天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

文字の大きさ
186 / 304

忙しい王妃

しおりを挟む
「あれ?急いでいるのですか?」

「おー!ちょっと話し相手にならないか?」

 ユクドール王とシザリア王が声をかけてきたけど、時間がない。
 
「急いでいるから後からにしてくださらない……っと、エイルシア王国の滞在はどうかしら?」

「良い休暇ですよ。ただ、お目当ての彼女とお喋りくらいはしたいですね」

「美人が多いから、悪くないなぁ」

 ウィルは国になかなか帰らない二人にイライラしてることを私は知っているけれど、ニッコリ極上の笑顔を浮かべた。

「ぜひ、長く滞在して頂けたら嬉しいわ」

 その一言に気分を良くするシザリア王。逆に不安な顔をするユクドール王のコンラッド。

「歓迎する言葉なのに、怖い気持ちになるのはなぜでしょうか?」
 
「は?ユクドール王は考えすぎだろ!?ハッハッハー!」

「まったく海賊の王は考えが無さすぎるんですよ」

「なんだとー!」

 二人の言葉を背中で聞いて、自室へ飛び込む。素早く服を簡素な物に着替える。

「お嬢様!?どこへお出かけになるんですか!?いけませんよ!陛下の許可を得ていませんのに!」

 アナベルが慌てて止める。今日、護衛についていたフルトンもおいおいと焦りだす。 

「ウィルバート様は視察でいないんだ。勝手なことをしないでくれよ?帰ってきてからでいいだろう?」

「今すぐ、いつもの孤児院へ行きたいのよ。フルトン!ついてきてくれない?」

 威勢が良くて大男のフルトンが、いやいやいや!と手を振る。顔色を変えている。

「勝手なことをすると、陛下にマジで怒られる!イヤだ!ただでもリアン王妃のこととなると陛下はムキになりやすいんだ!」

「大丈夫よ。私が頼んだと言うし、ちゃんとウィルにとりなすわよ」

 フルトンに悪いけど、それが間に合うかわからないけどと心の中でつぶやく。きっとウィルは怒るわね。心の中でフルトンにごめんねと謝る。

 お願いよ!と頼む私にフルトンは怯みだす。

「フルトンがいれば、そんな危険なことないわ!それにいつもの孤児院へ行くだけだもの。すぐ帰ってくれば大丈夫よ。ウィルより早く帰っていればいいのよ」

 すぐ帰ってこれればの話だけど……。

「ホントに自分で行きたがって無理やり外出したって言ってくれよ!?怒られるのはリアン妃だけにしてくれ!」

「フルトン様!本当にお嬢様を外へ!?だめですよ!」

 アナベルが不安な顔をして止める。フルトンは困った顔をしているが、私の様子を見て、嘆息しつつ、言う。

「だめと言われても、行くんだろ?」

「そうね」

 私は即答し、動きやすいように髪の毛をキュッとまとめる。

「……だそうだ。大丈夫だ。このフルトン様が全力で守る」

 任せろ!と強気のフルトンだった。アナベルはやめてください!と最後まで止める。

「お嬢様、アナベルは嫌な予感しかしません!待ってください!」

 さすが長年私のメイドをしているだけある。

「アナベル、もし私になにかあった時、ウィルにクラーク男爵家に行ってと告げておいて!……あっちから来るかもしれないけど」

 お嬢様行ってはいけません!と私の姉のようなアナベルは両手をギュッと握って必死で言うのだった。

 きっとウィルは怒るのが目に浮かぶ。だけど断ち切りたいの。ウィルにいつまでも付きまとわせるわけにはいかないのよ。あの善人の仮面を被った悪人は存在すればすれほど、私達を狙い、不幸にさせたがる。それはこの国にすら影を落とす。

 私はウィルも国も守りたいの。この国であなたと平穏で怠惰な未来を過ごしたいから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...