天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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海賊は浮かれて心配される

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 ウィルのお姉様のソフィーが訪ねてきた。

「なんの用だ?」

 最近のウィルは気がたっていて、機嫌が悪い。ソフィーはご挨拶ね!と言ってから、私に向き直す。

「弟に会いにきたんじゃないわよ。リアン様に会いにきたのよ。最近、夫のシザリア王が仕事命になってるから退屈なの。リアン様、忙しいなか申し訳ありません」

「いえ、私は大丈夫ですけど、シザリア王は大丈夫ですか?」

「放っておかれたから腹いせに来たってことか?」

 ウィルの言葉はなおも刺々しい。以前、このソフィーとカイル王子を追って、船で突撃してきたものね。警戒するのはわからなくもない。

「……ハッキリいわないでもらえるかしら?」

 私に行きましょっと言って背中を押す。

「ソフィー様がくると聞いたので、後宮の庭園にお茶の席を作りました。季節の花々が見事なんです。陽射しもポカポカしているし気持ちが良いですよ。眠気をちょっと誘われてしまいますけど、私の好きな場所なんです」

「うふふ。最高のティータイムですね。ここでわたくしもよく遊びましたわ」

 気に入ってくれたようで、ソフィーは機嫌が良くなった。

 食べることができる花を使ったクッキーや焼き菓子を私はすすめる。真っ白な生クリームのケーキの上にも色とりどりの花をのせたものをアナベルが手際よく切り分けてくれた。

「かわいらしいですわ!これわたくしのために?」

「そうです。昨年、食べれる花の種をシザリア王が航海へ行った先で、みつけて、エイルシア王国に手土産だとくれたものを植えてみたのです。こんなに良いものになるとは思わず、感謝してます。お茶会で映えるカラフルなお菓子が作れ、好評なんです」

 私の言葉に困ったように笑うソフィー。花のクッキーを一つ摘まんで掲げてみる。

「もうリアン様はお見通しなのですね」

 シザリア王の妻のソフィーはカリッと花のクッキーを齧る。そして口を開く。

「家出してきたわけでも喧嘩してきたわけでもありません。ちゃんと許可をもらってきてます。でも構ってくれないから、腹立たしくなってしまって、エイルシアに来てしまいましたの。このお花を出して、わたくしにシザリア王の忙しさを理解させようとしているのですね?」

 私は苦笑した。わかってきても納得できない時もある。

「最近、シザリア王が忙しいというのは気付いていました。遊びに来る頻度が減ってきたところにソフィー様が来るというので、なんとなくなにかあったのでは?と思いましたが、話なら喜んで聞きます。それに王様業が忙しくて放っておかれる王妃たちがちょっとした愚痴を言ってもバチは当たらないと思いませんか?」

「リアン様はわたくしが言わなくても気づいてましたのね。ありがとうございます。こんな食べられる花を差し上げるなんて、夫ながら……なかなか素敵じゃありません?」

 素敵ですと私はふふっと笑ってソフィーの問いに答えた。好きだからこそ放っておかれると悲しくなったり、寂しくなったりもする。

「わたくし、夫が仕事をがんばっていることは嫌ではありません。船乗りのようなことをしておりますけど、シザリアの王ですもの。皆のために働くことは大事なことだと理解してます」

 ソフィーはそう言って、スミレ色の花とケーキを一緒に口にいれた。私は黄色の花がのったクッキーを食べた。サクサクとしておいしい。花の味は特にしない。甘さが口に広がってきたので、お茶を飲んで緩和させた。渋みとちょうどあう。

「リアン様、実はもう一つ気になることがあって、伺ったのです」

「気になること?」

「最近のシザリア王はフェイロン帝国を気に入っていて、さまざまな交渉や貿易を始めています」

「ええ。そのようね」

「……騙されていないか心配なのです。珍しいものには目がなくて、あれもこれもと貿易を始めているのですが『宝の宝庫だ。シザリア王国は大国になるぞ!』と、そうシザリア王が言うものの、なんだか不安になるんです。悪くいうわけではないのですけれど、良くも悪くも感情にまかせて動くところがありますでしょう?」

 シザリア王のまっすぐに突き進む性格を私は頭に浮かぶ。

「まあ……文化が違うので、売れるものは売れるかもしれませんけれど、どんな交渉をしているのか……」

 私は交渉している場をみていないため、なんともいえないが、のりのりのシザリア王に危うさを感じるのはわかる。

 ソフィーはシザリア王に構ってもらえない寂しさより、不安が大きくて、本当はこっちの話がメインだったのかもしれない。

「ごめんなさい、せっかくの楽しいお茶会なのに、こんなお話をして……リアン様の顔を見るとなんだか不安な気持ちをつい話してしまうのです」

「いいえ、シザリアの王妃様の心配も不安もわかります。じゃあ今からは私の相談にのってくれませんか?」

 なんでしょう?と首を傾げる。ソフィー。

「リアン様の悩みをわたくしなどか解決できるとは思えませんけど?」

「実はウィリアムとクロエなんですけど……」

「まあ!子育ての話なのですね!それなら相談にのれそうですわ」
 
 カラフルな花のお菓子を二人で食べながら、話に花が咲くのだった。
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