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第一章
たばことピアス
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いつからだろうか。人と接することがこんなに面倒だと感じるようになったのは。
いや元から得意では無かったのかも知れない。得意げな顔で自分を偽ることで、何者からも愛されたかった。
ただそんな日々に疲れてしまった。全て捨ててしまいたいとそう思うようになった。これが大人になると言うことなのかも知れない。もしそうであるならそれはとても退屈だ。
僕の名前は及川秀太、大学2年生だ。僕には一つの夢があった。それはバンドマンになることだ。それを夢見て必死に練習を重ねていた。しかし時というものは残酷だった。何も結果が残せないままずるずると気づけば、来年には就活を考えなければいけない。このままでは行けないとは思っていても、ただ日々はあっという間に過ぎていく。僕はきっと何者にもなれないまま終わる。大学にはまともに友達もいないが、唯一バイトの先輩だけが僕の話相手だった。僕は大学一年生の時にコンビニでバイトを始めた。僕がお客様の対応に戸惑っている時に助けてくれたのが、その先輩だった。名前は茜翠、耳につけた大きなピアスが目立つ女の子だった。彼女は大学3年生で、大学一年生の頃からコンビニでアルバイトしていてベテランだった。
「ありがとう、ございます」僕はそっけなく感謝を伝えた。そうすると彼女は「うん」と言ってすぐにそっぽを向いてしまった。それからしばらくして彼女とシフトが被ることがよくあった。そんなある日の事だった。
「今日バイトの後空いてる?」と不意に僕に話かけてきた。彼女から話かけられる事自体が初めてだったので、
「空いて、、、、ます」と驚きながら答えた。「じゃあ後で終わったら裏の喫煙室に来て」とだけ言ってその後彼女は一切喋らなかった。
僕はバイトが終わり裏の喫煙室に向かった。そこにはタバコを吸っている大きなピアスを付けた彼女の姿があった。「あ、ちゃんと来てくれたんだ。あたし前から君に興味があったんだけどさ、どうしていつも君そんな顔なんだい?」
僕は彼女の言っている意味がさっぱり分からなかったが、人と接することがめんどくさくなったからと伝えた。
「ふーん、じゃあ君は私と一緒だね。どこに向かうのか、どこに着くのか、どこに行きたいのか分からない漂流船だね。」
彼女は笑いながらそう言った。不思議と嫌な気持ちはしなかった。安い同情なんかではなく、本心からそう思っているように聞こえたからかも知れない。その日から彼女とシフトが被った日は、必ずバイト終わりに喫煙所で話すようになった。将来のこと、友達のこと、彼女の前だと不思議と自分の全てを曝け出すことができた。僕の話を彼女はただ真面目に聞いていた。ある日彼女は僕に「君もたばこ吸ってみないかい?」と僕に言ってきた。僕は正直にいうとたばこが嫌いだった。僕は丁寧にお断りすることにした。すると彼女は少しだ残念そうな顔をして、吸っていたタバコを捨てて足で踏み潰した。
「そっかたばこは嫌いか、でも私も別に好きなわけじゃないんだ。それでも何かに縋らないといけないの。」
彼女はそう言って先に帰ってしまった。僕は足元を見る。そこには踏み潰されたたばこがあった。まだ火が少しついいている。僕はそれを拾い上げてみた。ほんのりと加える部分はふやけていた。そのたばこを自分の口に当てて吸ってみた。なぜそうしたのかは自分でもよく分からなかった。とても不衛生だし良くない行為だとも思った。彼女が踏み潰したたばこからは、土が混じった苦い味がした。しかしそのたばこからは妙な背徳感と高揚感が同時に僕を襲った。それがどうしてなのか僕にはまたさっぱり理解できなった。
いや元から得意では無かったのかも知れない。得意げな顔で自分を偽ることで、何者からも愛されたかった。
ただそんな日々に疲れてしまった。全て捨ててしまいたいとそう思うようになった。これが大人になると言うことなのかも知れない。もしそうであるならそれはとても退屈だ。
僕の名前は及川秀太、大学2年生だ。僕には一つの夢があった。それはバンドマンになることだ。それを夢見て必死に練習を重ねていた。しかし時というものは残酷だった。何も結果が残せないままずるずると気づけば、来年には就活を考えなければいけない。このままでは行けないとは思っていても、ただ日々はあっという間に過ぎていく。僕はきっと何者にもなれないまま終わる。大学にはまともに友達もいないが、唯一バイトの先輩だけが僕の話相手だった。僕は大学一年生の時にコンビニでバイトを始めた。僕がお客様の対応に戸惑っている時に助けてくれたのが、その先輩だった。名前は茜翠、耳につけた大きなピアスが目立つ女の子だった。彼女は大学3年生で、大学一年生の頃からコンビニでアルバイトしていてベテランだった。
「ありがとう、ございます」僕はそっけなく感謝を伝えた。そうすると彼女は「うん」と言ってすぐにそっぽを向いてしまった。それからしばらくして彼女とシフトが被ることがよくあった。そんなある日の事だった。
「今日バイトの後空いてる?」と不意に僕に話かけてきた。彼女から話かけられる事自体が初めてだったので、
「空いて、、、、ます」と驚きながら答えた。「じゃあ後で終わったら裏の喫煙室に来て」とだけ言ってその後彼女は一切喋らなかった。
僕はバイトが終わり裏の喫煙室に向かった。そこにはタバコを吸っている大きなピアスを付けた彼女の姿があった。「あ、ちゃんと来てくれたんだ。あたし前から君に興味があったんだけどさ、どうしていつも君そんな顔なんだい?」
僕は彼女の言っている意味がさっぱり分からなかったが、人と接することがめんどくさくなったからと伝えた。
「ふーん、じゃあ君は私と一緒だね。どこに向かうのか、どこに着くのか、どこに行きたいのか分からない漂流船だね。」
彼女は笑いながらそう言った。不思議と嫌な気持ちはしなかった。安い同情なんかではなく、本心からそう思っているように聞こえたからかも知れない。その日から彼女とシフトが被った日は、必ずバイト終わりに喫煙所で話すようになった。将来のこと、友達のこと、彼女の前だと不思議と自分の全てを曝け出すことができた。僕の話を彼女はただ真面目に聞いていた。ある日彼女は僕に「君もたばこ吸ってみないかい?」と僕に言ってきた。僕は正直にいうとたばこが嫌いだった。僕は丁寧にお断りすることにした。すると彼女は少しだ残念そうな顔をして、吸っていたタバコを捨てて足で踏み潰した。
「そっかたばこは嫌いか、でも私も別に好きなわけじゃないんだ。それでも何かに縋らないといけないの。」
彼女はそう言って先に帰ってしまった。僕は足元を見る。そこには踏み潰されたたばこがあった。まだ火が少しついいている。僕はそれを拾い上げてみた。ほんのりと加える部分はふやけていた。そのたばこを自分の口に当てて吸ってみた。なぜそうしたのかは自分でもよく分からなかった。とても不衛生だし良くない行為だとも思った。彼女が踏み潰したたばこからは、土が混じった苦い味がした。しかしそのたばこからは妙な背徳感と高揚感が同時に僕を襲った。それがどうしてなのか僕にはまたさっぱり理解できなった。
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