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第1章 梅枝七海(14歳)=立松千宙(14歳)
§5 テスト勉強
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期末試験の前々日の土曜日、初夏の陽射しが照り付けていた。その中を七海は、自転車で千宙の待つ橋へと向かっていた。暑い日で、何を着て行こうかと悩んだ末に、中学生らしい前プリントのTシャツと白のショートパンツで出掛けた。待ち合わせ場所には千宙が既に来ていて、そこからは自転車を押しながら家まで歩いた。千宙の後を歩きながら、七海は汗が気になっていた。
「今日はお家には、御両親がいるの?」
「いや、二人とも出掛けてる。高校生の姉がいるけどね。」
私はそれを聞いて、安心とともに失望に似た複雑な感情を抱いていた。彼の家は一戸建ての住宅で、玄関を入るとお姉さんの萌香さんが出迎えてくれた。高校2年生だという彼女は、背が高く大人びた感じだった。麦茶を用意してくれたので、
「ありがとうございます。お邪魔します。」と私が言うと、
「チーちゃんとは、どういう関係なの?」と遠慮もなく訊いてきた。
「初対面で失礼だろう!友だちだよ。勉強するから、自分の部屋に行っててよ!」
彼が上手く交わしてくれて、エアコンのあるリビングで勉強道具を広げた。
「お姉さんに、チーちゃんって呼ばれているんだ。可愛いね。わたしも、チーちゃんって呼んでみようかな?」とからかうと、頭を小突かれた。
私は苦手な数学を教わり、彼の要領を得た説明に納得していた。また、英語が苦手だという彼に対して、テストに出そうな部分を丁寧に教えていた。肩を並べて勉強し、顔を近付け過ぎて焦って離れる場面もあった。
「梅枝の説明は分かりやすいな。教え方上手いし、学校の先生になったら?」
「立松だって、数学の才能あるよ!将来は理系だね。」
お互いを意識しながら、勉強を始めてから2時間が過ぎていた。休憩という事で、2階の彼の部屋に二人で行った。
「男の子の部屋は、弟がいるから初めてじゃないけど、何か緊張するな。」
「どうして、緊張する理由がよく分からない。何か期待してる?」
彼の思い掛けない言葉に、私は緊張に加えて胸が騒がしくなった。
「期待って何?」と訊くと、
「だから、自分の部屋にはない物があるとか、期待してるのかなと思って。」と言われ、気を廻し過ぎた自分が恥ずかしく、顔が赤くなっていた。
「男の子の部屋は、もっと散らかっているのかと思っていたけど、意外ときれいにしているんだね。」と部屋の中を見廻して、「このコミック、全巻そろっているね。読みたかったんだ。今度、貸して!」と話題を反らしていた。
「寝る時は、ベッドなんだね。男の子は、よくこの下にエッチな本を隠してると聞くけど、立松はどうなの?」
「何だよ、そんなことを期待してたのか?残念ながら、ないよ!」
「へー!アンケートの時、シビアな質問を考えてたから、そういう方面に関心があって、研究しているのかと思ってた。あんまり興味はないの?」
「ない事はないけど、今すぐにどうという訳ではないから。梅枝はどうなの?」
また質問を切り返されてしまった。「今すぐにどう」とは、どういう事なのか。男の子が考えている事は、私にはよく分からない。一応、そういう事には興味があるらしいが、私はどうだと訊かれても困る。
七海は質問には答えず、さらに話題を変えた。
「ああ、このCD聴きたいな。好きなんだ、このグループが。」
ベッドに腰掛けて、二人で音楽を聴きながら漫画を読んでいた。思ったより休憩が長引いてしまったが、再び勉強に戻った。夕方近くに、彼の母親が帰って来た。
「お邪魔してます。梅枝七海と申します。」と挨拶すると、
「随分としっかりしたお嬢さんね。スラっとして、可愛いわね。」とほめられ、私は照れていた。彼も母親の前で、照れを隠し切れないでいた。
七海が家に帰ったのは、6時を過ぎていた。
「熱心に勉強してたのね。誰のお家に行ってたの?」と母親に訊かれ、
「初絵の所だよ。」と親に初めて嘘を付いた。嘘を付くつもりはなかったが、思わず口をついて出ていた。
「今日はお家には、御両親がいるの?」
「いや、二人とも出掛けてる。高校生の姉がいるけどね。」
私はそれを聞いて、安心とともに失望に似た複雑な感情を抱いていた。彼の家は一戸建ての住宅で、玄関を入るとお姉さんの萌香さんが出迎えてくれた。高校2年生だという彼女は、背が高く大人びた感じだった。麦茶を用意してくれたので、
「ありがとうございます。お邪魔します。」と私が言うと、
「チーちゃんとは、どういう関係なの?」と遠慮もなく訊いてきた。
「初対面で失礼だろう!友だちだよ。勉強するから、自分の部屋に行っててよ!」
彼が上手く交わしてくれて、エアコンのあるリビングで勉強道具を広げた。
「お姉さんに、チーちゃんって呼ばれているんだ。可愛いね。わたしも、チーちゃんって呼んでみようかな?」とからかうと、頭を小突かれた。
私は苦手な数学を教わり、彼の要領を得た説明に納得していた。また、英語が苦手だという彼に対して、テストに出そうな部分を丁寧に教えていた。肩を並べて勉強し、顔を近付け過ぎて焦って離れる場面もあった。
「梅枝の説明は分かりやすいな。教え方上手いし、学校の先生になったら?」
「立松だって、数学の才能あるよ!将来は理系だね。」
お互いを意識しながら、勉強を始めてから2時間が過ぎていた。休憩という事で、2階の彼の部屋に二人で行った。
「男の子の部屋は、弟がいるから初めてじゃないけど、何か緊張するな。」
「どうして、緊張する理由がよく分からない。何か期待してる?」
彼の思い掛けない言葉に、私は緊張に加えて胸が騒がしくなった。
「期待って何?」と訊くと、
「だから、自分の部屋にはない物があるとか、期待してるのかなと思って。」と言われ、気を廻し過ぎた自分が恥ずかしく、顔が赤くなっていた。
「男の子の部屋は、もっと散らかっているのかと思っていたけど、意外ときれいにしているんだね。」と部屋の中を見廻して、「このコミック、全巻そろっているね。読みたかったんだ。今度、貸して!」と話題を反らしていた。
「寝る時は、ベッドなんだね。男の子は、よくこの下にエッチな本を隠してると聞くけど、立松はどうなの?」
「何だよ、そんなことを期待してたのか?残念ながら、ないよ!」
「へー!アンケートの時、シビアな質問を考えてたから、そういう方面に関心があって、研究しているのかと思ってた。あんまり興味はないの?」
「ない事はないけど、今すぐにどうという訳ではないから。梅枝はどうなの?」
また質問を切り返されてしまった。「今すぐにどう」とは、どういう事なのか。男の子が考えている事は、私にはよく分からない。一応、そういう事には興味があるらしいが、私はどうだと訊かれても困る。
七海は質問には答えず、さらに話題を変えた。
「ああ、このCD聴きたいな。好きなんだ、このグループが。」
ベッドに腰掛けて、二人で音楽を聴きながら漫画を読んでいた。思ったより休憩が長引いてしまったが、再び勉強に戻った。夕方近くに、彼の母親が帰って来た。
「お邪魔してます。梅枝七海と申します。」と挨拶すると、
「随分としっかりしたお嬢さんね。スラっとして、可愛いわね。」とほめられ、私は照れていた。彼も母親の前で、照れを隠し切れないでいた。
七海が家に帰ったのは、6時を過ぎていた。
「熱心に勉強してたのね。誰のお家に行ってたの?」と母親に訊かれ、
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