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第2章:異世界の人々との出会い
第83話:魔石の味
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シャロンを治療したり、シャロンの親を埋葬したりして、日が暮れてきたので、とりあえず拠点へ帰る。
シャロンの翼は、まだ小さく、ポーラがシャロンに聞いた感じでは、まだ上手く飛ぶことはできないらしい。
なので、ポーラが乗っているワートの横を併走していた。
スレイドホースたちは、私の担当がマーラに決まった以外は、担当は決まっていないみたいで、今はカイトがスティアに、ポーラがワートに乗っている。
リンはウォロンだ。これは実質担当になっている気がする。仲いいし。
ポーラを乗せているワートを、シャロンが羨ましそうに見ているので、シャロンがもう少し大きくなったら、ポーラの担当はシャロンになるかもしれない。
拠点に帰ると、シャロンを、留守番していたレーベルとポス・ベッカに紹介しておく。
その流れで、ポーラと私で、スレイドホースたちやリンを決して襲わないように強く注意しておいた。
シャロンは「もちろん!」と伝えてきたらしく、大丈夫だとは思うが、最初は注意しておこう。
シャロンの種族、ベスラージュについてレーベルが、龍族に仕えていたころはよく見かけたと昔話をしてくれた。
曰く、ベスラージュはとても知能の高い魔獣で、従魔契約をしていなくても、成長すれば意思疎通が容易にできるらしい。
飛ぶ速度はかなりのものだが、子どものうちは、飛ぶことができず、親の背中に乗って移動することが多いので、ツイバルドにはそこを狙われたようだ。
ポーラはシャロンに拠点を案内していた。
私たちの元へ戻ってくると、
「レーベル。シャロンがお腹空いたって!」
「承知致しました。その大きさであれば、ファングラヴィットを丸ごと食べると思いますので、用意致します。まだ解体が終わっていない個体がありますので」
「ありがとう!」
丸ごとって・・・
同じくらいの大きさなのにね・・・
レーベルがファングラヴィット —血抜きと牙を取り外しただけの個体— を用意すると、シャロンは「食べていい!?」といった感じで興奮しながら、ポーラの周りを駆けていた。
ポーラが「いいよ」と頷くと、一目散にファングラヴィットに飛びつき、ガツガツと食べていた。
一時間もしないうちに、ファングラヴィットは大きな骨を残して、綺麗に食べ尽くされていた。
・・・あれ?魔石は?
「ねえ、レーベル。あのファングラヴィットって魔石も出してあったの?」
「いえ、まだ体内にあったと思われます」
「・・・じゃあ、シャロンが食べたってこと?」
私がそう聞くと、ポーラが焦ったようにシャロンの元へ近づき、
「シャロン! 魔石食べたらダメだよ! 硬くて美味しくないよ!」
そう言って、吐き出させようと、シャロンの背中付近を撫でているが、当のシャロンは「なんで?」とでも言いたそうな表情で、ポーラを見つめて、ポーラの顔を舐めていた。
・・・平気そう?
「ポーラ様、ご安心ください。魔獣が魔石を食べるのは不思議なことではございません。むしろ、シャロン殿ほどの若さであれば、成長のために摂取することが望ましいくらいです」
「・・・そうなの?」
レーベルによると、多くの魔獣が魔石を食べるらしい。
というのも魔獣は体内に魔石を有し、魔素の魔力への変換や魔力の蓄積をコントロールしているが、生まれたばかりの個体の魔石は小さく、魔力量も少なければコントロールする力も弱い。
大気中にある魔素を取り込むことや、食事によって魔素を吸収し、魔石を成長させていくが、他の魔石を食べることはその近道になるらしい。
そのため肉食・草食問わず —草食の場合は偶然死骸を見つけた場合に限られはするが— 魔石を摂取することは珍しいことではないそうだ。
「・・・じゃあ、リンやマーラたちにも、魔石をあげた方がいいの?」
「一般論で申せばそうなのですが、ここは少し事情が違いまして・・・」
事情が違うのは3つ。
1つ目はここが、魔素濃度の濃いクライスの大森林であるということ。
大気中から取り込める魔素の量や、普通の食事で吸収できる魔素の量が、森の外とは段違いだ。
特に、元々は森の外にいたマーラたちにとっては、現状で吸収できる魔素の量を超える供給がされているらしい。
2つ目に私の従魔であるということ。
従魔契約をすると、主従間で魔力の行き来が行われるようになる。
私たちの場合、私の保有する膨大な魔力が、従魔に流れ、それが魔石を成長させたり、身体を強くしたりしている。
そのため、わざわざ魔石を食べる必要性は低いらしい。
3つ目に、『アマジュの実』だ。
魔石よりも、魔素の吸収に優れている木の実を、普通の食事にしているのだから、魔石は不要なわけだ。
「シャロン殿についても、しばらくは魔石を食べるとは思いますが、ここで生活をしているうちに、食べなくなると思います」
レーベルの説明に、ポーラは安心したようで、シャロンを抱きしめていた。
♢ ♢ ♢
シャロンを迎えて、数週間が過ぎた。
シャロンは出会った当初よりも、遥かに大きくなっており、今ではポーラを乗せて歩くことができるようになっている。
まだ空を飛ぶのは上手くないが、一生懸命に翼を羽ばたかせて、短時間・低い高度であれば、飛ぶことができるようになってきた。
カイトやポーラの成長も留まる所を知らず、私が『竜人化』してまあまあ力を込めて作った的も、簡単に壊されるようになってきた。
さすがに、フルパワーで作っている拠点の壁なんかは、まだ壊されないが、そのうち壊されても驚かない。
成長といえば、マーラたちスレイドホースが、それぞれ身体が大きくなっており、それに伴い走るスピードも速くなっていた。
そして、ポスとベッカが妊娠した。
前までも拠点から出たがらなかったが、最近になって特にその傾向が増してきて、気になっていたところで、レーベルからお腹から別の魔力を感じる、つまり妊娠しているとの報告がなされたのだ。
突然のことで驚いたが、妊娠したスレイドホースは、特に動き回らず、寝床でゆっくりしていることが多いとのことなので、2頭用の新しい馬房を作って、餌を大量に集めて置いておいた。
毎朝様子を見ているが、ゆっくり食事をしているか、寝ているかのどちらかで、問題はなさそうだ。
スレイドホースの妊娠期間は半年ほどで、動物の馬よりも短いらしい。
後は元気な子が産まれるように、見守るしかない。
シャロンの翼は、まだ小さく、ポーラがシャロンに聞いた感じでは、まだ上手く飛ぶことはできないらしい。
なので、ポーラが乗っているワートの横を併走していた。
スレイドホースたちは、私の担当がマーラに決まった以外は、担当は決まっていないみたいで、今はカイトがスティアに、ポーラがワートに乗っている。
リンはウォロンだ。これは実質担当になっている気がする。仲いいし。
ポーラを乗せているワートを、シャロンが羨ましそうに見ているので、シャロンがもう少し大きくなったら、ポーラの担当はシャロンになるかもしれない。
拠点に帰ると、シャロンを、留守番していたレーベルとポス・ベッカに紹介しておく。
その流れで、ポーラと私で、スレイドホースたちやリンを決して襲わないように強く注意しておいた。
シャロンは「もちろん!」と伝えてきたらしく、大丈夫だとは思うが、最初は注意しておこう。
シャロンの種族、ベスラージュについてレーベルが、龍族に仕えていたころはよく見かけたと昔話をしてくれた。
曰く、ベスラージュはとても知能の高い魔獣で、従魔契約をしていなくても、成長すれば意思疎通が容易にできるらしい。
飛ぶ速度はかなりのものだが、子どものうちは、飛ぶことができず、親の背中に乗って移動することが多いので、ツイバルドにはそこを狙われたようだ。
ポーラはシャロンに拠点を案内していた。
私たちの元へ戻ってくると、
「レーベル。シャロンがお腹空いたって!」
「承知致しました。その大きさであれば、ファングラヴィットを丸ごと食べると思いますので、用意致します。まだ解体が終わっていない個体がありますので」
「ありがとう!」
丸ごとって・・・
同じくらいの大きさなのにね・・・
レーベルがファングラヴィット —血抜きと牙を取り外しただけの個体— を用意すると、シャロンは「食べていい!?」といった感じで興奮しながら、ポーラの周りを駆けていた。
ポーラが「いいよ」と頷くと、一目散にファングラヴィットに飛びつき、ガツガツと食べていた。
一時間もしないうちに、ファングラヴィットは大きな骨を残して、綺麗に食べ尽くされていた。
・・・あれ?魔石は?
「ねえ、レーベル。あのファングラヴィットって魔石も出してあったの?」
「いえ、まだ体内にあったと思われます」
「・・・じゃあ、シャロンが食べたってこと?」
私がそう聞くと、ポーラが焦ったようにシャロンの元へ近づき、
「シャロン! 魔石食べたらダメだよ! 硬くて美味しくないよ!」
そう言って、吐き出させようと、シャロンの背中付近を撫でているが、当のシャロンは「なんで?」とでも言いたそうな表情で、ポーラを見つめて、ポーラの顔を舐めていた。
・・・平気そう?
「ポーラ様、ご安心ください。魔獣が魔石を食べるのは不思議なことではございません。むしろ、シャロン殿ほどの若さであれば、成長のために摂取することが望ましいくらいです」
「・・・そうなの?」
レーベルによると、多くの魔獣が魔石を食べるらしい。
というのも魔獣は体内に魔石を有し、魔素の魔力への変換や魔力の蓄積をコントロールしているが、生まれたばかりの個体の魔石は小さく、魔力量も少なければコントロールする力も弱い。
大気中にある魔素を取り込むことや、食事によって魔素を吸収し、魔石を成長させていくが、他の魔石を食べることはその近道になるらしい。
そのため肉食・草食問わず —草食の場合は偶然死骸を見つけた場合に限られはするが— 魔石を摂取することは珍しいことではないそうだ。
「・・・じゃあ、リンやマーラたちにも、魔石をあげた方がいいの?」
「一般論で申せばそうなのですが、ここは少し事情が違いまして・・・」
事情が違うのは3つ。
1つ目はここが、魔素濃度の濃いクライスの大森林であるということ。
大気中から取り込める魔素の量や、普通の食事で吸収できる魔素の量が、森の外とは段違いだ。
特に、元々は森の外にいたマーラたちにとっては、現状で吸収できる魔素の量を超える供給がされているらしい。
2つ目に私の従魔であるということ。
従魔契約をすると、主従間で魔力の行き来が行われるようになる。
私たちの場合、私の保有する膨大な魔力が、従魔に流れ、それが魔石を成長させたり、身体を強くしたりしている。
そのため、わざわざ魔石を食べる必要性は低いらしい。
3つ目に、『アマジュの実』だ。
魔石よりも、魔素の吸収に優れている木の実を、普通の食事にしているのだから、魔石は不要なわけだ。
「シャロン殿についても、しばらくは魔石を食べるとは思いますが、ここで生活をしているうちに、食べなくなると思います」
レーベルの説明に、ポーラは安心したようで、シャロンを抱きしめていた。
♢ ♢ ♢
シャロンを迎えて、数週間が過ぎた。
シャロンは出会った当初よりも、遥かに大きくなっており、今ではポーラを乗せて歩くことができるようになっている。
まだ空を飛ぶのは上手くないが、一生懸命に翼を羽ばたかせて、短時間・低い高度であれば、飛ぶことができるようになってきた。
カイトやポーラの成長も留まる所を知らず、私が『竜人化』してまあまあ力を込めて作った的も、簡単に壊されるようになってきた。
さすがに、フルパワーで作っている拠点の壁なんかは、まだ壊されないが、そのうち壊されても驚かない。
成長といえば、マーラたちスレイドホースが、それぞれ身体が大きくなっており、それに伴い走るスピードも速くなっていた。
そして、ポスとベッカが妊娠した。
前までも拠点から出たがらなかったが、最近になって特にその傾向が増してきて、気になっていたところで、レーベルからお腹から別の魔力を感じる、つまり妊娠しているとの報告がなされたのだ。
突然のことで驚いたが、妊娠したスレイドホースは、特に動き回らず、寝床でゆっくりしていることが多いとのことなので、2頭用の新しい馬房を作って、餌を大量に集めて置いておいた。
毎朝様子を見ているが、ゆっくり食事をしているか、寝ているかのどちらかで、問題はなさそうだ。
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後は元気な子が産まれるように、見守るしかない。
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