天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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曲者の王と強者の王

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「お久しぶりです。ユクドールの王」

 コンラッドを連れて謁見の間に立つ。周囲の目が痛い。オレは玉座に座る王を真っ直ぐに見て挨拶した。

 焦げ茶の髪に髭をはやした貫禄のある王は鋭い目でコンラッドとオレを交互に見て睨む。そして立ち上がってコンラッドの前へ行く。

「この愚か者め!相手に良いように踊らされ、負け戦をしてきたとは恥さらしな!当分部屋から出るな!」

 怒鳴った瞬間、バシッとコンラッドの頬を殴る。周囲が息を呑む。

「コンラッド!」

 オレは体がよろけて倒れかけたコンラッドを受け止める。

「情に流され、適切な判断を見失ったのだろう。連れて行け!」

 コンラッドは虚ろな目になっている。大丈夫ですと短手を貸したオレに短くそういうと、衛兵と共に去っていく。

 怒りを見せていた王は玉座に戻り、ふぅ……と嘆息した。イライラとした雰囲気を隠さない。

「なにも殴らずともいいと思うが?殴ってなにか変わるわけでもないだろう?」

「エイルシア王国のウィルバートか。獅子王などと言われてもコンラッドと仲の良い、ただの小僧と思っていたらやってくれたな」

「宣戦布告してきたのはそちらだ」

「……今まで調べてきた戦い方とは少し違っていたが?やけに面妖な戦い方をしたな」

「それについては答える必要を感じないな。オレは交渉をしに来たのだからな」

 オレの強い言い方に周りがザワザワしだした。

「無礼な……小国がたった一度勝利しただけで、この態度か?図に乗るな!」

 攻めてきて、敗戦して捕虜までいるこっちに頭を下げるのはそっちだろ?とエリックがオレの後ろで呟くと、セオドアに静かに!と怒られている。

「生意気な王に育ったものだ。そなたの父はまだ頭を下げることを知っていたぞ」

「頭を下げて効果があるならばするが、今は効果が無いとわかっている」

「ハハハ!たしかに!ウィルバート………いや、エイルシア王!面白いやつだ。おまえが我が息子ならばよかったのだがな」

 お断りだ。こんな狸親父。

「今日は疲れただろう?ゆっくり体を休め、交渉のテーブルを用意する」

「気遣いに感謝する……が、国の方も気がかりだから、あまりゆっくり過ごす時間もない。申し訳ないが、早々に帰りたい」

「そう言うな。一緒に会食をしたのはいつぶりだ?美味い酒がある。共に飲もうではないか?」

 オレは返事をせず、ペコッと一礼し、身を翻した。

 玉座の間から出るとボソッとセオドアがオレに話しかける。

「陛下はリアン様がいないと性格も顔つきも以前の陛下に戻りますね」

 怖い怖いとエリックが笑う。

「……リアンを怖がらせたくないからな」

 優しくてボーッとしたウィルだと思っていたリアン。ウィルバートのオレを受け入れてくれてはいるが、あまり残酷な行為も無情な顔も見せたくはない。

「お優しいウィルバート様だね。あの王妃なら、別になんともおもわなさそうだけど?あんな策を使うんだしね!さーて、仕事してきますかねっ!」

 エリックが明るくそう言うと、じゃー、後で~と居なくなる。セオドアが肩をすくめる。

「エリックはどこへ?」

「エリックの使い道はいろいろあるからな。連れてきた意味は後からわかる」

 ニヤリととオレは笑い、与えられた部屋を見回した。ガンッと壁を蹴る。

 ガサゴソと壁から慌てた音がした。まったく……見張るならもっとうまくやれよ。

「敵中はネズミだらけだな」

「我々は狼の群れに放り込まれた羊ではありませんか?敵に食われないように気をつけなければ……ユクドールの大国の名を傷つけたウィルバート様に反撃しようとしているかと……」

 オレは冷笑した。

「オレらが羊?むしろ狼だろ」

 セオドアがオレの鋭い視線を受けて表情が固まる。左様ですねとそう肯定したのだった。こちらが喰らいつく。大国だと油断しているであろうやつらに。
 

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