すれ違う恋の行方〈中学編〉

秋 夕紀

文字の大きさ
2 / 20
第1章 梅枝七海(14歳)=立松千宙(14歳)

§1 二人の出会い

しおりを挟む
 6月も梅雨入りし、うっとうしい雨が朝の登校を憂鬱にさせる。二人はほぼ毎朝、この橋のたもとで待ち合わせをし、青葉市立第一中学校へ通学している。
「立松、ごめんね、待たせて!髪の毛が上手くまとまらなくて…」
「遅いよ、梅枝、遅刻するぞ!」
 立松たてまつ千宙ちひろは橋に向かって左側の住宅街に、梅枝うめえだ七海ななみは右側の坂を上った所に住んでいる。この橋から学校までは歩いて15分、今日は急がねばならない。

 二人が仲良くなったきっかけは、中学2年で同じクラスになり、二人とも保健委員に選ばれたからだった。それまでは、お互いに名前も知らない同士だった。立松はサッカー部、梅枝は陸上部で、グランドで顔を合わせていたはずだが、関心がなかったというのが昨年までの事だった。
 保健委員の学期始めの仕事は、身体測定の補助やその整理だった。最初の委員会で、梅枝は彼を頼りにしていた。
「立松君は、1年の時も保健委員だったんでしょ。わたし初めてで、よく分からないから教えてね。何をすればいいの?」
「身体測定は一人ひとりの記録を書いて、終わった後でカードを整理するだけだよ。他には、保健だよりの作製が1回まわってくるけど、大したことないよ。」
 立松君は中々しっかりしていて、頼りになりそうだ。サッカー部だと言っていたが、色黒で背は高いし、きりっとした眉毛と二重まぶたの目元が男らしい。タイプという訳ではないが、嫌いではない。向こうは私に関心がないのか、教室でもあまり話をすることがない。でも、部活動の時、サッカー部の練習を意識して見るようになっていて、月1回の委員会が待ち遠しかった。

 立松が言っていた保健だよりの当番が、5月にまわって来た。養護の片平先生と相談して進めるが、テーマは『中学生の男女交際』だった。なぜ保健だよりにこのテーマなのか疑問だったが、先生のアドバイスもあり、アンケートをとる事になった。二人は放課後の教室で、頭を悩ませていた。
「どうする?アンケートって、何を聞けば良いのかな?」と私がつぶやくと、
「梅枝は、男子と交際したい?交際したとして、何をしたい?」と訊かれた。
「好きな人ができたら、付き合いたいな。一緒に帰ったり、ご飯を食べたりして、いろんな話がしたいかな。」
「それだけ?二人でデートしたり、手をつないだりは?」
「立松はすごいね!顔色を変えずに、そんなことを訊いてくるなんて!」
 私は彼を意識しすぎて、顔を赤くしていた。
「俺が個人的に訊いているんじゃなくて、一般的にどうかということだよ!そういう事を、アンケートで聞いたらどうだろう?」
 立松君は客観的な立場で考えていたのに、私は主観的過ぎて恥ずかしかった。私は彼の事を、好きになり始めているみたいだ。初めての感覚でよく分からないが、一緒にいるだけで嬉しいし、話をするのも楽しい。もっと彼の事を知りたいとも思う。「交際したとして、何をしたい?」と訊かれた時には、驚いた。「デートしたり、手をつないだりは?」と訊かれて、ドキドキした。彼は何とも思っていないみたいで、平然と仕事を進めている姿に感心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

処理中です...