無能な俺が、年下騎士さまの溺愛ゲージを溜める話。

ツキハ|BL小説

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4章 ニート、陽当たりを愛ス。

ニートは無知を知る。

 目覚めは晴れやかで、大変気分がよい。レガルさまの気持ちはわからないが、俺の気持ちなら自分で考えることが出来る。

 俺は暖かなソファが好きだし、気持ちのいいことも大好きだ。だからセックスも好きだけど、相手は誰でもよいわけではない。レガルさまは多分滅茶苦茶テクニシャンであるから気持ちがよいのであって、他の人ならだれでもそうであるわけでは無い筈。

 ソファの上でもぞもぞと居心地の良い姿勢をさぐってから、枕を抱きしめて天井を見る。じゃあ仮に、レガルさまを越える、物凄いテクニシャンえっちマンがいると仮定しよう。そう考えて、不思議とそこまで魅力的に思えない事実に気付いて驚く。気持ちがいいことが好きなのであれば、当然えっちマンの方が魅力的であるはずだ。しかし、こうやって想像してみる限りでは、俺がレガルさまの方が良いと思う。


 なぜだ。やはりイケメン騎士であるアドバンテージだろうか。俺は男相手に美醜を気にしたことは無いと思っていたが、意外とレガルさまの見目は気に入っていたのかもしれない。ここはえっちマンにも同様のアドバンテージを付与してみよう。

 目の前にレガルさまと同じ見目で、同じくらい強くて、声もいい存在がいるとする。でも不思議とどっちでもええやんとは思えない。やはりレガルさまの圧勝である。何故だ。

 寝転がったまま首を傾げながら、ソファの上から片足をぶらぶらと揺らして遊びつつ、そうだ、レガルさまは他にもクッキー好きかつ子供っぽい一面があると思い出す。いわゆるギャップという奴が大きく働いているに違いない。ギャップはすさまじい力をもっているから、えっちマンにも付与してあげよう。

 そうして俺の脳内の目の前には、レガルさまと同じポテンシャルを持った存在と、レガルさまが並んで立っている。今度こそ、どっちでもええやん案件になるだろうと思ったのに、やはりレガルさまの方が輝いて見える。えっちマンはダメだ。仮にえっちマンが夜のテクニシャン度合いで圧勝するとしても駄目だ。

「うーん。同じはずなのに何が違うんだろうか」

 同じスペックでも、何かが違う。多分セックスをすればある程度気持ちが良いだろうとは思うけど、そこまで考えて、そもそもセックス自体、レガルさま以外とはあまりしたくはない気もするから不思議。

「気持ちがいいのはテクニックの問題だけじゃあないのか」

 目から鱗が落ちる気持ちで呟いて、ニート歴史的大発見に気持ちが盛り上がる。ならば今度は、レガルさまだからこそのアドバンテージを考えてみることにしよう。やはり実際に体を重ねた記憶があることは大きいかもしれない。経験と記憶によるプラス要素が何かしらあるのだ。実際に気持ちが良い記憶があるこのソファと、まだ使ったことが無いけどふかふかのソファ。どっちがいいかと言われると、やはりこのソファがいい。

 愛着、という言葉が思い浮かんで、そうか、俺は彼に親しみを感じていたのかなと思う。そりゃあ片手で足りぬほど肌を重ねればそうもなるだろうか。最初の時だって彼はこちらを気遣って痛みのないようにしてくれていた。部屋のこととか、クルクルお髭の家令の発言のように、俺をもっとぞんざいに扱うことだってできた筈だが、イマイチ冷たくしきれないやさしさが、レガルさまにはあると思う。


 チェリーワインくんは俺に対して、クドラスさまのことが好きかと聞いた。俺は勿論と頷いて、そしてその後レガルさまのことも好きだと頷いた。おんなじ好きという言葉だったけれど、きっと、好きにも、幸せと同じようにいろんな形がある。




 俺はレガルさまではないので、レガルさまの気持ちは本当の意味ではわからない。だから、聞いてみようと思った。レガルさまの気持ちは、レガルさまの口から聞きたい。1週間ベッドの住人になるのはもうしょうがない。俺があれこれ考えたって、それは俺の考えでしかないのだ。俺の頭の中のえっちマンが全然魅力的ではないのは、その言葉や行動のすべてに、レガルさまの気持ちが存在していないからだと思った。

 俺はニートで無能であるから、正解も答えもわからない。でも、クドラスさまは、わからないのはお互いの前提が違うからだと言っていた。

 レガルさまが何を考えていたのか。なぜそうしたのか。俺はずっと勝手な思い込みで片づけていたから、勘違いしていたのだ。知らないことだらけなのだから、俺はもっと、レガルさまに聞いてみるべきだった。


 聞きたいことはたくさんある。そうして、1週間後の昼下がり。王城から戻ったレガルさまを出迎えて、たくさん話したいことがあるのだと、俺はそう言った。
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