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最終章 立松千宙(21歳)=梅枝七海(21歳)
§4大人の恋
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教育実習の最後の週、千宙と七海は顔を合わせるのが照れ臭かった。二人だけの秘密を共有した事で、七海は元気を取り戻していた。彼女に絡んでいた男子は、朝の会が終わると「ごめんなさい」と謝ってきた。千宙が土日の部活の時にその男子を諭し、言い聞かせた成果であった。
「ありがとう!立松先生はすごいね!どう説き伏せたの?」
「どうって、当たり前の事を教えただけだよ。話しを聞いてやって、口に出して良い事と悪い事の分別を話した。それと、女の子を大事にする事もね。」
この男子は思っていたより聞き分けが良く、七海の悩みを解消できた事に俺は満足していた。もう一つ悩みの種をまいた元同級生の田村については、あえて実習生の皆がいる所で問い質した。もちろん、七海も同席していた。
「つい調子に乗って、しゃべってた。中でもあの生徒はしつこくて、多分梅枝の事が好きなんだろうな。立松も女子生徒に人気があるし、憎たらしかったんだよ!」
「お前、先生失格だな!個人情報を面白おかしく話して、ふざけるなよ!」と俺は、話している内に怒りが頂点に達していた。
あわや取っ組み合いの喧嘩になる所を、養護の片平先生が止めに入った。七海が事前に相談していたからで、心配になって様子を見に来た所だった。片平先生は千宙の怒りをしずめ、田村の非道な行為を諭してその場を取り持った。
研究授業を終えて反省会があり、実習最終日を迎えた。その日は教科毎の打ち上げが予定されていて、千宙と七海は明日の土曜日に、二人だけの打ち上げを約束していた。帰り際に二人は、保健室を訪れて挨拶をした。
「終わったわね!お疲れ様でした!二人はこれからどうするの?」
「どうする?何がですか?」と俺はとぼけて言うと、
「二人は復活したんでしょ!仲良くしなきゃ、駄目よ!」と返された。
「先生、どうして分かったんですか?わたしたちの事。」と七海は正直だった。
「幼い恋は、もろいものよ!二人とも、大人の恋を成就させなさい!壊れた恋を盛り返すのは容易でないけど、枯れ木に花を咲かせたんでしょ!すれ違いの恋を克服したんだから、今度は枯らさないように、お互いを大切にするのよ!」
先生の言葉を心に刻み直して、俺たちは学校を後にした。
土曜日の昼下がり、千宙は七海の部屋を訪れていた。たこ焼きパーティをしようと、千宙が家からたこ焼き機を持参し、七海は食材を仕入れて待っていた。
「ビールを買ってきたけど、七海は呑めるの?」
「少しなら!呑み過ぎると、自制心が働かなくなるから…。」
「面白そうだ!今日はいっぱい呑ましてみようかな!」と冗談を言うと、七海は「いいわよ!」と上目遣いで訴えていた。
「千宙は、卒業したらどうするの?数学の先生になるの?」
「いや、教師は向いてないや!実習は楽しかったけど、IT企業に内定をもらっているから、そこに就職するつもり。七海は教員試験を受けるんでしょ。」
「うん、東京と静岡、仙台の中学校を考えてる。千宙は東京なんでしょ。だったら、東京の採用試験に頑張って受からないと、またすれ違いになっちゃうもんね。」
七海の言わんとする事は察しが付いたが、その話はそこまでだった。
「明日、寮へ引っ越しするの?良かったら、手伝うよ!」
「ありがとう!引っ越したって、荷物はスーツケースに入れて運ぶだけだよ!」
「それならば、寮まで見送るよ!俺も明日、東京の部屋に戻るから。親には今日帰ると言ってあって、荷物も持って来てるんだ。」と七海の部屋に泊まる気でいた。
七海は千宙の用意の良さにあきれたが、一晩一緒に過ごせる喜びは隠せなかった。彼の首にしがみ付き、片付けもそこそこに唇を求め合って愛を確かめた。
「七海、好きだよ!もう離さないから、心も体も俺のものにしたい!」
「千宙、すごく好きだから離さないで!やっと願いが適うんだね、うれしい!」
言葉では埋め尽くせない感情の高ぶりを、俺たちは抱き合う事で伝え合った。
千宙と七海が出会ってから8年、ようやく二人は結ばれた。これからもすれ違いは起こらないとも限らないが、確固たる男女の絆は解ける事はないだろう。
その後、千宙は新宿の会社に勤め、七海は念願通りに東京都の中学校教員になった。就職先が決まって直ぐに、お互いの親の了承を得て二人で部屋を借りた。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました。別サイトの『すれ違う恋の告白』では、二人に関わる裏話を周辺人物の日記として掲載しています。男心、女心の本心を赤裸々に描いていますので、本編とは違った小説になっています。前編、中編、後編に分けてR-18指定ですが、関心のある方には読んで戴けると幸いです。因みに、「エブリスタ」と「小説を読もう」のムーンライトノベルズに連載中です。
「ありがとう!立松先生はすごいね!どう説き伏せたの?」
「どうって、当たり前の事を教えただけだよ。話しを聞いてやって、口に出して良い事と悪い事の分別を話した。それと、女の子を大事にする事もね。」
この男子は思っていたより聞き分けが良く、七海の悩みを解消できた事に俺は満足していた。もう一つ悩みの種をまいた元同級生の田村については、あえて実習生の皆がいる所で問い質した。もちろん、七海も同席していた。
「つい調子に乗って、しゃべってた。中でもあの生徒はしつこくて、多分梅枝の事が好きなんだろうな。立松も女子生徒に人気があるし、憎たらしかったんだよ!」
「お前、先生失格だな!個人情報を面白おかしく話して、ふざけるなよ!」と俺は、話している内に怒りが頂点に達していた。
あわや取っ組み合いの喧嘩になる所を、養護の片平先生が止めに入った。七海が事前に相談していたからで、心配になって様子を見に来た所だった。片平先生は千宙の怒りをしずめ、田村の非道な行為を諭してその場を取り持った。
研究授業を終えて反省会があり、実習最終日を迎えた。その日は教科毎の打ち上げが予定されていて、千宙と七海は明日の土曜日に、二人だけの打ち上げを約束していた。帰り際に二人は、保健室を訪れて挨拶をした。
「終わったわね!お疲れ様でした!二人はこれからどうするの?」
「どうする?何がですか?」と俺はとぼけて言うと、
「二人は復活したんでしょ!仲良くしなきゃ、駄目よ!」と返された。
「先生、どうして分かったんですか?わたしたちの事。」と七海は正直だった。
「幼い恋は、もろいものよ!二人とも、大人の恋を成就させなさい!壊れた恋を盛り返すのは容易でないけど、枯れ木に花を咲かせたんでしょ!すれ違いの恋を克服したんだから、今度は枯らさないように、お互いを大切にするのよ!」
先生の言葉を心に刻み直して、俺たちは学校を後にした。
土曜日の昼下がり、千宙は七海の部屋を訪れていた。たこ焼きパーティをしようと、千宙が家からたこ焼き機を持参し、七海は食材を仕入れて待っていた。
「ビールを買ってきたけど、七海は呑めるの?」
「少しなら!呑み過ぎると、自制心が働かなくなるから…。」
「面白そうだ!今日はいっぱい呑ましてみようかな!」と冗談を言うと、七海は「いいわよ!」と上目遣いで訴えていた。
「千宙は、卒業したらどうするの?数学の先生になるの?」
「いや、教師は向いてないや!実習は楽しかったけど、IT企業に内定をもらっているから、そこに就職するつもり。七海は教員試験を受けるんでしょ。」
「うん、東京と静岡、仙台の中学校を考えてる。千宙は東京なんでしょ。だったら、東京の採用試験に頑張って受からないと、またすれ違いになっちゃうもんね。」
七海の言わんとする事は察しが付いたが、その話はそこまでだった。
「明日、寮へ引っ越しするの?良かったら、手伝うよ!」
「ありがとう!引っ越したって、荷物はスーツケースに入れて運ぶだけだよ!」
「それならば、寮まで見送るよ!俺も明日、東京の部屋に戻るから。親には今日帰ると言ってあって、荷物も持って来てるんだ。」と七海の部屋に泊まる気でいた。
七海は千宙の用意の良さにあきれたが、一晩一緒に過ごせる喜びは隠せなかった。彼の首にしがみ付き、片付けもそこそこに唇を求め合って愛を確かめた。
「七海、好きだよ!もう離さないから、心も体も俺のものにしたい!」
「千宙、すごく好きだから離さないで!やっと願いが適うんだね、うれしい!」
言葉では埋め尽くせない感情の高ぶりを、俺たちは抱き合う事で伝え合った。
千宙と七海が出会ってから8年、ようやく二人は結ばれた。これからもすれ違いは起こらないとも限らないが、確固たる男女の絆は解ける事はないだろう。
その後、千宙は新宿の会社に勤め、七海は念願通りに東京都の中学校教員になった。就職先が決まって直ぐに、お互いの親の了承を得て二人で部屋を借りた。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました。別サイトの『すれ違う恋の告白』では、二人に関わる裏話を周辺人物の日記として掲載しています。男心、女心の本心を赤裸々に描いていますので、本編とは違った小説になっています。前編、中編、後編に分けてR-18指定ですが、関心のある方には読んで戴けると幸いです。因みに、「エブリスタ」と「小説を読もう」のムーンライトノベルズに連載中です。
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みんなの感想(1件)
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