅くまで、勉強とその独り立ちのための技術を磨く私になった。
ある夜、フランがムクッと起きて言った。半分寝ぼけているようでもあった。
「母様、大好きです」
そう言って、またパタッと寝てしまう。
私も大好きよ。いつか離れる日が来ても私はフランのこと大好きだわ。そうロウソクに照らされた幼い寝顔を見て思うのだった。
ジャネットはいつも夜に私の髪や肌の手入れをしてくれる。他のメイドも連れてきていて、テキパキと指示を出している。
「シア様の髪質、だいぶ良くなってきましたね!」
満足気に櫛をとおしながら言う。誇らしげなジャネット。
「確かに、今までで一番良いかもしれないわ。ジャネットの手入れ、すごいわね」
あれだけパサパサしていたのに、私は本来の金色の髪の色を取り戻していた。毎晩、丁寧な手の抜かないジャネットに感心してしまう。
「このヘアオイルは花の香りもいいでしょう?あたしが選んでみました。旦那様の好みだと思うんですよねぇ」
「アルの好みなの?」
はいー!と笑う。アルの好みを予想しているなんてさすがだわ。しかもヘアオイルにも詳しいし、最高品質の物だとわかる。ジャネット、私より女性レベル高いわ。
「肌もいい感じだと思うのですがねぇ……顔色、あまり良くなりませんね。あと、食事の量も増えませんし……」
うーんと顎に手をやるジャネット。
「どこか体調が優れない箇所とかありませんか?」
「大丈夫よ。あまり食事の量はもともと食べれないの。ごめんなさい。いつも美味しそうなものを出してくれてるのに……」
「そこは謝るところではありませんよぉ」
なんとなく私は気付いていた。夜、あまり寝ずに勉強したり裁縫をしたりしているせいだと。あまり休めてないせいかもしれない。最近、ずっと眠い。だけどそれを口にしてはいけない気がした。アルや他の人達からできない公爵夫人と失望されたくない。それにいつか来る日のために何か技術が私にはいるもの。
では、ゆっくり休んでくださいよとジャネットと他のメイドたちが頭を下げて出て行った。
次の日のことだった。
「シア!これにサインしてくれ。忘れていた」
アルの手には『結婚承諾書』というものがあった。これにサインして神殿に提出すれば結婚が成り立つ。そういえば、書いてなかったわ。
私はためらうことなく、スラスラとサインをした。アルはありがとうと言ってしまう。
「じゃ、ちょっと王都まで行ってくる」
「え?」
いたずらっ子がいたずらをバレた時のように、アルはハハッと笑う。だけど、内容はいたずらどころの話ではなかった。
「陛下に呼び出されたんだ。シアとフランのことで話があるってね。結婚の承諾を一応、陛下からも得ないとまずいだろう?たぶんその話だと思う。ちょっと行ってくるよ」
「そんな……」
「不安な顔をしなくていい。すぐ帰ってくるよ」
そう言って、アルは王都へと出かけていったのだった。オースティン殿下の父であり、現王。そしてアルの叔父様にあたる方になる。
私はもちろん会ったことがある。それほど気難しい方ではなく、どちらかといえば、誠実な方だと思っている。だけど、どうだろう?どんなふうに思っているかしら?私のことやフランのこと。
不安がジワリと胸にしみていくのだった。
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