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怠惰は流行する
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「最近、後宮でボードゲームやカードゲームが流行りだしたんですよー!これさえあれば、ハリム様の気を引くことができると他の方々がリアン様の真似をしてしてるそうです」
え?と私は窓の外を眺めるのをやめて、アイシャを驚いて見た。
「あと、ハリム様を出迎えに行ったり、見に行ったりするのもやめたらしいです。リアン様のように気のないふりをするのが良いのでは?という話ですよー!」
「私は気のないふりじゃなくて……」
本心なんだけどと言いかけるが、アイシャは楽しそうに語る。
「部屋でゴロゴロ怠惰に過ごして、さらにハリム様の心を手に入れられるなんて最高!って言われてますよ」
「怠惰を流行らせてしまったのかしら」
私はそんなつもりなかったのよと額に手を当てる。そして再び窓の外をぼんやり眺めた。
「困るぞ。異様な後宮になったじゃないか!」
ハリムがそう私に苦情を言う。
「知らないわよ。私は何もしてないのに勝手に他の人がするんだもの」
独特な香りのするタバコを吸って煙をふぅと吐くハリムは横になってくつろいでいる。
「今日はゲームしないの?」
「疲れてるんだ……っと、弱音を掃くのは王ではないな。気が乗らないだけだ」
弱音を吐くのが苦手なのね。私も似ているところがある。心を許してるはずなのに変に意地になっちゃって言えないのよ……今思えば、もっと素直にウィルに伝えればよかったのよね。ハリムを見て、思わず微笑んでしまう。
「じゃあ、世間話でもする?雨が降らないのはいつまで大丈夫なの?」
ぴくりとハリムの形の良い黒い眉毛が動いた。
「水不足のことか?今日、儀式を行ったから明日にでも降る。降らなければ呪術師を斬り捨てる」
「呪術師に罪はないでしょ。昔の形式に則ってしてるだけなんだから。意味のないことしないほうがいいわ。それより現実的にいきましょ」
「なにか考えがあるのか?」
「確かユクドール王国に海水を濾過することができる水の装置があるのよ。エイルシアには水源にダムを作る技術があるの」
ハリムがスゥとタバコを吸った。暫くの間がある。
「それと引き換えに、おまえを返せと?……偽物の王妃なのにか?エイルシア王国を探らせたら、王妃がいなくなったという話は一つもなかった。おまえはただの王妃の身代わりだろう?ユクドールやエイルシアになんの影響力もない」
「私の言葉を信じてくれるのならば、話すけど、はめられて奴隷商に売られたのよ。王宮にいる王妃は私の身代わりになってくれてて……」
「エイルシアからの手紙には確かに王妃だと書かれていた」
「それはエイルシア王が出した手紙ではないのよ。私を嵌めた人がしたことなの!」
白い煙が吐き出されて、空中をたゆたう。静かにタバコを吸い続けるハリム。
「以前なら、謀ったな!騙したやつは首を跳ねる!……と、言いたいところだが、リアン、俺はおまえが王妃だろうが、奴隷だろうが、別に何者でも構わなくなってきた。思いのほか気に入ってしまった。後宮を出るな。ずっとここにいろ」
自分のターバンから何かを外して、私に放り投げる。緑の大きなエメラルドのブローチだった。この大きさの石はなかなか手に入らないだろう。
「それをやろう。きれいだろ?幼い頃、母から貰ったものだ」
母……って帰ってこないハリムのお母様のことよね?ハッ!として私は慌てる。
「そんな大切なものをもらえないわよ!」
「一度、やったものは俺はいらん……ユクドールの海水を濾過する装置か。すぐ使えそうだな。良いことを聞いた。即刻、尋ねてみよう」
よっとかけ声をかけて起き上がり、手をひらひらさせて出ていった。エメラルドのブローチを私はどうしていいかわからず両手に包みこんだ。
え?と私は窓の外を眺めるのをやめて、アイシャを驚いて見た。
「あと、ハリム様を出迎えに行ったり、見に行ったりするのもやめたらしいです。リアン様のように気のないふりをするのが良いのでは?という話ですよー!」
「私は気のないふりじゃなくて……」
本心なんだけどと言いかけるが、アイシャは楽しそうに語る。
「部屋でゴロゴロ怠惰に過ごして、さらにハリム様の心を手に入れられるなんて最高!って言われてますよ」
「怠惰を流行らせてしまったのかしら」
私はそんなつもりなかったのよと額に手を当てる。そして再び窓の外をぼんやり眺めた。
「困るぞ。異様な後宮になったじゃないか!」
ハリムがそう私に苦情を言う。
「知らないわよ。私は何もしてないのに勝手に他の人がするんだもの」
独特な香りのするタバコを吸って煙をふぅと吐くハリムは横になってくつろいでいる。
「今日はゲームしないの?」
「疲れてるんだ……っと、弱音を掃くのは王ではないな。気が乗らないだけだ」
弱音を吐くのが苦手なのね。私も似ているところがある。心を許してるはずなのに変に意地になっちゃって言えないのよ……今思えば、もっと素直にウィルに伝えればよかったのよね。ハリムを見て、思わず微笑んでしまう。
「じゃあ、世間話でもする?雨が降らないのはいつまで大丈夫なの?」
ぴくりとハリムの形の良い黒い眉毛が動いた。
「水不足のことか?今日、儀式を行ったから明日にでも降る。降らなければ呪術師を斬り捨てる」
「呪術師に罪はないでしょ。昔の形式に則ってしてるだけなんだから。意味のないことしないほうがいいわ。それより現実的にいきましょ」
「なにか考えがあるのか?」
「確かユクドール王国に海水を濾過することができる水の装置があるのよ。エイルシアには水源にダムを作る技術があるの」
ハリムがスゥとタバコを吸った。暫くの間がある。
「それと引き換えに、おまえを返せと?……偽物の王妃なのにか?エイルシア王国を探らせたら、王妃がいなくなったという話は一つもなかった。おまえはただの王妃の身代わりだろう?ユクドールやエイルシアになんの影響力もない」
「私の言葉を信じてくれるのならば、話すけど、はめられて奴隷商に売られたのよ。王宮にいる王妃は私の身代わりになってくれてて……」
「エイルシアからの手紙には確かに王妃だと書かれていた」
「それはエイルシア王が出した手紙ではないのよ。私を嵌めた人がしたことなの!」
白い煙が吐き出されて、空中をたゆたう。静かにタバコを吸い続けるハリム。
「以前なら、謀ったな!騙したやつは首を跳ねる!……と、言いたいところだが、リアン、俺はおまえが王妃だろうが、奴隷だろうが、別に何者でも構わなくなってきた。思いのほか気に入ってしまった。後宮を出るな。ずっとここにいろ」
自分のターバンから何かを外して、私に放り投げる。緑の大きなエメラルドのブローチだった。この大きさの石はなかなか手に入らないだろう。
「それをやろう。きれいだろ?幼い頃、母から貰ったものだ」
母……って帰ってこないハリムのお母様のことよね?ハッ!として私は慌てる。
「そんな大切なものをもらえないわよ!」
「一度、やったものは俺はいらん……ユクドールの海水を濾過する装置か。すぐ使えそうだな。良いことを聞いた。即刻、尋ねてみよう」
よっとかけ声をかけて起き上がり、手をひらひらさせて出ていった。エメラルドのブローチを私はどうしていいかわからず両手に包みこんだ。
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