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シザリアの王子とエイルシアの王女
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「カイルお兄様!」
久しぶりにシザリアの王子であるカイル王子……わたしの従兄弟にあたる人なんだけど、優しくて可愛がってくれていて、お兄様のように親しみやすいから、そう呼んでいる。
「クロエ!クロエ……王女殿下、お久しぶりです」
「王女なんてやめてほしいわ。わたしがお兄様って呼びにくくなっちゃうじゃない!」
カイルお兄様が突然よそよそしくなったので、わたしは頰を膨らませる。
「でもクロエも随分、成長したし、結婚の話があると聞いたからね。こうして二人きりで会うのもいつまで許されるのかな」
「いつまででもです!」
なんだか、今日はいつもよりも元気がないような気がした。前なら一緒にボードゲームしたり、庭園の散歩や乗馬などを楽しんだのに……今回は後宮にある客間で会うだけだと言われた。
「クロエおう……いや、クロエは結婚の話をどうするのかな?」
王女といいかけ、わたしに睨まれたため、やめる。
「するわけないわ!でもわたしがしなきゃエイルシア王国が困るならしかたないかなとは思ってるの」
「クロエが!?そんなことを思っているのか。したくない結婚じゃないのかな?我慢してまで嫁ぐクロエの心が気になってしまうよ」
「一応、自分の役割はわかってるつもりなのよ」
ただし好みのタイプじゃなかったら、断るけどね!という言葉は言わないでおこう。カイルお兄様がとても感動しているのか?目が潤んでいる。このまま美談にしておいたほうがいいわね。
「クロエ、嫌だったら断ってもいいんだよ?それで……もし……よければ……そう、君さえよければなんだが、このお兄様とけっこ……」
「大丈夫よ!お父様もお母様も強制するって感じじゃなくて、わたしの意思を尊重するって感じだったから、無理やりってことはなさそうなの」
カイルお兄様ったら、当事者でもないのに、やけに深刻そうになっているわね。どうしたのかしら?別に話が進んでいるわけじゃないし、なにかあったわけでもないし。考えすぎなんじゃないかしら。どうもカイルお兄様もウィリアムもネガティブなところがあるのよねぇ。
「それに!わたしはまだまだやりたいことがあるもの!それがたとえ、お菓子作りであろうとも!あっ!お兄様、そのアップルパイはいかがかしら?わたしが作ったのよ」
「えっ?あ、とても美味しい……よ?」
わたしはそうでしょうとも!とふかーく頷く。
「りんごの品種の50種類の中から、アップルパイに合う品種を探し出し、煮詰める砂糖も3種類から選び、はちみつを入れたもの入れないものを比較し、パイ生地の粉はどこの地域のものが一番上等か調べて使い……そのカスタードクリームも卵の卵黄が濃いもののほうがコクがでるとわかったんです!」
アップルパイをフォークで上品に切って口に入れようとしている手が止まっている。どうしたのかしら?
「お兄様?どうぞ召し上がれ??」
「い、いや……すごすぎないかな?」
「ちょっとコック長が半泣きでしたけど、大丈夫です。最後には『クロエ様についていきます!』ってヤケに……じゃなくて、わたしに感銘を受けてました。素材はお祖父様が集めてくださいましたし」
コック長がお母様に『そろそろクロエ様の謹慎をといてあげてください!』と影で泣きついていたのを知っているけど、カイルお兄様には内緒にしておこう。
「お、おいしいよ……」
絶対おいしいはずなのに、なぜか微妙な顔をしていたカイルお兄様。そして、なにか言いたそうに口を開いては閉じたりを繰り返しては結局言わない。退室時にはドアに額をぶつけて痛いと抑えていたり変な様子なのだった。
カイルお兄様、なにか悩みがあるのかしら??
久しぶりにシザリアの王子であるカイル王子……わたしの従兄弟にあたる人なんだけど、優しくて可愛がってくれていて、お兄様のように親しみやすいから、そう呼んでいる。
「クロエ!クロエ……王女殿下、お久しぶりです」
「王女なんてやめてほしいわ。わたしがお兄様って呼びにくくなっちゃうじゃない!」
カイルお兄様が突然よそよそしくなったので、わたしは頰を膨らませる。
「でもクロエも随分、成長したし、結婚の話があると聞いたからね。こうして二人きりで会うのもいつまで許されるのかな」
「いつまででもです!」
なんだか、今日はいつもよりも元気がないような気がした。前なら一緒にボードゲームしたり、庭園の散歩や乗馬などを楽しんだのに……今回は後宮にある客間で会うだけだと言われた。
「クロエおう……いや、クロエは結婚の話をどうするのかな?」
王女といいかけ、わたしに睨まれたため、やめる。
「するわけないわ!でもわたしがしなきゃエイルシア王国が困るならしかたないかなとは思ってるの」
「クロエが!?そんなことを思っているのか。したくない結婚じゃないのかな?我慢してまで嫁ぐクロエの心が気になってしまうよ」
「一応、自分の役割はわかってるつもりなのよ」
ただし好みのタイプじゃなかったら、断るけどね!という言葉は言わないでおこう。カイルお兄様がとても感動しているのか?目が潤んでいる。このまま美談にしておいたほうがいいわね。
「クロエ、嫌だったら断ってもいいんだよ?それで……もし……よければ……そう、君さえよければなんだが、このお兄様とけっこ……」
「大丈夫よ!お父様もお母様も強制するって感じじゃなくて、わたしの意思を尊重するって感じだったから、無理やりってことはなさそうなの」
カイルお兄様ったら、当事者でもないのに、やけに深刻そうになっているわね。どうしたのかしら?別に話が進んでいるわけじゃないし、なにかあったわけでもないし。考えすぎなんじゃないかしら。どうもカイルお兄様もウィリアムもネガティブなところがあるのよねぇ。
「それに!わたしはまだまだやりたいことがあるもの!それがたとえ、お菓子作りであろうとも!あっ!お兄様、そのアップルパイはいかがかしら?わたしが作ったのよ」
「えっ?あ、とても美味しい……よ?」
わたしはそうでしょうとも!とふかーく頷く。
「りんごの品種の50種類の中から、アップルパイに合う品種を探し出し、煮詰める砂糖も3種類から選び、はちみつを入れたもの入れないものを比較し、パイ生地の粉はどこの地域のものが一番上等か調べて使い……そのカスタードクリームも卵の卵黄が濃いもののほうがコクがでるとわかったんです!」
アップルパイをフォークで上品に切って口に入れようとしている手が止まっている。どうしたのかしら?
「お兄様?どうぞ召し上がれ??」
「い、いや……すごすぎないかな?」
「ちょっとコック長が半泣きでしたけど、大丈夫です。最後には『クロエ様についていきます!』ってヤケに……じゃなくて、わたしに感銘を受けてました。素材はお祖父様が集めてくださいましたし」
コック長がお母様に『そろそろクロエ様の謹慎をといてあげてください!』と影で泣きついていたのを知っているけど、カイルお兄様には内緒にしておこう。
「お、おいしいよ……」
絶対おいしいはずなのに、なぜか微妙な顔をしていたカイルお兄様。そして、なにか言いたそうに口を開いては閉じたりを繰り返しては結局言わない。退室時にはドアに額をぶつけて痛いと抑えていたり変な様子なのだった。
カイルお兄様、なにか悩みがあるのかしら??
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