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4章 ニート、陽当たりを愛ス。
ニートは結婚について考えた。
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気持ちいいのが1日、翌日、翌々日と休憩を挟んで続き、結局有言実行で1週間ベッドの住人になった俺は、ちゃんと考えたのに騙された気分だ。いや答えられてないからそりゃそうか。やはりニートが悪かった。
そうして過ごしてしばらく。戦況が動き、レガルさまは再び戦場へと向かった。チェリーワインくんも同様で、わざわざ一回会いに来てくれたので俺は内心、ユウジョウを感じて感動してしまうほどだった。お礼にレガルさまとのことを報告したら目が死んでいき、最終的に菩薩の笑みでよかったなと頭を撫ぜられたけど、そう言えば俺の方が年上だぞ。なぜ撫でるんだ。
1週間はまだ何とかなった。手紙をかき、クッキーの形がついに真ん丸になったことを報告したり、執事から綺麗な文字の書き方を習って挫折したりした。
2週間たつと、なんだかソファが少し冷えてきた気がする。あまり四季はない、年中暖かい国だけど、しんとした部屋に居ることに違和感がぬぐえない。
1カ月もすると、なんだか食欲がない気もしてきた。元々あんまり食べないけど、ここの食事は美味しくてちょっと増えた体重が戻ってしまっていた。
たまにクドラスさまがやってきて、異国の菓子やお話をくれるから、その時はとても楽しい。俺のレガルさま世紀の大発見話もほほ笑んで聞いてくださるから、チェリーワインくんとは大違いである。そう思ったらまたしょんぼりしてきてしまって、意外とチェリーワインくんも俺の中ではよいお友達になっていたと知る。
「ルシアは、自分から何かをしたいと思うことが増えたようですね」
「そうなんでしょうか」
「ええ。そうなんです」
少し悔しいですが、と付け加えたクドラスさまが、もっと聞かせてくださいと言うので、嬉しくなって口を開く。離している間は、頭の中がレガルさまの記憶で一杯なので、とても楽しい。クドラスさまが相手だと言うのも大きくて、この人なら優しく聞いてくれるという確信があって、その点ではレガルさまも敵わないと思う。
そう伝えたら、目を丸くしてから、クドラスさまが苦笑していた。
「僕はルシアの家族にはなれたみたいですが、残念ながら恋人には向いてなかったようです」
「恋人と家族は違うんですか」
「そうですね。恋人の先に家族がある、と言う方もいらっしゃるでしょうが、僕はその二つは違う前提の下で成り立つと考えています」
クドラスさまが手にしたお菓子は、甘いものとしょっぱいものが一つずつ。それをテーブルに並べて、続けて彼が口を開く。
「この人にこちらを見て欲しい、体を繋げたい。そういう感情が恋であると仮定しましょう。では、家族への情は?」
「うーん。家族……。なんだろ。恋人とは違う。あ、クドラスさまに対するような感情でいうなら、一緒に過ごすと安心するとか」
「いいですね。僕もそう思います。時にケンカはすれども、やはり共に暮らしていきたいと願う相手。障害を乗り越えてでも、共に幸せになりたいと願う存在」
「恋人にもそういう感情は抱くのでは?」
「そうでない人もいるのですよ。恋人はほしい、でも結婚はいやだ、という方もいます。決して悪いことではありませんが、噛み合わないとすれ違いますね」
「なるほど」
たしかに、前世で見たドラマではよくあるシチュエーションだ。たぶんチェリーワインくんも恋人はほしいけど結婚はちょっと、というタイプなのかもしれない。
「クドラスさまは、俺と暮らしていきたいと言ってくださいました。家族としての情をもってくださっていた、ということでしょうか」
「もちろん。ルシアも同じでしょう?」
「はい」
やさしく微笑んでくれるクドラスさまは、俺にたくさん幸福な時間をくれた。俺からは全くお返しできていなかったのではとしょんぼりしていれば、そんなことは無いと彼が首を振る。
「仕事から離れて、僕の帰りを待ってくれている誰かがいると思えるのは、嬉しいことでしたよ」
「でも、それは俺でなくても」
「そうですね。もし、ルシアではない誰かが、同じように僕の話を楽し気に聞いてくれて、穏やかに笑ってくれたなら、もしかしたら。でも」
紅茶のカップを手にしていたクドラスさまが、一口飲んでから笑みを浮かべる。
「僕に実際そうしてくれたのは、ルシアだけでしたよ」
この世に運命などないのだと、クドラスさまは言う。あるのは、ほんの少しの行動の連鎖の結果であり、奇跡的な確率の積み重ねを、皆運命と名付けているだけだと。
もしも俺があの家の人間でなかったなら、クドラスさまともレガルさまとも、執事とだって会わなかった。俺がニートで勘違いしなければ、チェリーワインくんも態度は違ったかもしれない。
「クドラスさま。クドラスさまは、俺と暮らした偶然の積み重ねの日常を、幸せだと思ってくださいましたか」
「ええ。とても」
自分では何かを成したと思っていないことでも、相手にとっては幸福に見えることがある。レガルさまが今、俺との婚姻を幸福とみなしてくれているのは、なぜなのか。たくさん聞いたはずなのに、今すぐにでもまた、彼に聞きたいことが増えてしまった。1日がとても長いだなんて思ったのは初めてで、毎日が過ぎていく。そうして。
その戦争の終結の知らせは、3か月が過ぎる頃にもたらされた。
白銀の髪に、藍色の瞳の、少しやつれたその顔が、こちらを見て優しく緩む。俺は学習できるニートなので、出迎えの挨拶をきっちりこなしたのだった。
そうして過ごしてしばらく。戦況が動き、レガルさまは再び戦場へと向かった。チェリーワインくんも同様で、わざわざ一回会いに来てくれたので俺は内心、ユウジョウを感じて感動してしまうほどだった。お礼にレガルさまとのことを報告したら目が死んでいき、最終的に菩薩の笑みでよかったなと頭を撫ぜられたけど、そう言えば俺の方が年上だぞ。なぜ撫でるんだ。
1週間はまだ何とかなった。手紙をかき、クッキーの形がついに真ん丸になったことを報告したり、執事から綺麗な文字の書き方を習って挫折したりした。
2週間たつと、なんだかソファが少し冷えてきた気がする。あまり四季はない、年中暖かい国だけど、しんとした部屋に居ることに違和感がぬぐえない。
1カ月もすると、なんだか食欲がない気もしてきた。元々あんまり食べないけど、ここの食事は美味しくてちょっと増えた体重が戻ってしまっていた。
たまにクドラスさまがやってきて、異国の菓子やお話をくれるから、その時はとても楽しい。俺のレガルさま世紀の大発見話もほほ笑んで聞いてくださるから、チェリーワインくんとは大違いである。そう思ったらまたしょんぼりしてきてしまって、意外とチェリーワインくんも俺の中ではよいお友達になっていたと知る。
「ルシアは、自分から何かをしたいと思うことが増えたようですね」
「そうなんでしょうか」
「ええ。そうなんです」
少し悔しいですが、と付け加えたクドラスさまが、もっと聞かせてくださいと言うので、嬉しくなって口を開く。離している間は、頭の中がレガルさまの記憶で一杯なので、とても楽しい。クドラスさまが相手だと言うのも大きくて、この人なら優しく聞いてくれるという確信があって、その点ではレガルさまも敵わないと思う。
そう伝えたら、目を丸くしてから、クドラスさまが苦笑していた。
「僕はルシアの家族にはなれたみたいですが、残念ながら恋人には向いてなかったようです」
「恋人と家族は違うんですか」
「そうですね。恋人の先に家族がある、と言う方もいらっしゃるでしょうが、僕はその二つは違う前提の下で成り立つと考えています」
クドラスさまが手にしたお菓子は、甘いものとしょっぱいものが一つずつ。それをテーブルに並べて、続けて彼が口を開く。
「この人にこちらを見て欲しい、体を繋げたい。そういう感情が恋であると仮定しましょう。では、家族への情は?」
「うーん。家族……。なんだろ。恋人とは違う。あ、クドラスさまに対するような感情でいうなら、一緒に過ごすと安心するとか」
「いいですね。僕もそう思います。時にケンカはすれども、やはり共に暮らしていきたいと願う相手。障害を乗り越えてでも、共に幸せになりたいと願う存在」
「恋人にもそういう感情は抱くのでは?」
「そうでない人もいるのですよ。恋人はほしい、でも結婚はいやだ、という方もいます。決して悪いことではありませんが、噛み合わないとすれ違いますね」
「なるほど」
たしかに、前世で見たドラマではよくあるシチュエーションだ。たぶんチェリーワインくんも恋人はほしいけど結婚はちょっと、というタイプなのかもしれない。
「クドラスさまは、俺と暮らしていきたいと言ってくださいました。家族としての情をもってくださっていた、ということでしょうか」
「もちろん。ルシアも同じでしょう?」
「はい」
やさしく微笑んでくれるクドラスさまは、俺にたくさん幸福な時間をくれた。俺からは全くお返しできていなかったのではとしょんぼりしていれば、そんなことは無いと彼が首を振る。
「仕事から離れて、僕の帰りを待ってくれている誰かがいると思えるのは、嬉しいことでしたよ」
「でも、それは俺でなくても」
「そうですね。もし、ルシアではない誰かが、同じように僕の話を楽し気に聞いてくれて、穏やかに笑ってくれたなら、もしかしたら。でも」
紅茶のカップを手にしていたクドラスさまが、一口飲んでから笑みを浮かべる。
「僕に実際そうしてくれたのは、ルシアだけでしたよ」
この世に運命などないのだと、クドラスさまは言う。あるのは、ほんの少しの行動の連鎖の結果であり、奇跡的な確率の積み重ねを、皆運命と名付けているだけだと。
もしも俺があの家の人間でなかったなら、クドラスさまともレガルさまとも、執事とだって会わなかった。俺がニートで勘違いしなければ、チェリーワインくんも態度は違ったかもしれない。
「クドラスさま。クドラスさまは、俺と暮らした偶然の積み重ねの日常を、幸せだと思ってくださいましたか」
「ええ。とても」
自分では何かを成したと思っていないことでも、相手にとっては幸福に見えることがある。レガルさまが今、俺との婚姻を幸福とみなしてくれているのは、なぜなのか。たくさん聞いたはずなのに、今すぐにでもまた、彼に聞きたいことが増えてしまった。1日がとても長いだなんて思ったのは初めてで、毎日が過ぎていく。そうして。
その戦争の終結の知らせは、3か月が過ぎる頃にもたらされた。
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