危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第2章:異世界の人々との出会い

第54話:ぶっ飛ばそう

レイルとキエラが追加で説明してくれたところによると、侵攻の開始は、1週間後くらいの予定らしい。
昨日、本隊がこの町に到着し、今朝、領軍の築く陣地へと出発したらしい。
その数はおよそ5000人。
ラシアール王国の規模は知らないけど、かなり大規模に思える。

そういえば、冒険者ギルドに冒険者がいなかったのも、陣地を築く予定地周辺の魔獣や魔物の討伐依頼が多数出されたからだそうだ。
なんでも、レイルはゴールドランク、キエラはシルバーランクの冒険者らしい。

2人は今日も、トレイロの護衛として、その陣地に物資を運びに行くのに同行するらしく、話を終えると帰っていった。


さて、と。
どうしますかね・・・

「カイト、大丈夫?」
「・・・うん。大丈夫だよ。いろいろありすぎて、ちょっと動揺してるだけ・・・」
「そっか。改めてだけど、私は何があってもカイトの味方だからね。カイトが、やることを全力で応援して、助けるから」
「うん。ありがとう、お姉ちゃん」


少しして、ポーラ達も帰ってきたので、カイトの家の事情はともかく、軍隊の方は説明しておく。
するとまあ、分かりやすくレーベルが不機嫌になった。
レーベルは、クライスの大森林が私のものって、思ってるからなー

それはともかく、今後の方針を決めなくては。
もう一日、町を散策するつもりだったが、これは早めに帰った方がいいだろう。
そう提案すると、賛同されたので、今日のうちに帰ることにする。


 ♢ ♢ ♢


来るときよりも歩くペースを上げて、その日の夕方には、クライスの大森林が見えてきた。
といっても、今日は帰ることができないので、近くの小さな森に入って野営をした。




翌朝、素早く朝食を食べ、野営の後片付けをすると、森を目指した。

少しして、森が近づいてくると、つい先日見た、設営中の陣地は、その様子が大きく変わっていた。
多くのテントが並び、人数もかなり増えている。
それに、鎧を身に纏って、巡回している兵士の数も増えている。
レイルたちの言っていた、クライスの大森林侵攻の本隊、約5000人が合流していた。


私たちは少し離れた場所から、その様子をうかがう。
うーん。この数が、森に入ってきたらしんどいな・・・

「どうする?」
「・・・どうするって?」
「いやさ。あの大軍が、森に入ってくるわけでしょ? カイトも言ってたけど、拠点の方にも来るよね? それに、『アマジュ』とか見つけられたら困るし・・・」

ぶっちゃけ、森の中を通るだけなら関係ない。
問題は、拠点に近づかれること、そしてカイト曰く伝説の木の実である『アマジュの実』を見つけられてしまうことだ。
お金に困っているラシアール王国が、『アマジュの実』を見つければ、そこを占領するか、根こそぎ持って行くのは確実だ。それは困る。

「では、始末して参りましょうか?」
「・・・うーん。どうしようかなー」

私たちにとって脅威になるのは間違いないが、かといってこの状況で攻撃するのも違う。
ほぼ確実に侵攻してくるわけで、先制攻撃がダメとか、ラシアール王国の領土内だからダメとかいうわけではない。
おそらく、この数と戦う覚悟ができていないんだ。
それに今まで倒したのは全て魔獣だ。『人間』を含む人型種を攻撃したことはない。
もちろん、この世界で前世の暴力とは無縁な生活が送れないことは百も承知だ。
だがやはり、人を攻撃する、踏ん切りがつかない・・・


そう悩んでいると、後方から近づいてくる人の気配を感じた。
見ると、やけに豪華な鎧を身に纏った男を先頭に、数騎の騎馬と、歩兵の集団が近づいてくるのが見えた。

「・・・逃げるには、近すぎるか」
「ええ。真っ直ぐこちらに向かってきます」
「そうみたいね。カイトとポーラは私たちの後ろに」

2人は一応、身分を剥奪されて村送りになった身だ。軍なんかに見つかって、面倒に巻き込まれるのは困る。
集団は私たちの側まで来ると、豪華な鎧の男の横にいた男が話しかけてきた。

「おい、お前たち。ここで何をしている?」
「・・・・・・この辺を探索していただけですけど?」
「探索だと? ふん。この辺は国家の一大プロジェクトが進行中だ。部外者は失せろ!」

・・・・・・あ? いきなりなんなのこいつ? 偉そうに・・・

「まあ待て、レンロー。この女。それなりに顔がいいではないか。おい女、私に仕えることを許可する。光栄に思うが良いぞ」

・・・・・・・・・・・・はい?
ちょっと理解が追いつかないんだけど、こいつは何言ってんの?
最初の男とは比べものにならないくらい失礼じゃない?

「・・・あんたは誰? いきなり失礼すぎない?」
「おい! なんて口の利き方をする! この御方は、ラシアール王国第二王子ロップス殿下であらせられるぞ!」

ロップス・・・。ラシアール王国第二王子・・・。
カイトの親を嵌めたクソ王子か。
そういえば、この軍隊を率いてるんだっけ?
はぁー、ほんとにクソみたいなヤツだな・・・

「だとしたらなに? 初対面の女性に失礼すぎるのは変わんないでしょ。モテないんだろーね」
「なっ! 貴様! 不敬罪だぞ!」
「不敬罪もなにも敬意なんて無いからねー、これっぽっちも。こんなのが王子って、ラシアール王国は終わってるわね」

そう、笑いながら言い返した。
横にいるレーベルは、なんかニヤニヤしているし、後ろのカイトは呆れながらポーラの耳を塞いでいた。
まあ、100%の本心だ。


「まあ、私たちはあんた達に用はないから」

そう言って、立ち去ろうとすると、

「待て! 貴様、この私に恥をかかせたこと後悔させてやる!」

そう言いながら、豪華な鎧の男、改めクソ王子は、いきなり腰の剣を抜いた。
お、やる? 剣を抜いたってことは、ぶちのめしていいってことだよね?


「なに? 私に勝てんの? 偉そうにしてる、モテなさそうなクソ王子が」

とりあえず、煽るだけ煽っておく。

これが既に頭に血が上りきってるクソ王子には効果てきめんで、斬りかかってきた。

クソ王子がキレて攻撃してくることは、完全に予想ができていた。
私は冷静に相手を見ながら、両脚と右腕を『竜人化』させて、クソ王子が剣を振り下ろすより前に、すぐ近くまで接近し、鳩尾をぶん殴った。




クソ王子は吹っ飛んで、後ろの兵士の集団にぶつかった。
どうやら、意識を失っているようだ。
まあ、さすがに手加減しているし、グーにして殴っただけで、爪で切り裂いたわけでもない。
死んではいないだろう。
・・・まあ、死んでいても気にはしないが。

「いい? 次、私たちの前に現れたら、そのときは容赦しないから」

最初に話しかけてきた男を中心に、取り巻き共に対して、そう言い残してから、リンに新しく覚えた煙幕を出してもらった。
リンの放出した大量の黒い煙は、私たちと、クソ王子一行を完全に分断した。
その隙に、私たちは森の方へと走った。

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