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第二章 揺れるにはBくらいないと

第十七話 悶えるリルと…厄介な卒業討伐なんですよね…

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「はあはあはあ…」

 真っ赤になるくらい弄られまくった胸を両手で隠す。

ぷかー… 

その後ろにはでっかいたんこぶを作って水面に浮くエイミアとリルの姿があった。

こちらの世界にある銭湯。
 元の世界にあった銭湯と構造はよく似ている。
つまり、壁の一つ向こうは男湯。
…まる聞こえだったらしく…妙に腰を曲げて出てくる男性が多かったらしい。
あと、帰り際に。

 「お嬢ちゃん、艶っぽい声出すんだね…おじさんとはあはあ…ぽげぎゃっ」

…変態がいたので関節を外せるだけ外して警備隊に突き出した。

 疲れる…ほんとに疲れる。


そんなこんなで養成学校に入って早くも半年。
 一応一年間の入学なので卒業についても考えなくてはならない。
つまり…大学でいうところの卒論みたいなものがあるのだ。
ズバリ、卒業試験ならぬ卒業討伐。
 生徒達でパーティを作り、指定モンスターを討伐してくるのだ。
 討伐指定モンスターはその対象が発表されるだけ。何匹討伐するかも記載されない。
…つまり、何匹倒してきたか。討伐証明部位の状態はどうか。使用できそうな素材は綺麗に剥ぎ取ってあるか等、様々なことが採点される。
ここで高得点を叩き出したパーティはデビューするときも普通よりは高いランクで出発できたり、と色々と厚待遇となる。
 逆に得点が低いパーティは…再試験なり、冒険者としての活動が認められても色々と制限があったりと、なんだかんだと縛られることになる。

 正直な話…成績が悪くて色々とやりにくくなるのなら養成学校に入らなくても…という人はいる。
それでも安くないお金を払って入学する人は結構多い。
 理由はベテラン冒険者のバックアップを得られる、これに尽きる。
 剣術や魔術を教えてもらえたり、難しい依頼に協力してもらえたりと様々な利点がある。何より、ベテラン冒険者に顔を覚えてもらえるのが嬉しい。
 悪い成績で色々と制限がつく、というのもDランク以上の依頼には監督官としてベテラン冒険者がパーティに強制参加、というものだ。初心者パーティにとってはその方がありがたい、と言う人もいるくらいだ。
また、ベテラン冒険者にしても年齢的に引退を考えている人が次の就職先(つまりはギルド職員や養成学校の教官)を斡旋してもらえる、という特典があるため参加する人は多い。
ギルドとしては新人冒険者の死亡率の低下とベテラン冒険者の引退後の安定した生活の保証、おまけに優秀なギルド職員の獲得できると悪いところがほとんど無いのだ。
 実際にギルドの収益の中でも、養成学校や剣術・魔術の講習での利益も中々の割合を占めるようになってきている。

 話がかなり逸れた。
で、今日。
パーティ公募の最終締切となる。
 私はもうすでにエイミアとリルとの三人でパーティを組むことにしている。パーティ登録も済ませた。
…かなりパーティも決まってるけど…一つだけまだ決まってないのがある。
あ、大安のパーティだ。
ぷぷっ…一人だけでメンバー0。

 「サーチ、笑ってはいけませんよ」

 「エイミア~…初めて裸を見せた相手があんなのもがもが」

エイミアが必死に私の口を塞ぐ。

 「べべべ別に許したわけじゃありません!」

 「ならいいじゃない」

 何やら考えこんでいたリルがポンと手を打つ。

 「ああ、思い出した!ダイアン・ハーヴェイか!」

 「…知ってるの?」

 「ああ。確かドノヴァン特攻隊に散々な目にあってるってうわさ…」

それを聞いたエイミアがすっ飛んでいった。多分、大安に助け船を出す気ね。ホントに優しすぎよ…。

 「ねえ、リル。もしパーティ組めなかった子がいたらどうなるの?」

 「んーと…確か強制的にどこかのパーティに加入させられるか…ギルド職員と仮パーティ組むか、ね」

ギルド職員と…か。

 「サーチ…お前すっげえ悪い顔してるぞ」

 「リル~…あんたもニヤニヤしてるわよ」

 「なーに。私もダイアンみたいなゲスは大っ嫌いだからさ」

 「クスクス」

 「フフフフ」

 私達はギルマスを探しに出掛けた。


しばらくして、大安にもパーティメンバーができた。
ただし生徒達からは綺麗に拒否されて、ギルド職員との仮パーティとなった。
そう、ギルマスと。
しかもギルマスでは強すぎすぎるので片手のみ、というハンデ付きで。
…屋上で一人黄昏る大安が度々目撃されるようになった。合掌。

 「ねえ、サーチ、リル。何かした?」

 「「滅相もございません」」

しばらくエイミアが疑いの目を向けてきた。鋭い。


そして。
 卒業討伐の討伐モンスターが発表された。
 各パーティごとに違うモンスターになる。

そして。
 私達は。

 「…ウソぉ」

 「…厳しいですね」

 「…嫌がらせかよ」

 最悪の相手だった。


それは、Bランクモンスター。
ホワイトヤタ。
 一匹。

 見つけることすら困難。
 見つけることができたとしても、素早い。
 硬い。
すぐ逃げる。
ただし攻撃手段を持たないモンスターの為、攻撃を受けることは無い。
ただ単に「見つけにくい」と「異様に防御力が高い」だけでBランクになったのだ。
そう、ただでさえ厄介な相手なのに。
 前衛攻撃型のリル。
 遠距離雷特化のエイミア。
そして斥候で奇襲型の私。
…よくよく考えてみればパーティのバランスが悪すぎる!
せめてエイミアが弓矢を使えれば…!

 「ぽけー…」

 無理!口で「ぽけー…」なんて言いかならぽけー…としてる子に弓矢なんて絶対無理!

あとは…私なら前衛もできるから…。
…。

 「リルぅ~…」

 「な、何だよ。猫なで声で気持ち悪い…」

…猫のあんたに言われたくない。

 「弓矢なんて…できる?」

 「弓矢って…まあ…できるよ」

え!?
なんですって!?

 「私は元々弓術士なんだ。近接が弱いから養成学校で戦士クラスに入ったんだよ」

な、な、なんてこと!
リルの背中に天使の羽根が見える…!

 「リルー!!」

 「わ!何だよ、急に抱きつくな!わ!変なとこ触るな!あ、こら、揉むなー!!」

…ちょっぴり前回の仕返しもした。


ランクBクラスモンスター、ホワイトヤタ。
ぶっちゃけて言えば、白い八咫烏。

…サッカーでもしよかな。はあ。
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