危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
21 / 361
第1章:異世界の森で生活開始

第19話:問題を解決しよう2

しおりを挟む
「カイト!!!」

飛ばされたカイトの方を見て叫ぶが、カイトからの返事はない。
『身体強化』を使っていたようだし、大丈夫だと思うが、飛んでいくカイトのスピードが速く、木にぶつかった音も大きかっただけに、心配だ。
ポーラも、「お兄ちゃん!」と、叫んでいるが、カイトからの返事は同じくない。

・・・・・・カイトを助けないと。
すぐにでもカイトのもとへ駆け寄りたいが、目の前のヘビが、そんなことを許してくれるようには思えない。

・・・こんなことなら、攻撃せずに逃げるべきだったの? 
・・・そもそもカイト達は洞窟に留守番させておくべきだった?
そんな風に、後悔が押し寄せる。

しかし、相手の方は待ってはくれない。
カイトに頭突きをするために突き出した頭を、一度戻して、身体を起こした。
私たちを見下ろしながら、舌をしきりに動かしている。
幸い、ヘビの意識から、カイトは外れているようだ。
・・・・・・それが、悪い意味で無いことを願いながら、対処を考える。

ふと、万が一に備えて、リンの『マジックボックス』に『アマジュの実』をいくつか仕舞っていたことを思いだした。
・・・・・・そうだ、カイト達と出会った日。2人が初めて『アマジュの実』を食べたとき。
カイトの怪我の具合は分からないが、2人が村で負った傷などは完治していた。


注意は私に向いている。
まず、すべきことは、ポーラをカイトのもとへ行かせることだ。それも、リンと一緒に。
・・・・・・・・・よし、やるしかない。

リンにポーラと一緒にカイトのもとへ行き、『マジックボックス』に仕舞っている『アマジュの実』を食べさせるように心の中で伝える。
リンは、私の側から離れたくないのか、迷っているような感情が伝わってきたが、もう一度強く伝えて、説得する。
リンが、「わかった」、とでも言うように、身体を震わせたのを見て、ポーラに告げる。

「・・・ポーラ。私が気を引くから、リンを連れて、カイトの所へ走って。リンから『アマジュの実』を受け取って、カイトに食べさせて」
「・・・え、コトハ姉ちゃんは・・・」

ポーラは、なにか言いたそうにこちらを見たが、無視して、ヘビを睨みつける。
間違っても、ポーラや、カイトの方に、ヘビの注目を行かせてはダメだ。




一呼吸置いてから、

「行って!」

ポーラに向けて叫ぶと同時に、ヘビに向かって『ストーンバレット』を連射する。
連射すると、狙いをうまく付けられないし、威力も下がってしまうが、気を引くことが目的だから関係ない。
ポーラはリンを抱き上げると、カイトの方へダッシュした。

ヘビは、気づかなかったのか、それとも私を倒してからでいいと思っているのか、ポーラは無視して、私の方へ向かってきた。

『ストーンバレット』を打ち続けるが、ほとんど当たらず、当たってものけぞりすらしない。
それでも打ち続けていたが、ヘビは一度身を竦めて、私に向かって頭突きを繰り出してきた。



・・・・・・パリン!パリン!パリン! と、目の前に展開された『自動防御』の障壁を破壊し、ヘビの頭突きは、私に命中した。
この世界に来て初めて攻撃を食らった私は、そのまま後方に吹き飛ばされた。
『自動防御』が威力を弱めたおかげか、身体を動かすことはできるが、体中がジンジンと痛む。



ヘビを見ると、とどめを刺すつもりなのか、口を開き、2本の牙を構えていた。
・・・・・・・・・本格的にまずい! 頭突きで無理なら、あの牙で噛み付かれたら確実に、『自動防御』は貫通するし、致死量のダメージを食らう!

・・・・・・・・・どうする、どうすればいいの。
『ストーンバレット』はだめ。『アイスバレット』もだめだろう。
『ファイアウォール』を作っても、回り込まれたら終わりだし、ポーラ達に注意がいったら、困る。
・・・・でも、ほかに手段が・・・






・・・・・・諦めちゃダメだ。私は、カイトとポーラの保護者なんだ!
前世は、散々だった。きっかけは最悪だったけど、異世界に転生して、新しい暮らしを手に入れたんだ。
そして、カイトとポーラと出会った。
まじめでしっかり者だけど、どこか危なっかしいカイト。
元気いっぱいで明るく、とても優しいポーラ。
それに、私を主人として受け入れ、いつも狩りや散策を手伝ってくれるリン。
小さな身体で、私を助けようと動き回ってくれている。


3人は私の大切な仲間・・・・・・・・・、いや、家族なんだ。
絶対に守ってみせる!


そう思って、立ち上がり、ヘビを睨みつけた時だった。
身体の中心から力が湧き上がってくるような、なにか熱いものが流れているような、そんな感覚が襲ってきた。
それと同時に、私の周りに、小さな光の粒が集まり始めた。
集まってくる光の粒は、どんどん増えていき、私の身体を覆う様に集まった。

次の瞬間、私を覆っていた光の粒と、私の身体が、ものすごい光を放ち、眩しさで思わず目を閉じてしまった。


ゆっくりと目を開けると、目の前で牙を構えていたヘビが、後ろに下がり、こちらを見つめていた。なんとなくだが、その目は怯えているような、そんな感じがした。

身体の奥底から力が湧き上がってくる感覚が、光に覆われる前よりも強くなっていた。

・・・なにが起きたのか。とりあえず、それを確認しようと思い、自分の身体を見下ろした。
すると、両腕に、・・・・・・・・・青白い鱗が生えていた。


「・・・・・・えっ? なんで腕に鱗? それに手もなんか、指が長くなって、鋭い爪まで付いてるし・・・」

私の両腕は、鱗に覆われ、手はそれぞれの指の長さが1.5倍くらいになり、その全体が同じ鱗で覆われている。そして各指には、ナイフかと思えるほどの鋭い爪が生えていた。

それに脚も、太ももあたりから、鱗で覆われている。
足首の先には、手と同じように鱗に覆われ、指が長く生り、鋭い爪の生えた、足が付いていた。
・・・・・・まるでドラゴンの様な、そんな手と足。


・・・分からない。まったくもって、理解が追いつかない。
動かしてみたら、いつもの手や足の様に動くし、指も動く。爪が邪魔だが、手のひらをグーにもできる。

つまり、私の手足が変化したのは間違いない。
どう考えても、アレだ。カイトも知らなかった謎の種族。『魔竜族』。その“竜”の部分だろう。
その特性だか、スキルだか、分からないが、それが発動したんだろう。


・・・・・・・・・どうでもいいか。うん、どうでもいい。
とりあえず、なんか強そうになってる身体と、湧き上がってくる力を使って、目の前のヘビをぶっ飛ばして、カイト達を助けるだけだ!

覚悟しろよ、ヘビ野郎め。
カイトを痛めつけて、ポーラを怖がらせてくれたこと後悔させてやる!

そう心の中で悪態をつき、ヘビを睨みつけると、ヘビに向かって走り出した。


しおりを挟む
感想 125

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

処理中です...