天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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父の心配は空回る

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 父は気分上々だった。なぜなら、陛下から商売に役立つ、何か特権をもらったらしい。

「フッフッフッ。おまえの婿は……いや、素晴らしい陛下は話が早い」

 変な笑い方をしているクラーク男爵家の私の父。ウィルが私の救出にあたって、協力してくれた分だけ褒美を与えると話していたから、それだろう。私は固辞したが、ウィルはそれなりの働きに見合った報奨は必ずいるものだと笑った。

「お父様には助けられましたわ。聞いてみたいことがあって、私との面会の時間を作ってもらったの」

「後宮にいると、なかなか外に出れない。会いたいものにも動きたい時もあるのに難儀なことだな」

 自分が入れたのに、他人事っぽいのが、お父様らしいわ。いちいち返していても話をはぐらかされるだけなので、無視することにした。

「世界商人……一介の世界商人の割に人を仕えさせてるわよね。もしかしてお父様は世界商人の中でも五家と言われる家の者なの?」

 ニヤニヤ笑っていた顔が固まった。そしてあからさまに嫌な顔になる。これもはぐらかされると思ったが、食いついてきた。

「おまえ、そんなことまで知っているのか?」

「少しはね」

「勉強熱心だと思うが、父のことは放っておいてくれ。実家を利用したいならすればいい。だが、詮索はするな」

「お父様はその五家から逃げたか、何かを放棄してお母様と結婚したの?で、新しく商売を始めて、この国にいる?そんな感じなのかしら?」

「詮索するなと言っているだろうがっ!この娘はっ!」

 ムカーッとしている父を尻目に私はニッコリ笑ってやり返す。私の予想はこの反応からして、当たってるのかもしれない。

「今は、その家に許されるかどうかされて、世界商人として繫がりがあるのね。それも上位の世界商人」

「……他の娘たちは素直で可愛いのに、リアンときたら、どうしてこんなふうに育ってしまったのか?」

「お父様とお母様の血を受け継いでるんでしょ。確実にね」

 お父様は何かを考えるように、顎に手をやる。

「惜しい。実に惜しい。リアンなら優秀な世界商人になれただろうな。だが、お母様はこの国が好きだから仕方ないな……陛下を頼むぞ」

 言われずともよ!と思ったので、もちろんよと頷く。ふと、父は真面目な顔になった。

「なあ?リアン、おまえから形ばかりでもいいから、陛下に違う妃も迎えるように進言したらどうだ?その……時期を見てだが?」

「え?」

 珍しく父は言いにくそうに私にそう伝える。

「子どもがこのままできなければ、リアンなら王家の後継者争いが起きることを予想できているだろう?それはこの国にとって、好ましい事態ではない。良き王がせっかく即位してくれた。平和で安定してこそ国は豊かになる」

「わかってるわ」

「おまえたち二人は仲が悪いわけではない。それなのに子ができないなら、次の手を考えるべきだぞ」

「お父様、私が私情を挟み、考えられないと思ってるのね?」

 答えにくいようで、無言の父。

「他の者が、新しい后を娶ることを勧めたら、ウィルは怒るから私に言えと言うことなのね」

「ひどいことをおまえに言っているとは思う」

「そうね。お父様しか言えないかもね。でもその心配はなくなると思うわ」

 私が静かにそう言うと、父は目を丸くした。

「こちらの詮索は不要よ。世界商人さん。これからもよろしくね」

「くっ……なんか、してやられた感じがする」

 最後に父が悔しそうに、そう言い残して帰ったのだった。
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