危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

文字の大きさ
119 / 370
第3章:変わりゆく生活

第112話:領都へ

~カイト視点~

あっという間にフェイが、僕の専属メイドになった。
レーベルが言っていたように、コトハお姉ちゃんのことは了解しているそうで、目覚め次第挨拶をするとのこと。
レーベルとフェイ、それからポーラに仕えるべく来るであろう『悪魔族』は、それぞれの主である僕らが、単独で命令権を有することになるらしい。けれど、彼らにとって僕たち3人は、全て主みたいなものとの認識らしく、問題が起こることはないとのこと。
・・・・・・それに僕やポーラが、コトハお姉ちゃんと揉めることがあるとは思えないし。

フェイは、レーベルから僕らのことや、現在の状況なんかの情報は、既に与えられていたようだった。
なので、

「じゃあ、フェイ。僕と一緒に領都へ行ってくれる?」
「もちろんでございます!」

と、嬉しそうに返事をされた。常に冷静で、静かな感じのレーベルと違って、フェイは感情が表へ出るタイプだ。レーベルは、「執事たるもの・・・」とか言っていたけど、僕としては感情が出ても良いと思う。結局は、個性の範囲だしね。
こうして、領都へは、僕とフェイの2人で行くことが決定した。
その後、起きてきたポーラにフェイを紹介したが、予想通り、驚くほど早く懐いていた。


途中でフェイが来て、話が中断したが、最後に『人龍族』について、レーベルやフェイに聞いてみた。
しかし2人とも、初めて聞く種族とのこと。古代の『龍族』が生きていた時代に、『人間』はいなかったようで、『龍族』となったコトハお姉ちゃんの眷属となったことで、新たな種として誕生したのではないかとのことだった。

眷属とは、『龍族』に仕えていた者を言うらしい。といっても、レーベルたち悪魔族はそれに含まれない。
なんでも、『龍族』の魔力を受け入れ、進化した存在のみが、そう呼ばれていたらしい。単に仕えているというよりも、家族に近しい存在とのことだった。
そう言われれば、納得するほかない。僕やポーラは、コトハお姉ちゃんを、親のような姉のような存在だと思っているし、家族だと思っているからね。


 ♢ ♢ ♢


バイズ辺境伯に言われた2週間が迫っており、僕とフェイは、領都へと向かった。
途中、1か月近く守り抜いた陣地の場所を通ったが、少数の騎士さんが駐留しているのみで、戦いの痕跡は無かった。
駐留していた騎士さんたちは、一緒に戦った人たちだったので、挨拶を交わして、領都へと向かった。


領都の周辺は、騎士が小隊規模で巡回しており、物々しい雰囲気が漂っていた。
レーベルの指摘通り、大規模な魔獣の襲撃は終わったけれど、それに影響されて、小規模な襲撃や、クライスの大森林以外の場所からの襲撃は散発的に起こっているようで、その警戒をしているとのこと。


領都の門へと向かうと、レーノさんを見つけた。

「お久しぶりです、レーノさん」
「これは、カイト殿。先の襲撃の際は、本当にお世話になりました。今日は、アーマス様の元へ?」
「はい。あの時は、バタバタと拠点へ帰ってしまったので。2週間ほどしたら来て欲しいと頼まれていましたし」
「そうでしたな。私がご案内致します。それで・・・、そちらは?」
「この人は、フェイです。僕の・・・・・・、メイドです」
「フェイと申します。以後お見知りおきを」
「これは、ご丁寧に。レーノ・フラークと申します。それでは、お二方はこちらへ」


レーノさんに案内され、領主のお屋敷へと案内された。
何回か来たことがあるが、今日は少し様子が変わっている。

まず、やたらと警備が多い。完全武装の騎士や兵士が、敷地全体を取り囲むように配置されている。そういえば、町の中も、巡回している警備兵がとても多かった。

「レーノさん。なんか、警備が凄いですね・・・」
「ああ、はい。現在、ラシアール王国の反ランダル公爵派のお偉方が勢揃いしておりますから。下手なことがあってはなりませんので、警備を強化しております」
「・・・なるほど。でも、そんな大事なときに、僕が来て大丈夫なんですか?」
「いえ、むしろ必要なんですよ。詳細は、アーマス様から説明があると思いますので、ご心配なさらないでください」

そう言うと、レーノさんは門番へ合図し、敷地の中へと入っていく。
僕たちも後に続くと、大きなお屋敷の前には、何台もの大きな豪華な馬車が停まっていた。どう見ても、貴族の馬車だよね・・・


レーノさんに案内されて、いつもバイズ辺境伯と話をする応接室に通された。
大きな椅子の真ん中に座ることに躊躇しながら、座って待つ。試しにフェイも誘ってみたが、予想通り断られた。
いつもは、コトハお姉ちゃんとポーラと一緒に座っているから、1人というのはなんだか落ち着かない。
けど、コトハお姉ちゃんの代理として、しっかりしないと!


少しして、部屋にバイズ辺境伯が入って来た。一緒に、ボードさんやオリアスさんが入って来る。
それから、もう2人。派手さはないが一目で高級だと分かる服装をしている、バイズ辺境伯と同じくらいの年齢の男性と、その男性を護衛していると思しき、騎士鎧に身を包み帯剣した男性だ。
誰?と思っていると、バイズ辺境伯が口を開いた。

「待たせたな、カイト殿。それと、カイト殿のメイドと言ったか?」
「こんにちは、バイズ辺境伯。こっちは、僕のメイドになったフェイです」

僕が紹介すると、フェイが静かに礼をした。

「そうか、よろしく頼む」

よく考えたら、身分の不安定な僕の従者というわけで、バイズ辺境伯が挨拶する必要はないと思うんだけどね・・・
相変わらず、僕たちサイドの人間には、すごく丁寧に接してくれる。
この間は思わずコトハお姉ちゃんの種族を聞いていたけど、あんなの見せられたら聞きたくなるのも分かる。お姉ちゃんもまったく気にしてなかったしね。


「それで、カイト殿。今日はコトハ殿は・・・」
「はい。コトハお姉ちゃんは、あの戦いの疲労がまだ癒えていなくて。代理で僕が来ました」

正確なことを伝えようか迷ったが、バイズ辺境伯との今後の関係がどうなるのか分からない。それに、見知らぬ人もいる場所で、軽々に大事そうな情報を明かすのは憚られた。なので、最低限、コトハお姉ちゃんが来られなかったことだけ伝えておく。


「・・・そうか。申し訳ないが、心から回復を願っている旨、伝えておいてくれ」
「分かりました。それで、今日は・・・」
「ああ。だがその前に、紹介させてくれ。こちら、カーラ侯爵だ」

バイズ辺境伯は、そう言って、横に座る男性を紹介した。カーラ侯爵というと確か、財務卿を務めている、ラシアール王国の財政関係を司っていた貴族なはずだけど・・・


「初めまして、カイト殿。ハール・フォン・カーラです」
「初めまして、カーラ侯爵。カイトです」

そう言って挨拶を交わすと、バイズ辺境伯が口を挟んだ。

「カイト殿、カーラ侯爵に、昔の名を教えてやってはくれぬか?」
「・・・え? 別に構わないですけど・・・」

唐突にそんなことを言われて、一瞬戸惑った。
しかし、別に隠しているわけではないので、伝える。

「僕の昔の名前は、トーマス・フォン・マーシャグです」
「なんだと!?」

昔の名を伝えた途端、カーラ侯爵が大きな声を出しながら立ち上がった。僕はビックリして、後ろへ下がってしまった。カーラ侯爵の勢いは、それほど凄いものだった。

気を取り直して、カーラ侯爵へ確認する。

「・・・えっと、カーラ侯爵。僕のことをご存知なのでしょうか?」
「ああ。もちろん、知っているとも。君のことも妹君のこともな。マーシャグ子爵は、とても優秀な男で、多くの重要な案件を任せていた。家族ぐるみでの交流もあって、君らが幼い頃に、抱かせてもらったこともあるくらいだ。そうか、そうか。無事であったのか・・・」
「ちなみに、ハール。妹君も生きておるぞ。現在はポーラ、と名乗り、カイト殿と一緒に暮らしておる」
「なんと! それは真か、アーマス!」
「こんな嘘を吐くほど落ちぶれとらんわ。カイト殿たちから頼まれたし、安全のためにも話してはおらんかったがな」
「そうか、そうか」

カーラ侯爵は、本当に嬉しそうに、涙ぐみながら、何度も頷いていた。
父がお世話になっている、上司にあたる貴族の家に何度か行った記憶はあるが、それがカーラ侯爵だったのか。

感想 126

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。