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第1章 梅枝七海(14歳)=立松千宙(14歳)
§14 先輩の告白
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林間学校から帰った数日間は、平穏な日々が続いた。初絵は黒岩の事について、あれ以来話さなくなった。七海もあえて訊く事もなく、いつも通りの関係でいた。
ある日の放課後、七海は部活に行きトラックを走っていると、後ろから百瀬竹彦に声を掛けられた。七海は後ろを振り返り、
「百瀬先輩、引退したのにどうしたんですか?」と訊ねた。
「久し振りに走りたくなって、それに梅枝さんのことも気になってたから。」
「気になるって、どういうことですか?わたしが真面目にやってるかって?」
百瀬は笑っていたが、はっきりと言わなかった。走りながら脚の上げ方や手の振りを指導し、フィールドでストレッチの時には、腕を抱えたり背中を押したり、脚の開脚を手伝ったりしていた。傍から見ると、仲の良い二人に見えたのは当然で、サッカーの練習をしていた千宙もそれを見ていた。
部活が終わり、七海が着替えて部室から出て来ると、そこに先輩が立っていた。不審に思ったが、彼女は練習のお礼を言った。すると、百瀬が、
「梅枝さんは、ぼくのことをどう思ってる?ぼくは、前から梅枝さんが好きで、もし良かったら付き合ってくれませんか?」と突然告白された。私はあせってしまい、どう対処しようかと迷った。
「先輩は今、勉強が忙しいんじゃないですか?女の子と付き合ってる暇はないでしょ!先輩のことは嫌いじゃないけど、わたしには他に好きな人がいて…」
私ははっきりと断ったつもりだったが、先輩はそうは取っていなかったらしい。その後で、陸上のコーチを続けたいとか、一緒に勉強しようとか誘ってきた。加えて、一度で良いからデートしてほしいと言われ、私は困ってしまった。
そんな事があった次の朝、七海が橋のたもとで千宙を待っていると、彼は少し遅れてやって来た。不機嫌そうにしているのを感じ、
「どうしたの?千宙君、機嫌悪そうだね。何かあった?」と訊くと、
「何かあったのは、七海の方でしょ!」と言われ、私は昨日の事だと思った。
「もしかして昨日の部活の時、見てたの?百瀬先輩は、自分のトレーニングに来ていて、ついでに私を指導してくれてただけだよ。」
「じゃあ、何であんなに仲良さそうにして、しかも七海の体を触ってたでしょ?」
「触るって、ストレッチだよ!そんな風に見られてたなんて、ショックだな!あ、分かった!千宙君は、嫉妬してるんだ。だったらうれしいかも。」
私は話をはぐらかそうとしたが、千宙君の機嫌は学校に着いても直らなかった。
その帰りに先輩から告白されたとは、とても言える雰囲気ではなかったし、私も言うつもりはなかった。千宙君は意外と独占欲が強いのか、妬かれるのも悪くはないが、意固地な所がある。しかし、百瀬先輩はどういうつもりなのか、受験で手一杯な時期に、告白はあり得ない。千宙君の言う通り、ボディタッチが意図的なもののように、確かに感じられる。今さらだが、誤解されても仕方のない行いだった。
しばらく千宙の機嫌は治らず、登校時の会話も弾まなかった。期末テストも近いというのに、今回は一緒に勉強する約束はなかった。七海は勉強にあまり集中できずに、成績も思わしくなかった。
終業式の頃には、自然と二人の仲は戻っていて、百瀬に関する話題は、お互いに避けていた。今は、冬休みをどう過ごすかが、二人にとっての課題だった。
「冬休みに入って、すぐにクリスマスだよね。イブの日に、俺の家に来ない?」
千宙君にそう言われて私はうれしかったが、母に相談してから返事をする事にした。
ある日の放課後、七海は部活に行きトラックを走っていると、後ろから百瀬竹彦に声を掛けられた。七海は後ろを振り返り、
「百瀬先輩、引退したのにどうしたんですか?」と訊ねた。
「久し振りに走りたくなって、それに梅枝さんのことも気になってたから。」
「気になるって、どういうことですか?わたしが真面目にやってるかって?」
百瀬は笑っていたが、はっきりと言わなかった。走りながら脚の上げ方や手の振りを指導し、フィールドでストレッチの時には、腕を抱えたり背中を押したり、脚の開脚を手伝ったりしていた。傍から見ると、仲の良い二人に見えたのは当然で、サッカーの練習をしていた千宙もそれを見ていた。
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「梅枝さんは、ぼくのことをどう思ってる?ぼくは、前から梅枝さんが好きで、もし良かったら付き合ってくれませんか?」と突然告白された。私はあせってしまい、どう対処しようかと迷った。
「先輩は今、勉強が忙しいんじゃないですか?女の子と付き合ってる暇はないでしょ!先輩のことは嫌いじゃないけど、わたしには他に好きな人がいて…」
私ははっきりと断ったつもりだったが、先輩はそうは取っていなかったらしい。その後で、陸上のコーチを続けたいとか、一緒に勉強しようとか誘ってきた。加えて、一度で良いからデートしてほしいと言われ、私は困ってしまった。
そんな事があった次の朝、七海が橋のたもとで千宙を待っていると、彼は少し遅れてやって来た。不機嫌そうにしているのを感じ、
「どうしたの?千宙君、機嫌悪そうだね。何かあった?」と訊くと、
「何かあったのは、七海の方でしょ!」と言われ、私は昨日の事だと思った。
「もしかして昨日の部活の時、見てたの?百瀬先輩は、自分のトレーニングに来ていて、ついでに私を指導してくれてただけだよ。」
「じゃあ、何であんなに仲良さそうにして、しかも七海の体を触ってたでしょ?」
「触るって、ストレッチだよ!そんな風に見られてたなんて、ショックだな!あ、分かった!千宙君は、嫉妬してるんだ。だったらうれしいかも。」
私は話をはぐらかそうとしたが、千宙君の機嫌は学校に着いても直らなかった。
その帰りに先輩から告白されたとは、とても言える雰囲気ではなかったし、私も言うつもりはなかった。千宙君は意外と独占欲が強いのか、妬かれるのも悪くはないが、意固地な所がある。しかし、百瀬先輩はどういうつもりなのか、受験で手一杯な時期に、告白はあり得ない。千宙君の言う通り、ボディタッチが意図的なもののように、確かに感じられる。今さらだが、誤解されても仕方のない行いだった。
しばらく千宙の機嫌は治らず、登校時の会話も弾まなかった。期末テストも近いというのに、今回は一緒に勉強する約束はなかった。七海は勉強にあまり集中できずに、成績も思わしくなかった。
終業式の頃には、自然と二人の仲は戻っていて、百瀬に関する話題は、お互いに避けていた。今は、冬休みをどう過ごすかが、二人にとっての課題だった。
「冬休みに入って、すぐにクリスマスだよね。イブの日に、俺の家に来ない?」
千宙君にそう言われて私はうれしかったが、母に相談してから返事をする事にした。
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