危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
57 / 361
第2章:異世界の人々との出会い

第52話:必要なものを揃えよう2

しおりを挟む
「・・・仕組みはよくわかんないんだけどさ、『剣と盾』のトイレが清潔で臭わないし、良かったの。あれを再現することってできる?」
「・・・トイレでございますか。おそらく、スライムでございますね。『ディーズスライム』と呼ばれる、小さなスライムでございます」
「・・・・・・スライム?」
「はい。『剣と盾』のような高級宿や、貴族の屋敷など高級な物件に備え付けられているトイレには、スライムが使われています。トイレの下部に、スライム用のプールがあり、そこに排泄物が集まります。『ディーズスライム』は、プールに落とされた排泄物を取り込み、養分とします。そのため、プール内が過度に汚くなることもなく、臭いがひどくなることもありません」
「なる、ほど・・・。そのスライムって、買えたりする?」
「もちろんでございます。ただ、結構、値が張りますが・・・」
「どのくらい?」
「1匹で金貨2枚になります。野生の個体は少なく、貴族の家などで分裂し、増殖した分が売りに出される程度ですから」
「もちろん、買います。何匹くらいいるかな・・・?」
「我々の家ですと、5匹もいれば十分かと」
「うーん。じゃあ、7匹お願い」
「・・・承知致しました」

よし。これは思わぬ収穫だ。
日本の清潔なトイレに慣れている私には、拠点のトイレは耐え難いものがあった。
合計で140万円と、めちゃくちゃ高かったけど、これは譲れない。
帰ったら、トイレの改造だ!


その後、買いたいものは伝え終わったので、トレイロの案内で、2階の別室にある、新品の服の売り場に向かう。
トレイロの部下の人 —さっき紹介してくれたところによると、番頭さんらしい— は、マットレスなどの準備をしてくれている。

この世界では、古着を着るのが一般的だ。
新品の服を買って着るのは、貴族や、商人など一部の金持ちだけらしい。
より金持ちだと、オーダーメイドになる。
トレイロは、『セルの実』を売った私たちを、よくわからない金持ちと見ているらしく、新品を勧めてくれた。
まあ、新品でも値段的に買えそうだし、新品を買おう。

服売り場には、新品の服がいくつも掛けてあった。
買うのが貴族だったりするだけあって、やたらと装飾の派手なものが多い。
森の中で暮らしている私たちにとって、装飾は邪魔なだけなので、それぞれシンプルなものをいくつか選んで、購入しておく。


服を選び終わったので、1階に下りる。
1階に下りてまず、カイトの武器を見てみることにした。
武器なんて私にはよく分からないので、レーベルとカイトがいろいろ話しているのを後ろから眺めている。

「カイト様が習っていたのは、どのような剣の扱いでしょうか?」
「・・・えーっと、こういうのです」

カイトが示したのは、両刃の真っ直ぐな剣だ。
それほど長さはなく、片手でも扱える感じ?
陳列棚には、装飾の凝った華美なものから、装飾の全くない実用向け?なものまでいろいろ展示されている。
華美なヤツは、儀式用とか?

カイトが示した片手剣の1つを、レーベルが取り、カイトに渡す。
カイトは剣を受け取ると、棚の無い場所へ移動し、剣を軽く振ってみている。
なんか、様になってるなー

「どう?カイト」
「・・・うん。習ってたのは、こんな感じの剣だよ。少しだけど扱い方も覚えてるみたい」
「ふーん。レーベルは、この剣の扱い方を教えられるの?」
「無論でございます。この剣はオーソドックスな片手剣ですから、扱い方も心得ております。カイト様は、『身体強化』をかなり使いこなせておりますので、剣を組み合わせることで、より強くなれると思います」
「なるほどねー。じゃあ、買おっか。訓練用に、レーベルのも買っとこう」
「そうですね・・・。加えて、訓練用の木剣も購入しておきましょう」
「おっけー」
「お姉ちゃんは買わないの?」
「私用の剣?」
「うん。お姉ちゃんなら剣も扱えそうだし」

・・・・・・いや、無理だから。
日本人の高校生に剣の扱いは無理よ。
いや、確かに。ここに並んでる剣を扱って、敵をばったばったと切っていけたら気分いいと思うけどさ・・・




買うか。
お金あるし。
展示されている剣の値段を見ても、『セルの実』の収入で十分に買える。
買わないと、練習することもできないしね。

「よし、買おう。使えたらかっこいいし」
「・・・・・・う、ん」

カイトが何か言いたそうにしているけど、無視だ。
いろいろ眺めて、少し短めで反りのある、剣を選んだ。
なんでも、2本1セットの両手剣らしいので、2本まとめて買っておく。
使えなかったら、カイトにあげればいいし。

「じゃあ、これを」

カイトはやはり何かを言いたそうにしているけど、スルーしておく。


「後は、食材かな? 野菜とか、調味料とか買いたいね」
「そうですね。肉は最高級のものが簡単に手に入りますが、野菜や調味料は見当たりませんので」

食材売り場に移動して、並んでいるものを見ていく。
見た目自体は、トマトやナスなど、見たことあるような野菜もあれば、真っ赤な葉野菜など、見たことのない野菜もある。
まあ、よくわかんないから、レーベルになげておく。

レーベルは、野菜を大量に選び、さらにそれぞれの種を選んでいた。
拠点の空き地で育てるらしい
まあ、毎回買いに来るわけにもいかないもんね。


こうして、異世界で初めてのショッピングは大満足に終わった。
倉庫のようなとこに、頼んだものがまとめてあったので、リンに収納してもらう。
『ディーズスライム』だけは、『マジックボックス』に収納できないので、カゴに入ったまま受け取った。
『マジックボックス』には、生きている魔獣や魔物は収納できない。植物は収納できるのに不思議なものだ。
受け取った金貨から代金を支払ったが、まだまだ金貨は残っている。

「皆様。本日は誠にありがとうございました。また何か必要なものがありましたら、是非トレイロ商会へお越しください。また、『セルの実』など貴重なものを入手された際にも、売り場所としてご検討いただければ幸いです」
「こちらこそありがとう。また来るね」

そう言って、トレイロ商会を後にした。


 ♢ ♢ ♢


買いたいものは買えたし、リンの従魔登録もできた。
領都に来た目的は達成したわけだ。
このまま帰ってもいいんだけど・・・

「用事は済んだけど、どうする?」
「うーん、僕は特に用はないけど・・・」
「ポーラ、もうちょっと町を歩いてみたい!」
「そうだね。もう少し町を散策してみようか」


せっかくだし、もう少し見て回ることにしよう。

しおりを挟む
感想 125

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。 頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。 「うおおおおお!!??」 慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。 基本出来上がり投稿となります!

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

処理中です...