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第9章 柊絵美里(18歳)=立松千宙(19歳)
§4学園祭での遭遇
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千宙はバイト先に来た将生に、「自分は絵美里と付き合ってる。だから、付きまとうのは辞めろ」と戒めた。将生は捨て台詞を吐いて去って行き、それからはストーカーまがいの行為はなくなった。絵美里には「お前はつまらないから、別れてやるよ!」というメールが届き、彼から解放されてホッとしていた。絵美里は千宙に感謝の気持ちを直接伝えるために、千里大学の学園祭を訪れていた。
「うわー、男子が多いですね!女子大の学園祭とは、雰囲気が全然違いますね。」
「そうかな?よく知らないけど、今度行ってみたいな!」
私は将生との関係が解消できたことを報告し、お礼に彼の部屋で料理を作る事を申し出た。彼は遠慮していたが、ほぼ無理矢理に話を進めた。
二人が学園内を散策している途中、千宙は少し先にいる七海に目を留めた。彼女は親しくしている黄川田肇と、彼の誘いで千里大の学園祭に来ていた。千宙はあ然として立ち止まり、棒立ちとなっていた。絵美里がそれに気付き、
「どうしたんですか?誰か知り合いでも、見つけたんですか?」と訊きながら、彼の視線を追った。そこには、彼女の寮の先輩でもある七海の姿があった。
「あっ、七海先輩!前見たのとは違う彼氏だ。千宙さんの知り合いですか?」
「あ、いや、人違いみたいだ!ごめん、行こうか。」と目を反らして歩き出したが、彼は去り難い様子だった。私の勘は当たっていたと、この時に確信した。
二人はスーパーで買い物をし、千宙の住むワンルームマンションに向かった。絵美里が浮かれてはしゃいでいるのに対して、千宙は上の空で落ち着きがなかった。部屋に入って、彼女は早速料理に取り掛かりながら、彼の様子を気にしていた。
「ハンバーグとサラダを作りますけど、フライパンとかはありますよね。」
「うん、勝手に何でも使って!」
「素っ気ない返事だなー!千宙さん、元気がないみたいで、どうかしましたか?女の子が家に来て、緊張してるとか、どう口説こうかとか考えてます?」
私が軽口をたたいても、彼はそれに乗ってくる様子はなかった。さっき目にした七海先輩の事を、彼が考え込んでいるのは分かっていた。
「できました!食べましょ!こんな風に彼氏と一緒に食べるのが、夢でした。男の人は、こんな風に料理を作ったり、世話を焼いたりする子はうっとうしいですか?」
「そんな事はないよ!絵美里ちゃんは良い子だよ!こんなご馳走を食べられるなんて、うれしいよ。彼氏にひどい目に遭わされたね。もう彼の事は、早く忘れな!」
「だったら、千宙さんが忘れさせてくれますか?」と私は口にしていた。
「ちょっと、待って!どういう意味なの?付き合うって事?」
「嫌ですよね、こんなビッチな女子は。いきなりこんな事を言って、ごめんなさい!思っているほど、わたしは軽くないですから、また考えておいてください。それより、千宙さんには忘れられない人がいるんでしょ!」と私は探りを入れた。
「どうしたの?今日は変だよ!自分を卑下したり、俺を詮索したりして。」
「学園祭で千宙さんが見入っていた人、元カノじゃないんですか?梅枝七海さんですよね!わたしの寮の先輩で、前に似たような話を聞いたというのが彼女です。」
私が一息にまくしたてると、彼は驚きで絶句していた。しばらくして観念したようで、彼女との関係を白状し、さらに彼女の近況を知りたがった。
絵美里は七海の動向を事細かに、知っている範囲で千宙に伝えた。その中で七海の異性関係にも触れ、男の人に車で送られて来た所を目撃した事があり、学園祭に一緒にいた男性ではなかったと話した。
「うわー、男子が多いですね!女子大の学園祭とは、雰囲気が全然違いますね。」
「そうかな?よく知らないけど、今度行ってみたいな!」
私は将生との関係が解消できたことを報告し、お礼に彼の部屋で料理を作る事を申し出た。彼は遠慮していたが、ほぼ無理矢理に話を進めた。
二人が学園内を散策している途中、千宙は少し先にいる七海に目を留めた。彼女は親しくしている黄川田肇と、彼の誘いで千里大の学園祭に来ていた。千宙はあ然として立ち止まり、棒立ちとなっていた。絵美里がそれに気付き、
「どうしたんですか?誰か知り合いでも、見つけたんですか?」と訊きながら、彼の視線を追った。そこには、彼女の寮の先輩でもある七海の姿があった。
「あっ、七海先輩!前見たのとは違う彼氏だ。千宙さんの知り合いですか?」
「あ、いや、人違いみたいだ!ごめん、行こうか。」と目を反らして歩き出したが、彼は去り難い様子だった。私の勘は当たっていたと、この時に確信した。
二人はスーパーで買い物をし、千宙の住むワンルームマンションに向かった。絵美里が浮かれてはしゃいでいるのに対して、千宙は上の空で落ち着きがなかった。部屋に入って、彼女は早速料理に取り掛かりながら、彼の様子を気にしていた。
「ハンバーグとサラダを作りますけど、フライパンとかはありますよね。」
「うん、勝手に何でも使って!」
「素っ気ない返事だなー!千宙さん、元気がないみたいで、どうかしましたか?女の子が家に来て、緊張してるとか、どう口説こうかとか考えてます?」
私が軽口をたたいても、彼はそれに乗ってくる様子はなかった。さっき目にした七海先輩の事を、彼が考え込んでいるのは分かっていた。
「できました!食べましょ!こんな風に彼氏と一緒に食べるのが、夢でした。男の人は、こんな風に料理を作ったり、世話を焼いたりする子はうっとうしいですか?」
「そんな事はないよ!絵美里ちゃんは良い子だよ!こんなご馳走を食べられるなんて、うれしいよ。彼氏にひどい目に遭わされたね。もう彼の事は、早く忘れな!」
「だったら、千宙さんが忘れさせてくれますか?」と私は口にしていた。
「ちょっと、待って!どういう意味なの?付き合うって事?」
「嫌ですよね、こんなビッチな女子は。いきなりこんな事を言って、ごめんなさい!思っているほど、わたしは軽くないですから、また考えておいてください。それより、千宙さんには忘れられない人がいるんでしょ!」と私は探りを入れた。
「どうしたの?今日は変だよ!自分を卑下したり、俺を詮索したりして。」
「学園祭で千宙さんが見入っていた人、元カノじゃないんですか?梅枝七海さんですよね!わたしの寮の先輩で、前に似たような話を聞いたというのが彼女です。」
私が一息にまくしたてると、彼は驚きで絶句していた。しばらくして観念したようで、彼女との関係を白状し、さらに彼女の近況を知りたがった。
絵美里は七海の動向を事細かに、知っている範囲で千宙に伝えた。その中で七海の異性関係にも触れ、男の人に車で送られて来た所を目撃した事があり、学園祭に一緒にいた男性ではなかったと話した。
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