天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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黒の王妃は語る

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 黒の王妃ベルとは仲良くなってしまった……というより懐かれてしまった。時間があるとお茶をご一緒にどうですかと誘われたりパーティーでもニコニコして私の゙傍にいたりする。  

「リアン様はわたくしたちのためにコンラッド様にお話してくれてましたでしょう?」

「いえ……そこまで考えていません」

 私が他国の後宮、しかもその王のために作られたものなのに意見をするなんておこがましかったと少し反省している。

「名前のないわたくしたちに同情してくださったんですね。リアン様はお優しい方なんですね」

「そんなことないですわ」

 フフッとベルは笑う。大人しそうな印象だったけれど、話し始めると親しみやすい人だった。

「そんなに不幸ではありませんのよ。他の国は仲の悪い後宮もありますけれど、わたくしたちはまだ仲の良い後宮だと思いますわ。姉妹のように楽しくしておりますの。コンラッド様の゙いらっしゃる時は……多少荒れてしまいますけれど、普段は一緒にパーティーの゙段取りをしたり、刺繍をしたり、女同士での゙お喋りはおもしろいですわ」

「そうなのですね……私、あまり後宮について知らなくて……」

 良かったら教えますわとニコニコしている。ありがとうございますと私はそう言ったけれど、なんとなく普通の後宮に入ったら3日と保たない気がした。

 例えばウィルバートが他の女性を選び、夜の時間をすごしたり、お茶の時間を特定の王妃とだけすごしたりするのを見ていなきゃいけないわけ?

 そんな想像が現実になることはこれからいくらでもあると、突きつけられてる気がした。想像したくなかったのに、彼女たちに会ったことで、想像せざるを得なくなってしまった。

 私は国の未来なら50年、100年先を描くことは得意なのに、自分のこととなると、とても苦手なのだと気づく。

「失礼にあたるのかもしれないと思うのですが、聞くことを許してください。コンラッド様のことは後宮にいらっしゃる王妃様達は皆、愛してますの?」

 私は一番疑問だったことを尋ねる。

「もちろんですわ。愛するためにコンラッド様の後宮へ入ったのですわ……リアン様が思う愛とは少し違うかもしれませんけれど」

 ではコンラッドはどうなのだろう?と言う前に彼女は私の゙心に気づく。

「コンラッド様には愛というものは無いかもしれませんわ。それでもいつか寵愛してくださることを夢見て、わたくしたちは常に努力していきますわ」

「努力ですか……私は私の゙したいことさせてもらってるので、ちょっと反省してしまいます」

「リアン様の゙したいことってなんですの?」

 さすがに怠惰な生活を極めることです!と堂々と言えずに言葉に詰まる。

「あら!もしかして、ボードゲームとかですの?わたくしにも教えてくださらない!?コンラッド様の趣味を勉強したいのですわ」

「え?ええ……いいですわ。時間があるときにでも……」

 そう解釈してくれたので、私は慌てて頷いた。

 このまま怠惰に過ごしていて、私は良いのだろうか?ウィルバートが私のことをいつまでも想ってくれるなんてどこにも保証はない。寵愛がなくなって愛されなくなっても後宮からは一生出れない。

 それを私は本当に理解して、後宮に入ったのだろうか?胸がドキドキしてくる。ウィルバートを信じて選んだ道だけど覚悟はできていたのだろうか?
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