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第十七章 原点回帰でキビCんです!

第十八話 ドラゴン達が出発して私達は待機。そんなときに、リジーに異変が起きるんですよね…

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 ギャアギャアギャア!

「……すっげえ数……さすがエイミアのお友達……」

「お友達じゃありません!」

 エイミアがそう言い返したとき。

 ギャ!? ギャギャ!?

 音竜ソナードラゴンが一斉にエイミアをガン見した。みんな一様に哀しげな顔をしてるのは、気のせいじゃないと思う。

「エイミア……ちゃんと友達宣言しないと、協力してくれないかもよ?」

「え゛……」

 絶句するエイミア。そのエイミアを注視する音竜ソナードラゴン

「……う……み、皆、友達ぃぃーーーー! 協力してくれるかなあああああ?」

 ギャギャギャー!

 音竜ソナードラゴンは飛びながらも器用に方翼を突き上げた。何と返答したかは、言う間でもないかと。
 ドラゴンにも広めよう、友達の輪。


 音竜ソナードラゴン達が「乗せてってくれるそうです(エイミア談)」とのことなので、お言葉に甘えることにした。

「それじゃあアブドラが陣頭指揮を取ってくれるのね?」

『はい。及ばずながら我らワイバーンも、エイミア様をお助け出来れば、と』

 私はアブドラの背中に乗って、堕つる滝フォーレンフォール内の探索の打ち合わせをしている。
 他のみんなは、というと……。

「た、た、高いニャアア! 下ろしてニャ! 助けてニャ!」

 ……最近、さらに高い所が苦手になったリル。背中で騒がれるのがうるさいらしく、乗せてくれてるワイバーンがめっちゃ迷惑そうにしている。

『どうだ? 我は乗り心地も最高であろう?』

「は、はい……ありがとうございます……」

 エイミアは滝の真竜アクアマスターに騎乗中……いや、騎乗ではないか。なぜかといえば……。

「あ、あの……普通に背中に乗せてもらえませんか……?」

『断る。古代より女性を抱く作法は、これに限ると伝えられておる』

 ウソつけぇ!
 お姫様抱っこが作法のわけないでしょ!

「√∪_~>¥@∀〆∞%〇!」

 ギャ! ギャギャギャア!

 そして我がパーティの不思議系担当、リジー。なぜか音竜ソナードラゴンと通ずる何かがあったらしく、ずっと談笑していた。ていうか言葉がよくわかるな。

「……くぅ~~……アブドラ許すまじ! サーチとは私が同乗するはずだったのに……」

 最後にヴィー。何かぶつぶつと言いながら、ずっとアブドラを蛇睨みしている。ヴィーを乗せてる音竜ソナードラゴンは気味が悪いらしく、ずっと視線を逸らしていた。

『わかりました。ではそのような手筈で』

「よろしく、危ないドラゴンさん」

『だから……! む、見えてきましたぞ! 堕つる滝フォーレンフォールです!』

 私達の視線の先には、大量の煙を思わせる水蒸気が立ち上っていた。


『では、我らは探索に行って参ります……全員、エイミア様に敬礼!』

 ワイバーンだけではなく音竜ソナードラゴンも、ビシッと敬礼を決めた。ただ敬礼のせいで、バランスを崩して墜ちていく音竜ソナードラゴンがいたけど……ま、大丈夫でしょ。

『我はダンジョンコアの様子を見てくる』

 滝の真竜アクアマスターもそう言い残して飛び立っていった。

「…………」

 ていうか……。
 私達は、何をしてればいいの?

「……とりあえず……ドラゴン達が戻ってくるまで、ここで待機してるしかありませんね……」

 ……しかないか。

「まずはベースキャンプの設営ね」

「ベースキャンプ? そこまで長丁場になるのか?」

「……たぶん、ね」

 私はいつもの簡易テントではなく、長期滞在用の頑丈なテントを取り出した。
 いつもの野営みたく、1日2日で終わるようなモノじゃなさそうだし……。

「ヴィーとリルは聖杭を打ち込んできて。私とリジーとでテントの設営。エイミアはいつでもドラゴンと交信できるように待機。ついでに辺りの警戒もお願い」

「「「「はーい」」」」

 さて……テントを設営してから、夕ご飯の準備を始めますか。


 私は気づかなかった。このときから、リジーに異変が起きていたことを。


 私とリジーのコンビで、順調にテントの設営を進めていた。

「サーチ姉、そっち持って」

「いくわよ~……はい!」

 グイイ……

「……OK! 次のテント行くわよ~」

「痛い!」

「? ……まあいいか。リジー、準備はいい?」

「少し待って……よいしょ、よいしょ」

「痛い!」

「?? ……何か騒がしいわね……」

「サーチ姉、いいよ!」

「あ、はいはい……せーの!」

 びいんっ!

「強すぎ強すぎ! 少し緩めて!」

 ええ!? さっきより弱いくらいだけど……?

「これくらい……?」

「強すぎ強すぎ強すぎ!」

「はあ!? 私引っ張ってないわよ!」

「!? でもどんどん引っ張られてる……あれ? 蛇?」

「痛いって言ってるじゃないですか!」

 ……ヴィーの蛇?

「……何で私達はヴィーの蛇を引っ張ってたの?」

「わ、私が聞きたいですよ! 急に引っ張られたかと思ったら……」

 ヴィーの言葉を聞いて辺りを見ると……へっ!?

「ちょっと! さっき設営したテントは!?」

「!? ない! テントが無くなってる!」

 できあがってたはずのテントは、袋に入ったまま置かれていた……なんで!?

「一体何が……? まるで狐につままれたような……」

 リルの一言でハッとなった。

「リジー! あんた何かしたの!?」

「わ、私!? 何もしていない!」

「ウソつくな! どう見てもあんたの|≪化かし騙し≫《トリック》でしょうが!?」

「痛い痛い痛い! 頬っぺた引っ張らないで!」

「あんたもエイミアみたいに、限界を越えてみる!?」

「ちょっと待って下さい! 痛い痛い痛い! 痛いですよサーチ!」

 この! この! ってあれ? リジーの顔がボヤけていく……?

「……あ、あれ? 何で私ヴィーの頬っぺた引っ張ってるの?」

「わ、私が聞きたいです! さっきから何なんですか、もう!」

 プンスカ怒り出すヴィー。可愛いな、おい……じゃなくて!

「ちょっとリジー! 一体何がしたいのよ!」

 どこにいるかわからなくなったリジーに呼び掛ける。何か周りの景色すら歪んできてるし。

「うー、わからない。何故か|≪化かし騙し≫《トリック》が暴走してる」

 スキルが勝手に暴走って……んなバカな!

「……ああ、なるほどな。そういうことか」

 リジーを含めて全員パニクってるなか。
 意外や意外、冷静な声を発したのは……リルだった。

「リル? どういうことかわかるの?」

「ああ。これは|≪獣化≫《アーマード》を修得する前の暴走だな」

「|≪獣化≫《アーマード》!? リジーが?」

「ああ。リジーは一応は狐獣人だからな。|≪獣化≫《アーマード》を覚えられるさ」

「……そうなんだ」

「|≪獣化≫《アーマード》は特殊なスキルでさ。修得するより、慣れるほうのが大変なのさ」

「わ、私、どうすれば……」

「ん~……仕方ねえな……自分じゃどうしようもねえんだろ?」

「う、うん」

「……ごめん」

 どがっ!

「くは……がくっ」

 リジーが息を吐く音がしたと思うと、歪んでいた景色は急速に元に戻っていった。
 すると、白目を剥いて気絶しているリジーを抱えたリルが現れた。

「こうなっちまうと、術者が気絶しない限り解除できないからな。ちょっとぶん殴った」

 ちょっとって……めっちゃデカいたんこぶ、できてるけど……。

「慣れるのに難しいスキルか……どうすればコントロールできるようになるの?」

「う~……これは身体で覚えるしかないからな……。私がマンツーマンで教えるしかないか」

「リルが?」

「ああ……暴走するとシャレになんねーからな」

 ……確かに。

「サーチ、悪いけど堕つる滝フォーレンフォールはお前らだけで行ってくれ。私とリジーはしばらく離れるわ」

 ……了解。
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