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三十四話 同じパターン。
しおりを挟む「アリア様!」
リナリーはアリアに駆け寄って、再び俺を睨んでくる。
え? アレ? このパターンは以前のアリア失神騒動と同じではないか?
「ひゃわひゃわ」
「何かされたのですか?」
アリアは変な声を上げている。
ただ、顔を隠した手の指と指との隙間はだいぶ大きく開いていて、その隙間からこちらにちゃんと視線を感じる。
そして、リナリーは俺を睨んで、両手に短剣を持っていて今にも切りかかってきそうである。
今、リナリーと戦う訳にはいかないのだ。
なぜなら、今の俺は【クラウンズスキル】の【変身】を使ったことで……体内にほとんどマナが感じられないのだ。
これはもはや死しかないのだ。
『アリア! アリアぁ! リナリーを何とかしてくれ! 俺が殺される!』
俺は必死に何とか途切れていなかった【ハーネットの指輪】による意志疎通のリンクを通して言葉をアリアに投げかける。
『は! あ……はい、すみません』
俺の必死な呼びかけが届いたようで、アリアは我を取り戻し……リナリーを止めてくれた。
それから、俺がなんでこの人間の姿になったのかアリアの方からリナリーにも説明してもらい、ノヴァであること理解してくれた。
『ごめんなさい。リナリーにはノヴァの【クラウンズスキル】について言っていませんでしたね。ただ、あまり人のスキルについて話すのはモラルに反するかと』
『いえ、アリア様の判断は間違っていません。しかし……可愛い……うん、すごく。こんな可愛くなる【クラウンズスキル】が存在しているんですね』
『そうです。私も初めて見たので……驚きですよね』
アリアとリナリーが話している間、なぜか彼女達の目の前でアリアが昔来ていたという服に着替えることに。
そして、何よりも気になるのが……。
『いや、これ……本当にスカートしかなかったのか?』
『そ、そうです。スカートしか持っていませんよ』
『はい、スカートしか残っていませんでした』
俺は着ていたスカートの裾をつまみながらアリアとリナリーに視線を向ける。
すると、アリアとリナリーはサッと俺から視線をそらした。
『そうか……一応着替え終わったぞ』
『可愛いです! うにゅ!』
俺が今着ていたのは花柄の刺繍が入った白のシャツ、黄色のロングスカートだった。
そして、着替え終わるとアリアが近寄ってきて抱きしめられた。
『はい、確かに可愛いですね。服も似合っています』
リナリーは興味深げに俺の姿を見ながら、四枚の小さな鏡を縦に繋げて作られた姿見の鏡を出してきてくれた。
その鏡に映し出されたのは……可愛らしい女の子いや、男の子の姿だった。
女の子と間違われてしまいそうなほどに愛らしく、整った顔立ち。
くりくりとした大きな瞳で、少しタレ目な目元が優しげである。
白銀の髪をショートボムくらいの長さにしていて、髪自体にゆるい癖があり、フワフワと柔らかく揺れている。
百三十センチ前後のアリアよりも小さく小柄で、身長は百センチ前後といったところだ。
『誰だ? こいつは……?』
俺は鏡に映る姿を見て、驚愕を覚えずにはいられなかった。
不意に手を伸ばして鏡に触れてみた。
すると、鏡に映る小さな少年も同じように手を伸ばして鏡に触れた。
同じ動き……これが今の俺の姿ということか?
その姿は先ほどアリアの言っていた通り、可愛らしい少年の姿である。
どういうことだ?
俺がイメージしたのは目つきが鋭い、前世の幼少期……五歳の自分の姿である。
こんな可愛らしい子供ではない。
そもそも、この子供に見覚えもないんだが?
今の自分の姿を鏡で見て驚愕している俺に違和感を覚えたアリアが問いかけてくる。
『ん? どうしました?』
『いや……俺は【変身】を使う前にイメージしていた姿とかけ離れていて……驚いている』
『……そうなのですか? ちなみにノヴァはどのようなイメージを持って【変身】を使ったのですか?』
『いや……前世の幼少期の姿だ。俺の前世の姿は目つきが鋭くて、少なくとも……こんな姿ではなかった』
『そうなんですか?』
俺が抱えていた疑問を口にして、それを聞いたアリアが視線を下げて考え出した。
すると、俺とアリアが話していると、黙って話を聞いていたリナリーが会話に入ってきた。
『あ……もしかしたら、変身する姿が限定されているのかも知れません』
『限定?』
俺は首を傾げて、リナリーに視線を向けた。
すると、リナリーは一度うなずいて話し出す。
『私の知り合いに……【創造】という【クラウンズスキル】を持っている奴がいるのですが……確か、その【創造】は作り出せるのは剣の形に限定されていました』
『なるほど、【創造】という名前なのに剣しか作り出せないのは違和感があるな。その前例があるから、俺の【クラウンズスキル】の【変身】も変身できる姿は……この姿に限定されていると?』
『そう考えられますね。その【創造】を持っている奴はもっといろんな物を作り出せたらとボヤいていました』
『まぁ、俺としては人間に成れるというだけで満足であるからいいか』
『あ、一つ気になるのですが……その【変身】という【クラウンズスキル】というのは永続的に発動しているのでしょうか? ずっと、その子供の姿ですか?』
『……いや、わからない。そういえば、解除方法はあるのですか?』
リナリーの疑問に、俺は口元に手を当てて考える。
もとに戻る方法……わからない。
あ……そうか。
『おそらく、明日にはマナが回復するだろうし。もう一度【変身】を使えばもとに戻れるかな?』
『そうですか。それはよかったですね』
『たださ。猫の姿に戻る必要はあるのか? 人間でいる方が何かと便利なんだが』
俺がリナリーに疑問を投げかけると、リナリーは相変わらず俺を抱きしめているアリアに視線を向けた。
『いえ、問題があるのかと言えばないのですが。強いていうならば、小さな男の子とはいえ、人間の男性をアリア様と同じ部屋で生活させるのは難しいと言うことだけです』
『え……そんな! いやです。一緒に寝るんです』
リナリーの言葉に、慌てたのは俺ではなくアリアの方だった。
そして、アリアの抱きしめる力が強くなる。
『こればかりは嫌だと言われましても……どんな噂が立つかわかりませんので』
『えー……そんな』
『しかし残念です。部屋の準備はできていません。なので、仕方ないので私の部屋のベッドで寝かせてあげましょう』
アリアが落胆したように肩を落とす中で、リナリーは俺に視線を向けると笑顔のままに握り拳を前に出してみせた。
……え、今日はリナリーの部屋なのか? なんか、すごい怖いんだけど。
『お。俺はどこか物置でも構わないぞ?』
『いえ、アリア様と【聖約】を結んでいるノヴァを物置の冷たい床で寝かせる訳にはいきません』
『リナリーの部屋で寝るとなると、リナリーにも何か変な噂が立ってしまうかもしれないだろ? それは困るよな?』
『いえ、全く問題ありませんよ。なので、安心してください』
『……そうか? 本当にそうか?』
『もしかして、私と一緒に寝るのが嫌だとは言いませんよね?』
『え? いや、そんなことはないよ。だた、絵図的にR指定の勧告を受けそうだなって思っているだけ』
『絵面?よくわかりませんが……。全く、仕方ないのです。では少し私の部屋の掃除に行ってきます』
どこか楽しげな様子でリナリーはアリアの部屋から出ていった。その姿を見送るとアリアが少し沈んだ様子で言葉をかけてきた。
『うう……ノヴァ、明日には必ず【変身】を解除してくださいね。ちょっとソファに座りましょうね』
『ん? あぁ』
アリアに俺の体をグイッと持ち上げられて、一人掛けのソファに座ったアリアの膝の上に座らされた。
すると、『ふにゅー』っと声を上げてアリアから抱きしめられた。
『……えっと、そろそろ離してくれていいのだが?』
『駄目です。今日は添い寝できないのですから、ちゃんとノヴァ成分を補給しないといけないのです』
アリアは夕食になるまで頑なに俺の体を離してくれなかった。
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