危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
89 / 361
第2章:異世界の人々との出会い

第83話:魔石の味

しおりを挟む
シャロンを治療したり、シャロンの親を埋葬したりして、日が暮れてきたので、とりあえず拠点へ帰る。
シャロンの翼は、まだ小さく、ポーラがシャロンに聞いた感じでは、まだ上手く飛ぶことはできないらしい。
なので、ポーラが乗っているワートの横を併走していた。

スレイドホースたちは、私の担当がマーラに決まった以外は、担当は決まっていないみたいで、今はカイトがスティアに、ポーラがワートに乗っている。
リンはウォロンだ。これは実質担当になっている気がする。仲いいし。
ポーラを乗せているワートを、シャロンが羨ましそうに見ているので、シャロンがもう少し大きくなったら、ポーラの担当はシャロンになるかもしれない。


拠点に帰ると、シャロンを、留守番していたレーベルとポス・ベッカに紹介しておく。
その流れで、ポーラと私で、スレイドホースたちやリンを決して襲わないように強く注意しておいた。
シャロンは「もちろん!」と伝えてきたらしく、大丈夫だとは思うが、最初は注意しておこう。

シャロンの種族、ベスラージュについてレーベルが、龍族に仕えていたころはよく見かけたと昔話をしてくれた。
曰く、ベスラージュはとても知能の高い魔獣で、従魔契約をしていなくても、成長すれば意思疎通が容易にできるらしい。
飛ぶ速度はかなりのものだが、子どものうちは、飛ぶことができず、親の背中に乗って移動することが多いので、ツイバルドにはそこを狙われたようだ。


ポーラはシャロンに拠点を案内していた。
私たちの元へ戻ってくると、

「レーベル。シャロンがお腹空いたって!」
「承知致しました。その大きさであれば、ファングラヴィットを丸ごと食べると思いますので、用意致します。まだ解体が終わっていない個体がありますので」
「ありがとう!」

丸ごとって・・・
同じくらいの大きさなのにね・・・




レーベルがファングラヴィット —血抜きと牙を取り外しただけの個体— を用意すると、シャロンは「食べていい!?」といった感じで興奮しながら、ポーラの周りを駆けていた。
ポーラが「いいよ」と頷くと、一目散にファングラヴィットに飛びつき、ガツガツと食べていた。

一時間もしないうちに、ファングラヴィットは大きな骨を残して、綺麗に食べ尽くされていた。
・・・あれ?魔石は?


「ねえ、レーベル。あのファングラヴィットって魔石も出してあったの?」
「いえ、まだ体内にあったと思われます」
「・・・じゃあ、シャロンが食べたってこと?」

私がそう聞くと、ポーラが焦ったようにシャロンの元へ近づき、

「シャロン! 魔石食べたらダメだよ! 硬くて美味しくないよ!」

そう言って、吐き出させようと、シャロンの背中付近を撫でているが、当のシャロンは「なんで?」とでも言いたそうな表情で、ポーラを見つめて、ポーラの顔を舐めていた。

・・・平気そう?


「ポーラ様、ご安心ください。魔獣が魔石を食べるのは不思議なことではございません。むしろ、シャロン殿ほどの若さであれば、成長のために摂取することが望ましいくらいです」
「・・・そうなの?」


レーベルによると、多くの魔獣が魔石を食べるらしい。
というのも魔獣は体内に魔石を有し、魔素の魔力への変換や魔力の蓄積をコントロールしているが、生まれたばかりの個体の魔石は小さく、魔力量も少なければコントロールする力も弱い。
大気中にある魔素を取り込むことや、食事によって魔素を吸収し、魔石を成長させていくが、他の魔石を食べることはその近道になるらしい。
そのため肉食・草食問わず —草食の場合は偶然死骸を見つけた場合に限られはするが— 魔石を摂取することは珍しいことではないそうだ。


「・・・じゃあ、リンやマーラたちにも、魔石をあげた方がいいの?」
「一般論で申せばそうなのですが、ここは少し事情が違いまして・・・」


事情が違うのは3つ。
1つ目はここが、魔素濃度の濃いクライスの大森林であるということ。
大気中から取り込める魔素の量や、普通の食事で吸収できる魔素の量が、森の外とは段違いだ。
特に、元々は森の外にいたマーラたちにとっては、現状で吸収できる魔素の量を超える供給がされているらしい。
2つ目に私の従魔であるということ。
従魔契約をすると、主従間で魔力の行き来が行われるようになる。
私たちの場合、私の保有する膨大な魔力が、従魔に流れ、それが魔石を成長させたり、身体を強くしたりしている。
そのため、わざわざ魔石を食べる必要性は低いらしい。
3つ目に、『アマジュの実』だ。
魔石よりも、魔素の吸収に優れている木の実を、普通の食事にしているのだから、魔石は不要なわけだ。


「シャロン殿についても、しばらくは魔石を食べるとは思いますが、ここで生活をしているうちに、食べなくなると思います」

レーベルの説明に、ポーラは安心したようで、シャロンを抱きしめていた。


 ♢ ♢ ♢


シャロンを迎えて、数週間が過ぎた。
シャロンは出会った当初よりも、遥かに大きくなっており、今ではポーラを乗せて歩くことができるようになっている。

まだ空を飛ぶのは上手くないが、一生懸命に翼を羽ばたかせて、短時間・低い高度であれば、飛ぶことができるようになってきた。


カイトやポーラの成長も留まる所を知らず、私が『竜人化』してまあまあ力を込めて作った的も、簡単に壊されるようになってきた。
さすがに、フルパワーで作っている拠点の壁なんかは、まだ壊されないが、そのうち壊されても驚かない。


成長といえば、マーラたちスレイドホースが、それぞれ身体が大きくなっており、それに伴い走るスピードも速くなっていた。
そして、ポスとベッカが妊娠した。
前までも拠点から出たがらなかったが、最近になって特にその傾向が増してきて、気になっていたところで、レーベルからお腹から別の魔力を感じる、つまり妊娠しているとの報告がなされたのだ。

突然のことで驚いたが、妊娠したスレイドホースは、特に動き回らず、寝床でゆっくりしていることが多いとのことなので、2頭用の新しい馬房を作って、餌を大量に集めて置いておいた。
毎朝様子を見ているが、ゆっくり食事をしているか、寝ているかのどちらかで、問題はなさそうだ。
スレイドホースの妊娠期間は半年ほどで、動物の馬よりも短いらしい。
後は元気な子が産まれるように、見守るしかない。


しおりを挟む
感想 125

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...