13 / 21
仲直りのグラタン
しおりを挟む
ザカリアスは魔王様が帰ってくるまでお城に滞在していた。
「なんでおまえがここにいる!?」
「アル~!おかえり!」
軽く挨拶されて、魔王様はウンザリとした表情をした。あからさま過ぎて、ちょっぴりザカリアスが悲しい顔をした。
「勝手に部屋の鍵を開けたな!?マナに何もしなかっただろうな!?」
「大丈夫よ。ルドルフもいたしね」
あたしは大人しくしてたよね!とルドルフに向かって言う。
「僕に感謝の意がほしいね」
使い魔なら当たり前だろうと魔王様に流されて、ルドルフは不満げに頬を膨らませている。
魔王様は部屋着に変えてソファに座る。あたしはお茶を淹れる。ザカリアスが、その様子を見て、ぴくっと片眉を動かす。
「君、『黒薔薇姫』を傍に置き、そんな使用人たちのような真似をさせているのかい?」
ブッ!とお茶を吹き出す魔王様。ザカリアスが汚っ!と避ける。なにしてんですか!とあたしはタオルを持ってくる。
「……なんのことだ?」
「とぼけても無駄だよ。そのネックレス、どうやって手に入れたんだ?我が妹のものだぞ!単なる少女がつけれるものではないし、マナはまさかとは思うけど……」
魔王様は涼しい顔して興奮気味のザカリアスに言い返す。
「たまたま拾ったネックレスを気に入りの者にやってなにが悪い?」
「拾った?本気でそう言っていないよね?」
ザワリとザカリアスの魔力が騒ぐ。だったらなんだ?と魔王様の漆黒の目が相手を挑発するように見た。
緊迫する部屋の空気……ルドルフが怯えるように目を見開く。二人の力が強いことがわかる。カタカタと机の上の物が動き出す。
このままでは、大変なことになる。危険だと
本能でわかる。……でもどうしたらいいのよ。
はっ!そういえば……あたしは叫んだ。
「二人ともやめてー!そろそろできたわよ!」
『何が?』という疑問符を浮かべてこちらを見る二人。タイマーがピピピッと鳴る。あたしは一度調理場へ帰って、鍋つかみでオーブンの中の物を取り出し、慌てて魔王様の部屋まで戻る。
「ちょうど良かったわ。アツアツのグラタンです。どうぞ召し上がれ!冷めたら美味しくないから、今すぐよ!すぐ食べましょう」
キョトンとしてから、ザカリアスがアハハッと笑って緊張を解く。魔王様はちゃっかり皿を持っている。
「とりあえず食べてからにするか」
「そうしようか!」
意見が一致したようだ。
あたしは焦げたチーズのところを上にし、とろりとしたホワイトソースとジャガイモ、ベーコン、ゆで卵の入ったグラタンをよそっていく。チーズのいい匂いがする。
「熱っ!でもうまい!チーズとソースが具に絡んでいい感じだな」
魔王様の表情が緩む。
「ジャガイモとゆで卵のグラタン初めて食べたけど美味しいね!ホコホコしてるなぁ」
ザカリアスも美味しそうに頬張る。あたしはそれを見て微笑む。
「あたしは料理を作って、みんなの幸せそうな顔を見るのが好きなんです!美味しいって言われるのも嬉しいです。魔王様に無理矢理させられているわけではありません」
ザカリアスがあたしを見て困ったように笑う。そして食べながら魔王様に言う。
「マナの作ったものを食べると、なんだか元気を貰える気がするんだけどな?」
「おまえに隠しても、もう食べてしまい、バレてるだろうから言うが、なんらかの効果が付与されている」
やっぱり!と言う。グラタンはさしずめ、体力アップのようだよ!と鑑定している。
「マナがこんな力を持っているなんて。まさかとは思うけど、時々、アルが人の世界へ行っていたのは……」
魔王様は手を上げてそこまでにしろとザカリアスを制した。
「だからおまえには見せくなかったんだ」
「そりゃ気になるのは仕方ないだろう!もし『黒薔薇姫』なら僕の妹なんだぞ!ゴーシュ家の姫君を返してもらいたい」
「マナがそうであるという証拠はない」
ザカリアスが馬鹿言うなよと魔王様に言う。
「君が見間違うはずがないだろう。じゃあ、こうしないかい?ゴーシュ家に来てくれ」
……こんな経緯で
「なんでおまえがここにいる!?」
「アル~!おかえり!」
軽く挨拶されて、魔王様はウンザリとした表情をした。あからさま過ぎて、ちょっぴりザカリアスが悲しい顔をした。
「勝手に部屋の鍵を開けたな!?マナに何もしなかっただろうな!?」
「大丈夫よ。ルドルフもいたしね」
あたしは大人しくしてたよね!とルドルフに向かって言う。
「僕に感謝の意がほしいね」
使い魔なら当たり前だろうと魔王様に流されて、ルドルフは不満げに頬を膨らませている。
魔王様は部屋着に変えてソファに座る。あたしはお茶を淹れる。ザカリアスが、その様子を見て、ぴくっと片眉を動かす。
「君、『黒薔薇姫』を傍に置き、そんな使用人たちのような真似をさせているのかい?」
ブッ!とお茶を吹き出す魔王様。ザカリアスが汚っ!と避ける。なにしてんですか!とあたしはタオルを持ってくる。
「……なんのことだ?」
「とぼけても無駄だよ。そのネックレス、どうやって手に入れたんだ?我が妹のものだぞ!単なる少女がつけれるものではないし、マナはまさかとは思うけど……」
魔王様は涼しい顔して興奮気味のザカリアスに言い返す。
「たまたま拾ったネックレスを気に入りの者にやってなにが悪い?」
「拾った?本気でそう言っていないよね?」
ザワリとザカリアスの魔力が騒ぐ。だったらなんだ?と魔王様の漆黒の目が相手を挑発するように見た。
緊迫する部屋の空気……ルドルフが怯えるように目を見開く。二人の力が強いことがわかる。カタカタと机の上の物が動き出す。
このままでは、大変なことになる。危険だと
本能でわかる。……でもどうしたらいいのよ。
はっ!そういえば……あたしは叫んだ。
「二人ともやめてー!そろそろできたわよ!」
『何が?』という疑問符を浮かべてこちらを見る二人。タイマーがピピピッと鳴る。あたしは一度調理場へ帰って、鍋つかみでオーブンの中の物を取り出し、慌てて魔王様の部屋まで戻る。
「ちょうど良かったわ。アツアツのグラタンです。どうぞ召し上がれ!冷めたら美味しくないから、今すぐよ!すぐ食べましょう」
キョトンとしてから、ザカリアスがアハハッと笑って緊張を解く。魔王様はちゃっかり皿を持っている。
「とりあえず食べてからにするか」
「そうしようか!」
意見が一致したようだ。
あたしは焦げたチーズのところを上にし、とろりとしたホワイトソースとジャガイモ、ベーコン、ゆで卵の入ったグラタンをよそっていく。チーズのいい匂いがする。
「熱っ!でもうまい!チーズとソースが具に絡んでいい感じだな」
魔王様の表情が緩む。
「ジャガイモとゆで卵のグラタン初めて食べたけど美味しいね!ホコホコしてるなぁ」
ザカリアスも美味しそうに頬張る。あたしはそれを見て微笑む。
「あたしは料理を作って、みんなの幸せそうな顔を見るのが好きなんです!美味しいって言われるのも嬉しいです。魔王様に無理矢理させられているわけではありません」
ザカリアスがあたしを見て困ったように笑う。そして食べながら魔王様に言う。
「マナの作ったものを食べると、なんだか元気を貰える気がするんだけどな?」
「おまえに隠しても、もう食べてしまい、バレてるだろうから言うが、なんらかの効果が付与されている」
やっぱり!と言う。グラタンはさしずめ、体力アップのようだよ!と鑑定している。
「マナがこんな力を持っているなんて。まさかとは思うけど、時々、アルが人の世界へ行っていたのは……」
魔王様は手を上げてそこまでにしろとザカリアスを制した。
「だからおまえには見せくなかったんだ」
「そりゃ気になるのは仕方ないだろう!もし『黒薔薇姫』なら僕の妹なんだぞ!ゴーシュ家の姫君を返してもらいたい」
「マナがそうであるという証拠はない」
ザカリアスが馬鹿言うなよと魔王様に言う。
「君が見間違うはずがないだろう。じゃあ、こうしないかい?ゴーシュ家に来てくれ」
……こんな経緯で
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました
きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる