女嫌いの旦那様、その愛本物ですか?

カエデネコ

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第49話

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「ただいま」

 アルが帰ってきた。私はちょうど一階にいたため、おかえりなさいませと出迎えた。ヴォルフとフランも一緒にいる。

 アルがクンクンと自分の服のにおいを嗅いでいる。

「どうしたのですか?」

「え?いや……獣臭がしないかなと思って……」

 獣の匂い??なぜかヴォルフもアルのその一言で自分の服の匂いを嗅ぎだして確認している。その横にいたフランまで匂いを嗅いでいる。

「あの?三人で何をしてるんです?」

『なんでもない』そう口をそろえて言う三人だった。なにかありそうだけど、気まずそうだし、そっとしておくことにした。

「ヴォルフと話し合うことがある」

「嫌やわ~。まだ怒ってはるん?シア様!助けてーやー!」

 えっ?何があったの?アルがヴォルフを睨むように見ている。

「叱るなら僕にしてくださいっ!僕が悲しそうだったから、ヴォルフさんは考えてくれたんです!」

 えええっ!?なに!?なにがあったの!?私だけ話についていけてない気がするわ。

「フランはええ子やなぁ。気にせぇへんでええでー。アルは怒ってへんよなぁ?」

 ヴォルフにニコニコしながら言われ、フランには必死に言われ、二人からの攻撃に、アルは少し怯んだ。

「フラン、今後、こういうことはしないでくれ。オレは心配しているし、なにかあったら……おまえだけの問題では終わらないんだ。公爵家、そして王家の血が入っていることをもう少し自覚したほうがいい」
 
 なにかやってしまったのね……と私はアルが真剣に言う姿を見て思った。フランはうなだれ、ごめんなさいと謝っている。

 クルッとヴォルフの方を向き直るアル。ガッと拳で頬を殴った。細身のアルなのに、殴られたヴォルフは一、二歩よろけた。

『アル!!』

 私とフランの声が重なる。驚いて私は止めようとしたが、アルが手をグーパーしつつ、目を鋭くさせて、ヴォルフを見据えていて、入ってくるな!という雰囲気だった。

「ヴォルフ、おまえを雇ったのはオレだ。何かあればオレはきっと自分を責めるだろう。二度目は解雇する。二度とするな。今回はこれで許す」

「いててて。暴力的やなぁ。あ、フランもシア様も気にせえへんでええで?二、三発殴られる覚悟はしてたんや」

「あー、じゃあ、まだ拳、足りないないな」

「いやいやいや!アル!!それはないやろお!?もうやめてーやー!」

 ジャネットが玄関の騒ぎを聞きつけて、やってきて、アルとヴォルフを交互に見て、冷静に言った。

「奥様、気になさらないで大丈夫です。男は拳でわかりあえるとか思ってるんですからねっ。ヴォルフはそういう男の熱き戦いみたいなのが好きなんですから、大丈夫?なんて声をかけなくてけっこうですからねっ!」

「冷たいやん!なんかワイが悪者やん!?」

 フランがどうしようと目を潤ませていたが、ヴォルフのおどけた様子がおかしくて、アハハっと笑った。頬は赤いが、まったく気にしないヴォルフ。肩をすくめて、アルは呆れている。

「フランのために、自分を犠牲にしてくれて……」

 私が笑っていいのかどうしたらいいのかわからなくて、そう言うと、ジャネットが違いますよと首を振る。アルもその言葉にそうだとうなずく。

「こいつは自分が楽しいことなら、なんでもやってしまう。フランにかこつけて、学校祭にいきたかったんだろう?」

「ご名答やわ。久しぶりにアルと学校へ行きたいと思ってしもうたんや」

「いらんことを思うな!」

「アル、女子生徒に近寄れへんでな。面白かったわ!」

 アルがもう一発殴りそうな顔をしている。そろそろヴォルフの口を止めたほうがいいかもしれない。 

「それでも僕のためにありがとうございました。でも本当に反省しました。たくさん心配をかけてしまい、ごめんなさい。最近、とても楽しくて、ちょっと油断してわがままになってしまったんだと思います。失敗してしまいました。気をつけます」

 フランが失敗してしまったとばかりに、顔を歪め、真剣な目でヴォルフとアルを見て、そう話す。私は目を細める。

「フラン、子どもはわがままを口にしてもいいのよ?失敗だってするときもあるわ。まだあなたは幼いんだから、そうやって学んで行くのでしょう」

「まぁ、オレの守れる範囲でなら、わがままもいいんだ。多少のわがままくらい聞いてやるから言うといい」

 私とアルに言われて、フランは嬉しそうにほほを染めて照れたように笑う。天使のような可愛さにキューンとしてしまう。そして上目遣いでフランは言った。

「僕、本当に母様とお父様の子になってよかったなって思います」

 フランっ!と私はその言葉に感動してぎゅっと抱きしめる。かわいすぎるでしょ!?ふと、横を見ると、アルもまた嬉しさを噛みしめる顔をしている。

 私達二人を見て、親ばかになりそうやなぁとヴォルフが呟いたのだった。
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