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シザリアの王子とエイルシアの王子
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シザリアの王子のカイル王子も今回、シザリアの王妃様に同行してきた。僕やクロエよりも、ずっと年上で、昔から兄のように接してくれ、とても優しい人だった。
「ウィリアム王子!ちょっと見ないうちに大きくなったね!」
「久しぶりです。カイル王子」
「昔みたいにお兄様でもいいんだよ?」
もうそういう年齢ではないのでと僕は親しげなカイル王子に照れる。
「これ、お土産なんだ。気に入るかわからないけれど」
「貝殻の標本!?すごい。こんな種類がたくさん!」
カイル王子からは微かに海を渡ってきた潮の香がした。貝の標本は僕の趣味とぴったり合っていた。鉱石、虫、化石などの標本を持っているのを見せたことがあった。僕がこういったものが好きだということを覚えていてくれたようだった。
「ありがとうございます!」
もらったこともうれしいけれど、覚えていてくれたこともうれしかった。
「集めることに時間がかかったり、なかなかエイルシア王国へ来るタイミングがつかめなかったりで、遅くなったね。まだ好きでよかった」
優しい兄のような態度はまったく変わらない。僕はそんなカイル王子に気を許してしまって、つい相談してしまった。
「あの……聞きたいことがあるんです」
「なにかな?」
「父には……いえ、誰にも言わないでほしいんですが……」
「言わないよ。約束する」
僕の目を見て約束してくれるカイル王子。僕が大きくなったと言ったけれど、カイル王子もシザリアの王子として航海へ出ていっているようで、日に焼けて、たくましくなっている。ちゃんと自分の役目をわかっていて、頑張ってる。
「僕、エイルシアの王にふさわしくない気がするんです。カイル王子は玉座を意識したことありますよね?嫌だとか不安とか心配ってなかったんですか?じつは先日、父にこんな話をしたら怒られてしまって……その日から以前よりも甘やかしてもらえなくなった気がするんです」
カイル王子が目を丸くする。そしてアハハと笑った。
「ウィリアム王子!僕も実は君の父上に怒られたんだよ」
「え?」
「母親のドレスの影に隠れるなとね。守れる男になるようにってね。懐かしいよ。エイルシア王は幼少期に苦労をしていたと母から聞いた。君にも強くなってほしいのだと思うよ。母上だけでなく民も守っていかなきゃいけないんだからね」
父がカイル王子にそんなことを言っていたなんて知らなかった。
「誰だって、最初は失敗したり情けない思いをしたりするものさ。不安になるのも当たり前のことだよ。父に航海を学べと言われて、何度も行っているけれど、まだまだ力不足もいいところで……帰港するたびに、今回もまた不甲斐なかったと反省だらけで……」
カイル王子の声が、だんだん小さくなっていき、肩を落としていく。あれ……?
「甘えがまだあるのか……船乗りの才能がないのか……父のように自在に船を操れず……部下を叱咤激励もできず……」
とうとう暗くなって、下を向いてしまう。
「あああ!カイル王子!すいません……僕のせいで、落ち込まないでください!カイル王子はよく頑張っていますし、船の扱いはすぐにできるものではないと思います!」
逆に励ますことになった。
……クロエのほうが王に向いてないか?とは聞けずじまいだった。
「ウィリアム王子!ちょっと見ないうちに大きくなったね!」
「久しぶりです。カイル王子」
「昔みたいにお兄様でもいいんだよ?」
もうそういう年齢ではないのでと僕は親しげなカイル王子に照れる。
「これ、お土産なんだ。気に入るかわからないけれど」
「貝殻の標本!?すごい。こんな種類がたくさん!」
カイル王子からは微かに海を渡ってきた潮の香がした。貝の標本は僕の趣味とぴったり合っていた。鉱石、虫、化石などの標本を持っているのを見せたことがあった。僕がこういったものが好きだということを覚えていてくれたようだった。
「ありがとうございます!」
もらったこともうれしいけれど、覚えていてくれたこともうれしかった。
「集めることに時間がかかったり、なかなかエイルシア王国へ来るタイミングがつかめなかったりで、遅くなったね。まだ好きでよかった」
優しい兄のような態度はまったく変わらない。僕はそんなカイル王子に気を許してしまって、つい相談してしまった。
「あの……聞きたいことがあるんです」
「なにかな?」
「父には……いえ、誰にも言わないでほしいんですが……」
「言わないよ。約束する」
僕の目を見て約束してくれるカイル王子。僕が大きくなったと言ったけれど、カイル王子もシザリアの王子として航海へ出ていっているようで、日に焼けて、たくましくなっている。ちゃんと自分の役目をわかっていて、頑張ってる。
「僕、エイルシアの王にふさわしくない気がするんです。カイル王子は玉座を意識したことありますよね?嫌だとか不安とか心配ってなかったんですか?じつは先日、父にこんな話をしたら怒られてしまって……その日から以前よりも甘やかしてもらえなくなった気がするんです」
カイル王子が目を丸くする。そしてアハハと笑った。
「ウィリアム王子!僕も実は君の父上に怒られたんだよ」
「え?」
「母親のドレスの影に隠れるなとね。守れる男になるようにってね。懐かしいよ。エイルシア王は幼少期に苦労をしていたと母から聞いた。君にも強くなってほしいのだと思うよ。母上だけでなく民も守っていかなきゃいけないんだからね」
父がカイル王子にそんなことを言っていたなんて知らなかった。
「誰だって、最初は失敗したり情けない思いをしたりするものさ。不安になるのも当たり前のことだよ。父に航海を学べと言われて、何度も行っているけれど、まだまだ力不足もいいところで……帰港するたびに、今回もまた不甲斐なかったと反省だらけで……」
カイル王子の声が、だんだん小さくなっていき、肩を落としていく。あれ……?
「甘えがまだあるのか……船乗りの才能がないのか……父のように自在に船を操れず……部下を叱咤激励もできず……」
とうとう暗くなって、下を向いてしまう。
「あああ!カイル王子!すいません……僕のせいで、落ち込まないでください!カイル王子はよく頑張っていますし、船の扱いはすぐにできるものではないと思います!」
逆に励ますことになった。
……クロエのほうが王に向いてないか?とは聞けずじまいだった。
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