352 / 357
第十七章 原点回帰でキビCんです!
第十七話 やっとまともに滝の真竜《アクアマスター》と対談……なんですけど、簡単にはいかないんですよね…
しおりを挟む
「……何と言っていいか……」
『む?』
「何でその格好になっちゃったんですか?」
『何故と問われても、我の趣味、としか答えようがない』
「……趣味っすか……何とも可愛らしい……」
滝の真竜が変身した姿は、小デブではあるんだけど……とっても可愛らしい姿だった。前世にあったゆるキャラみたいな姿だ。
『何か問題があるか?』
「いーえ、まったく」
前の勇壮なドラゴンの姿もいいけど、こっちはこっちでありだ。何よりエイミアが気絶しないのはありがたい。
『ふふん、我の完璧な姿を見よ。世界一格好良いであろう』
いろいろポーズを決めるけど、どうしても「可愛らしい」としか言い様がない。滝の真竜と私達は、根本的に感性が違うのだろう。
「ちなみに……何で私達と会話ができるようになったんですか?」
『我が化身したからに他ならぬ。感謝せよ』
いちいち偉そうなヤツね。まあ偉いんだけど。
『それより……先程の角笛の主は誰か』
「……エイミア、ご指名よ~」
「え? ご指名って……」
私に呼ばれて、前へ進み出るエイミア。
『な、何と! 角笛の主は、我が見初めし娘だったか!』
「我が見初めし……って事は……やっぱり滝の真竜なんですね……」
『そうだ。我こそが滝の真竜なり!』
びしっ! と本人は決めたつもりだろうけど、実際は愛想を振り撒いているようにしか見えない。
「……サーチぃ……どうすればいいんですか?」
「わ、私に聞かないでよ! こんな予想外すぎる展開、私だってついていけないわよ!」
「そ、そんな~……」
……ん? 待てよ?
さっきの角笛の爆音のあとに、滝の真竜は変身したのよね。もしも、エイミアと会話するのが目的だとしたら……?
「エイミア、あんた自身が『私を食べるのは止めて』と意思表示しなさい」
「……へ? だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だから。やってみなさい」
「わ、わかりました…… 滝の真竜さん、いいですか?」
『む? 何ぞや?』
「……わ、私を食べようとしないでください! お願いします!」
『承知した』
「私まだ死にたくない……え?」
……やっぱり。
『≪竜の絆≫を持つ者を食らうなど、我に出来るはずもない。安心せよ、未来永劫お主を食さぬと誓おう』
「ほ、ほ、本当ですか?」
『滝の真竜に二言はない。安心せよ』
「…………うぐっ……良かったああ……びえええええええっ!」
あらあら、緊張の糸が切れたのか、座り込んで泣き出しちゃった。
『何故泣く? 食われぬのだから、嬉しいであろうが』
「……あんたが散々脅したからでしょ」
『我が? 見初めし娘を? 脅した事など一度もないぞ?』
「あのねー、あんたみたいなデカいドラゴンが大口開けて迫ってくれば、誰だって怯えるって!」
『そうなのか? 我は親愛の証を立てようと』
「あれが!? あれが親愛!? 誰が見たって『お前を食べるぜ、うへへ』としか受け取られないわよ!」
『な、何!? そ、そうなのか……』
今の姿なら、誰が見たって『可愛い!』 としか感じないと思う。
「ちょっと、エイミア」
「はい」
「もうめんどくさいから、『七つの美徳』のことを聞いちゃって」
「あ、わかりました……滝の真竜さーん、いいですかー?」
『……む? 何ぞや?』
「『七つの美徳』の事で、お聞きしたいんですけど」
『「七つの美徳」か? もしや七冠の魔狼絡みか?』
「そうです!」
『ふむ……先日、七冠の魔狼が現れた時は、真に驚かされたが……』
え? 現れた?
「てことは、もう力を渡しちゃった……?」
『求められれば拒否する理由はない』
もう堕つる滝まで来てるのか……!
「……ねえ、滝の真竜。まだ力を渡してない真竜って誰かわかる?」
『む……少し待っておれ』
滝の真竜はそう言うと、静かに目を閉じた。どうやら他の真竜と念話をしてるみたいだ。
「……思ったよりも、七冠の魔狼の行動は早いか……」
「ちょっとのんびりし過ぎたかも……しれませんね……」
そうね……温泉入ったり、サウナ入ったり、温泉入ったり……。
「ていうか……私が原因じゃない! しまったあああ……」
「「……今頃気づいたの」かよ……」
「……悪かったわね。2人とも文句あるの?」
エイミアとリルは激しく首を左右に振った。まあいいけど……。
『……わかったぞ』
すると、念話が終わったらしい滝の真竜が私に声をかけてきた。
「……どうだった?」
『力を渡した真竜は、我を入れて4人だ』
……4人。
『氷、地、風……そして我だ』
「じゃあ、それ以外は……」
『火と木は徹底して逃げておる。お前達の為に時間稼ぎをしておるな』
うぅ……温泉を堪能してましたなんて……言えない。
『残りは雷だが……これに関しては心配なかろう』
まあ……ソレイユが陣取ってるからね。
『七冠の魔狼が火と木の力を得る前に、お前達が「七つの美徳」の象徴を集められれば……』
……チャンスはある。
『我からも渡さねばならぬが……』
……が? ま、まさか……。
『我は持っておらぬ。ダンジョン内を探してみるがよい』
「「「「「え……ええ~~!?」」」」」
……今回は獄炎谷のように、簡単にはいかなかった。
「……堕つる滝の中を探せってか? どんだけ広いと思ってんだよ……」
確かに。
横に一番広いダンジョンは旋風の荒野だけど、縦なら堕つる滝よね……。
「……でもありそうな場所って……底くらいじゃないですか?」
「ワイバーン達の集まってた横穴があったでしょ。他にも横穴がある可能性は高いわね」
「あれだけ深いダンジョンで、横穴にも気を付けろ、という事ですか……」
私達の話を聞いていたヴィーが、エイミアの手を取った。
「エイミア、いよいよドラゴンに出陣してもらいましょう」
「え? ドラゴンにですか?」
……あ、そうか!
「音竜!」
「そうです。音竜の超音波でしたら、暗いダンジョン内の探索にはうってつけです。しかも音竜は空を飛べますから……」
「まさに堕つる滝向きなドラゴンじゃない! エイミア、早速角笛で呼び出して!」
「は、はい!」
ぶおおおおんんん……
エイミアの角笛が響き渡る。
……ギャア……ギャア……
「あ、何か集まってきた」
リジーが指差した先に、何か黒いモノが集まっている。
「……こっちに来ました……すごく嫌な予感がするのですが……」
ヴィーが少し逃げ腰になっている。エイミアも同様だ。
「……ねえ……音竜って……要はデカいコウモリ?」
「……みたいです……」
……コウモリかよ……。
『む?』
「何でその格好になっちゃったんですか?」
『何故と問われても、我の趣味、としか答えようがない』
「……趣味っすか……何とも可愛らしい……」
滝の真竜が変身した姿は、小デブではあるんだけど……とっても可愛らしい姿だった。前世にあったゆるキャラみたいな姿だ。
『何か問題があるか?』
「いーえ、まったく」
前の勇壮なドラゴンの姿もいいけど、こっちはこっちでありだ。何よりエイミアが気絶しないのはありがたい。
『ふふん、我の完璧な姿を見よ。世界一格好良いであろう』
いろいろポーズを決めるけど、どうしても「可愛らしい」としか言い様がない。滝の真竜と私達は、根本的に感性が違うのだろう。
「ちなみに……何で私達と会話ができるようになったんですか?」
『我が化身したからに他ならぬ。感謝せよ』
いちいち偉そうなヤツね。まあ偉いんだけど。
『それより……先程の角笛の主は誰か』
「……エイミア、ご指名よ~」
「え? ご指名って……」
私に呼ばれて、前へ進み出るエイミア。
『な、何と! 角笛の主は、我が見初めし娘だったか!』
「我が見初めし……って事は……やっぱり滝の真竜なんですね……」
『そうだ。我こそが滝の真竜なり!』
びしっ! と本人は決めたつもりだろうけど、実際は愛想を振り撒いているようにしか見えない。
「……サーチぃ……どうすればいいんですか?」
「わ、私に聞かないでよ! こんな予想外すぎる展開、私だってついていけないわよ!」
「そ、そんな~……」
……ん? 待てよ?
さっきの角笛の爆音のあとに、滝の真竜は変身したのよね。もしも、エイミアと会話するのが目的だとしたら……?
「エイミア、あんた自身が『私を食べるのは止めて』と意思表示しなさい」
「……へ? だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だから。やってみなさい」
「わ、わかりました…… 滝の真竜さん、いいですか?」
『む? 何ぞや?』
「……わ、私を食べようとしないでください! お願いします!」
『承知した』
「私まだ死にたくない……え?」
……やっぱり。
『≪竜の絆≫を持つ者を食らうなど、我に出来るはずもない。安心せよ、未来永劫お主を食さぬと誓おう』
「ほ、ほ、本当ですか?」
『滝の真竜に二言はない。安心せよ』
「…………うぐっ……良かったああ……びえええええええっ!」
あらあら、緊張の糸が切れたのか、座り込んで泣き出しちゃった。
『何故泣く? 食われぬのだから、嬉しいであろうが』
「……あんたが散々脅したからでしょ」
『我が? 見初めし娘を? 脅した事など一度もないぞ?』
「あのねー、あんたみたいなデカいドラゴンが大口開けて迫ってくれば、誰だって怯えるって!」
『そうなのか? 我は親愛の証を立てようと』
「あれが!? あれが親愛!? 誰が見たって『お前を食べるぜ、うへへ』としか受け取られないわよ!」
『な、何!? そ、そうなのか……』
今の姿なら、誰が見たって『可愛い!』 としか感じないと思う。
「ちょっと、エイミア」
「はい」
「もうめんどくさいから、『七つの美徳』のことを聞いちゃって」
「あ、わかりました……滝の真竜さーん、いいですかー?」
『……む? 何ぞや?』
「『七つの美徳』の事で、お聞きしたいんですけど」
『「七つの美徳」か? もしや七冠の魔狼絡みか?』
「そうです!」
『ふむ……先日、七冠の魔狼が現れた時は、真に驚かされたが……』
え? 現れた?
「てことは、もう力を渡しちゃった……?」
『求められれば拒否する理由はない』
もう堕つる滝まで来てるのか……!
「……ねえ、滝の真竜。まだ力を渡してない真竜って誰かわかる?」
『む……少し待っておれ』
滝の真竜はそう言うと、静かに目を閉じた。どうやら他の真竜と念話をしてるみたいだ。
「……思ったよりも、七冠の魔狼の行動は早いか……」
「ちょっとのんびりし過ぎたかも……しれませんね……」
そうね……温泉入ったり、サウナ入ったり、温泉入ったり……。
「ていうか……私が原因じゃない! しまったあああ……」
「「……今頃気づいたの」かよ……」
「……悪かったわね。2人とも文句あるの?」
エイミアとリルは激しく首を左右に振った。まあいいけど……。
『……わかったぞ』
すると、念話が終わったらしい滝の真竜が私に声をかけてきた。
「……どうだった?」
『力を渡した真竜は、我を入れて4人だ』
……4人。
『氷、地、風……そして我だ』
「じゃあ、それ以外は……」
『火と木は徹底して逃げておる。お前達の為に時間稼ぎをしておるな』
うぅ……温泉を堪能してましたなんて……言えない。
『残りは雷だが……これに関しては心配なかろう』
まあ……ソレイユが陣取ってるからね。
『七冠の魔狼が火と木の力を得る前に、お前達が「七つの美徳」の象徴を集められれば……』
……チャンスはある。
『我からも渡さねばならぬが……』
……が? ま、まさか……。
『我は持っておらぬ。ダンジョン内を探してみるがよい』
「「「「「え……ええ~~!?」」」」」
……今回は獄炎谷のように、簡単にはいかなかった。
「……堕つる滝の中を探せってか? どんだけ広いと思ってんだよ……」
確かに。
横に一番広いダンジョンは旋風の荒野だけど、縦なら堕つる滝よね……。
「……でもありそうな場所って……底くらいじゃないですか?」
「ワイバーン達の集まってた横穴があったでしょ。他にも横穴がある可能性は高いわね」
「あれだけ深いダンジョンで、横穴にも気を付けろ、という事ですか……」
私達の話を聞いていたヴィーが、エイミアの手を取った。
「エイミア、いよいよドラゴンに出陣してもらいましょう」
「え? ドラゴンにですか?」
……あ、そうか!
「音竜!」
「そうです。音竜の超音波でしたら、暗いダンジョン内の探索にはうってつけです。しかも音竜は空を飛べますから……」
「まさに堕つる滝向きなドラゴンじゃない! エイミア、早速角笛で呼び出して!」
「は、はい!」
ぶおおおおんんん……
エイミアの角笛が響き渡る。
……ギャア……ギャア……
「あ、何か集まってきた」
リジーが指差した先に、何か黒いモノが集まっている。
「……こっちに来ました……すごく嫌な予感がするのですが……」
ヴィーが少し逃げ腰になっている。エイミアも同様だ。
「……ねえ……音竜って……要はデカいコウモリ?」
「……みたいです……」
……コウモリかよ……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
192
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる