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先生の正体を探る
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「フェイロン帝国に先生がいるか探してみたんだけど、どうも皇帝陛下の側近という可能性があるんだよね」
ミンツ先輩がまるで世間話の1つというようにサラッと言った。
エイルシア王国の諜報部、意外と優秀だな。いや、感心している場合じゃないけどな。そして側近という事実も驚かないな。あの先生ならなれることは間違いない。
「わりと行き着くのが早かったじゃないか」
「陛下にお褒め頂いて光栄の極み!」
ミンツ先輩は冗談っぽく返してくる。
「実はこないだ来た使者の中の一人を懐柔しておいたんだ。お金で動くやつで助かったよ。もちろん、我が国からもスパイは入れてるよ。でも情報取るなら、こっちのほうが早いんだよね」
ぬかりのないミンツ先輩だ。
「でも重用はするな。一度裏切ったやつは必ず裏切る」
「そのとおりだと思うよ。エイルシア王は先生のこの行動を裏切りだと捉えるかい?それともなにか思惑があると捉えるかい?」
「先生のことはまだわからない」
ミンツ先輩も実はわからないんだと言って笑う。
「もし側近という立場で、フェイロン帝国にいるなら、相当めんどうだよね」
ミンツ先輩は軽口のようにそう言うが、中身は深刻だ。思った以上に先生は内部に影響を与える位置にいるということか。
「しかも只者ではないんだ。新しい側近は前王の弟だそうだ」
え!?ちょっと待て!?オレは手にのせていた顎がずりっと落ちて、危うく机にぶつけるところだった。思わず姿勢を正す。
「なっ、なんだって!?人違いじゃないのか!?先生は貴族……皇族だったってことか!?山で熊倒していたり、ずっと魚釣りしていたりする人がか!?はっきり言うけど変人だぞ!?」
本当に先生なのか!?なんかいきなり可能性が低くなったんだが……。
「そうらしい。前皇帝とは仲があまり良くなかったらしいが、今の皇帝になって急に戻ってきたそうだ。突然現れたその人物は新皇帝の横に並び紹介された時、フェイロン帝国の内部は相当驚いたらしい。現れた時期がちょうど先生のいなくなった時と重なる。またその風貌もぴったり合うんだよね」
「先生は政治に関わることは嫌だと言い、隠れ住んでいたのに、なぜ急に……?」
「そこまでは情報を入手できなかったし、エイルシア王国とは遠い地にいて、手を出してくる意味もわからない。まあ、当然、新皇帝にはたくさんの妻と子供がいてね、クロエ王女との縁談に使われているのは第7皇子らしい」
オレは眉をひそめる。
「第7皇子?王位継承から随分と遠いな。やはり本気ではなく、ただの揺さぶりとみていいのか?それとも親交を深めたいとか?」
ミンツ先輩はどれだろうとそこに答えはないが、空中を見上げている。
「うーん……師匠は自国であるフェイロン帝国をなんらかの理由で追い出され、エイルシア王国に流れ着いた。そしてまた帰って……なぜ帰るんだろうか?」
「そうなんだ。この国で暮らしていた先生は何か不満を持っていただろうか?けっこう充実し、満足した様子で暮らしていたよね。それに何度も王宮へ招聘されたものの、断り続けていただろう?かろうじて、王子の教育係……まさかウィルの教育係だったとは思わなかったけど、教育係として王家とつながりがあった程度だったよね」
「ああ。父王が何度も先生に頼んでいるのをオレは聞いたことがあるが、政治に関わりたくないと固辞していた」
それがなぜ?とミンツ先輩とオレは疑問に思う。そこに先生が描いているであろう未来図へのヒントが隠されている。だが、まったくわからなかった。先生の気持ちを動かしたフェイロン帝国の皇帝ならばわかるのだろうか?
そんな話をしていた時だった。
「陛下。フェイロン帝国から第7皇子が外遊をしているそうで、エイルシア王国にも立ち寄りたいとの連絡がきました。どうしますか?」
オレとミンツ先輩は顔を見合わせた。
エイルシア王国への入国を許可する。そうオレは答えた。先生の意図がわからないならば、それを探っていくしかないからだ。
受けてたつしかない。仕掛けられているのだ。そして、そのうち先生には確実に会うことになるだろう。そう思ったのだった。
ミンツ先輩がまるで世間話の1つというようにサラッと言った。
エイルシア王国の諜報部、意外と優秀だな。いや、感心している場合じゃないけどな。そして側近という事実も驚かないな。あの先生ならなれることは間違いない。
「わりと行き着くのが早かったじゃないか」
「陛下にお褒め頂いて光栄の極み!」
ミンツ先輩は冗談っぽく返してくる。
「実はこないだ来た使者の中の一人を懐柔しておいたんだ。お金で動くやつで助かったよ。もちろん、我が国からもスパイは入れてるよ。でも情報取るなら、こっちのほうが早いんだよね」
ぬかりのないミンツ先輩だ。
「でも重用はするな。一度裏切ったやつは必ず裏切る」
「そのとおりだと思うよ。エイルシア王は先生のこの行動を裏切りだと捉えるかい?それともなにか思惑があると捉えるかい?」
「先生のことはまだわからない」
ミンツ先輩も実はわからないんだと言って笑う。
「もし側近という立場で、フェイロン帝国にいるなら、相当めんどうだよね」
ミンツ先輩は軽口のようにそう言うが、中身は深刻だ。思った以上に先生は内部に影響を与える位置にいるということか。
「しかも只者ではないんだ。新しい側近は前王の弟だそうだ」
え!?ちょっと待て!?オレは手にのせていた顎がずりっと落ちて、危うく机にぶつけるところだった。思わず姿勢を正す。
「なっ、なんだって!?人違いじゃないのか!?先生は貴族……皇族だったってことか!?山で熊倒していたり、ずっと魚釣りしていたりする人がか!?はっきり言うけど変人だぞ!?」
本当に先生なのか!?なんかいきなり可能性が低くなったんだが……。
「そうらしい。前皇帝とは仲があまり良くなかったらしいが、今の皇帝になって急に戻ってきたそうだ。突然現れたその人物は新皇帝の横に並び紹介された時、フェイロン帝国の内部は相当驚いたらしい。現れた時期がちょうど先生のいなくなった時と重なる。またその風貌もぴったり合うんだよね」
「先生は政治に関わることは嫌だと言い、隠れ住んでいたのに、なぜ急に……?」
「そこまでは情報を入手できなかったし、エイルシア王国とは遠い地にいて、手を出してくる意味もわからない。まあ、当然、新皇帝にはたくさんの妻と子供がいてね、クロエ王女との縁談に使われているのは第7皇子らしい」
オレは眉をひそめる。
「第7皇子?王位継承から随分と遠いな。やはり本気ではなく、ただの揺さぶりとみていいのか?それとも親交を深めたいとか?」
ミンツ先輩はどれだろうとそこに答えはないが、空中を見上げている。
「うーん……師匠は自国であるフェイロン帝国をなんらかの理由で追い出され、エイルシア王国に流れ着いた。そしてまた帰って……なぜ帰るんだろうか?」
「そうなんだ。この国で暮らしていた先生は何か不満を持っていただろうか?けっこう充実し、満足した様子で暮らしていたよね。それに何度も王宮へ招聘されたものの、断り続けていただろう?かろうじて、王子の教育係……まさかウィルの教育係だったとは思わなかったけど、教育係として王家とつながりがあった程度だったよね」
「ああ。父王が何度も先生に頼んでいるのをオレは聞いたことがあるが、政治に関わりたくないと固辞していた」
それがなぜ?とミンツ先輩とオレは疑問に思う。そこに先生が描いているであろう未来図へのヒントが隠されている。だが、まったくわからなかった。先生の気持ちを動かしたフェイロン帝国の皇帝ならばわかるのだろうか?
そんな話をしていた時だった。
「陛下。フェイロン帝国から第7皇子が外遊をしているそうで、エイルシア王国にも立ち寄りたいとの連絡がきました。どうしますか?」
オレとミンツ先輩は顔を見合わせた。
エイルシア王国への入国を許可する。そうオレは答えた。先生の意図がわからないならば、それを探っていくしかないからだ。
受けてたつしかない。仕掛けられているのだ。そして、そのうち先生には確実に会うことになるだろう。そう思ったのだった。
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