天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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襲撃するときは徹底的に

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 城下町の郊外にある古びた家だった。

 オレと三騎士が踏み込み、意表を突かれた者たちは、あっという間にその身の自由を奪われていく。次々と悲鳴をあげながら倒れていく。

「オラオラ!よくもフルトン様の顔に泥を塗ったなー!」

「フルトン、八つ当たりだろ。それ……」

 大暴れするフルトンにエリックが呆れたように言いながら、鋭い蹴りで、一人蹴倒した。その動作は軽くさりげないのに、相手はぎゃあ!と悲鳴をあげ、床を這っている。三騎士の強さは人並み以上で、三人揃うと、さらに強くなる気がする。

「ウィルバート様!魔法を使う者がいます!」

 不気味で誰もが白装束に白い覆面という個性無しのやつらだと思ったら、中には戦力になるやつもいるってわけか。

 ゴオオオオオッと音を立てて火の渦が襲い掛かってきた。

「へぇ……」

 オレはニヤリと笑う。魔法はリアンが得意だが、オレもまた使えないわけじゃない。剣を横にし、両手を相手に向ける。力ある言葉で生まれる水球が炎の渦を飲みこみ、その魔法を放った相手すら包み込んでいく。水圧で壁に叩きつけられて苦悶の表情を浮かべる。すかさず、オレはそいつの頭を持って、壁に押し付けた。

 つまらない。意外と呆気なかった。魔法で脅かして威圧するだけか。魔法は使えれば良いってものじゃない。しかし魔法を使えるこいつが主犯か?

「リアンはどこだ?お前たちの背後にいる者の名前を言え」

 痛むらしく、荒い呼吸で首を横に振る。懐から細いナイフを取り出して、目の横にガッと突き立てる。ひいいいいっと悲鳴があがった。

「次は外さない。耳と目どっちにする?息をしてさえいればいいんだ」

 にっこりとオレが笑うと相手はカタカタ震える。笑ってやってるのに失礼なやつだなぁ。

「こ、ここにはいない……偽物の王妃は売られた!奴隷市場へ運んだ!」

「奴隷!?偽物だと!?」

「そうだ!あの女が偽物だとわかった。本物の王妃は城にいると言われた。確かに王妃がいなくなったというのに、騒ぎにもなっていない!}
 
 いや、オレがアナベルにリアンの影武者の王妃役を頼んで、失踪は箝口令をしいたんだけど。

「その偽物という情報は誰から聞いた?それにおまえたちだけで奴隷商と繋がれないだろう?この国では人身売買は法律で禁じられている」

 口を閉ざす……ここで時間をくってる暇はないか。

「おい。こいつを城へ連れていく。主犯の名を吐かせるぞ」

 了解です!とトラスが返事をした。リーダー格であろう数名を捕らえる。後は城へ帰って尋問だな。地下牢へ繋ぐか。

 エリックがオレを見て、ボソッと言う。

「昔のウィルバート様になっている……目がやばい」

 それには答えず、オレは最後の仕上げに魔法で屋敷に火を放つ。燃え盛る家。パチパチと時折、爆ぜる。

「派手に締めくくるなぁ」

 フルトンが花火でも見ているかのように言った。

「後をなるべく残したくないからな。人が来る前に撤収するぞ!」
 
 馬に乗った時だった。

「お待ちください」

 オレたちを呼び止めたのは白装束だが、覆面を取り、平凡な容姿でどこにでもいそうで、どこにいても不思議ではないスパイにはうってつけの人間。オレの前で跪くとスッと服をまくりあげ、腕を見せる。

 その腕には世界商人の証である銀色の腕輪が溶接されて簡単にはとれないようになっている。

「お待ちしてました。クラーク男爵が……『王が行くだろう』と言っていたのは事実だったんですね。驚きました。申し訳ありません。しかし一歩遅かった。リアンお嬢様はここにいません」

「まさか本当に売られたのか!?」

 リアンが大人しく売られた?

「そのまさかです。売られました。奴隷として市場に出されてしまい、その場所はクラーク男爵に一時間ほど前に連絡しましたが、行き違いになったんですね。しかし我々の仲間がリアンお嬢様を見失わないよう追いかけてますから、ご心配なく」

 トラスがリアン様が奴隷!?と驚く。フルトンとエリックは縄で縛ったやつらをまとめている。

 オレはチッと思わず舌打ちした。やはりシナリオは進んでいくのか?リアンの用意した策はまだある。それをすべて必要とするか?

「一つ聞きたいが、奴隷商売に世界商人は関わっているのか?」

 男は表情を崩す。誇りを傷つけられたような嫌な顔をした。

「我々は人を取り扱いません。法も破りません。まぁ、違法スレスレな時こそあれども人道に背くことはしません。それが世界商人です。奴隷商と同じと思われるのは心外です」

「悪い。この国に奴隷商が出入りするにはそれなりの力がいるからな。そうだ……力と地位がな……オレの思ってる人物がこいつらの口から吐かれることは間違いない気がするけどな」

 縛られた男が世界商人の男を見て、裏切り者めが!と叫んだ。

「口の中に毒など仕込んでないですよね?自害できないように口に布を当てておくといいですよ」

 世界商人の男は淡々と布切れを押し込んだ。静かになった……クラーク男爵、このクセの強い商人たちを使ってるんだよな?すごいなとなぜか変に感心してしまったのだった。

「一つ聞いてもいいですか?なぜ陛下自ら、来たんですか?はっきり行って、来ないと思いました。戦い方を見て、噂に違わない『獅子王』だと思いましたが、戦でもないのにたった一人の女性のために……」

 クセの強い商人がオレに問う。

「リアンの策の中ではオレは助けに来ないことになってるだろうな」

 盤上のキングは常に城の安全地帯に置くことは決まってる。

「心配せずとも、キングもクイーンも最後の手札はいつもとってある。リアンも自分の身を守る最後の手札は持っている」

「この国のキングとクイーンは曲者ですね」

 苦い顔をする商人だった。

 それに……とつけ加える。助けに行って、一番にリアンが顔を見るのは、他の誰でもなくこのオレでありたいじゃないかと。

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