危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第3章:変わりゆく生活

閑話:王国一忙しい男

~バイズ公爵視点~

コトハ殿一行を送り出してから数日、私はカーラルド王国の王都キャバンへ出発した。宰相なんて地位に就いてしまったので、仕事が山積みだ。

ランダル討伐に向けて出発した軍からの定時連絡では、進軍は予定通りとのこと。このままいけば、5日後に旧ラシアール王国王都周辺で、接敵するだろう。旧王都に籠城されると厄介だが、間諜によれば旧王都内で抵抗を続けている集団によって、旧王都の城壁が3割ほど破壊され、6つある城門のうち2つが破壊されているらしい。

旧王都を中心に活動していた大商会も揃って脱出し、キャバンやガッド、カーラルド王国に参加した貴族領の領都などにその拠点を移している。その結果、旧王都は深刻な食糧難直前だとか。ランダルや協力している貴族の領地から物資が送られてきてはいるが、焼け石に水だろう。そもそも旧ラシアール王国で食料などの生産は南部や東部の貴族領が中心だった。北部や沿岸部は塩の生産や漁業、ランダルの領地がある西部はジャームル王国との交易や鉱山資源などが主力産業だった。なので、自領から食料を補給しようとしても難しい。

加えて、ジャームル王国は、北東部に至り最大の港があるベンガル伯爵領を抑えた後、動きが無い。調査によれば、ジャームル王国からランダルへ物資の供給が予定されており、派兵も検討されていたようだが、その予兆は全くない。ジャームル王国に奪われた土地でも、民が虐げられていることなどはなく、単に頭が挿げ替わっただけであった。

これらの情報を考慮すると、ランダル側は我らに対して籠城を選択することはできず、旧王都南にあるガルダン平野に出てきて布陣するほか無いであろう。もっとも戦力差は歴然であり、問題なく討つことができそうだ。


 ♢ ♢ ♢


キャバンに到着した私は、元々カーラ侯爵領の領主の屋敷であり、現在は仮の王城としている屋敷へ入った。ハールはその長男ベイルと次男ガインを連れてランダル討伐を率いている。そのためここは、三男であるダンが守っていた。

「ようこそ、アーマスおじさん」

ダンがそう、今まで通りに出迎えてくれるがそれは少しまずい。
私はきちんと頭を下げて礼を取ってから、

「お久しぶりでございます、ダン様」

と、王族に対する挨拶をする。
それを見てダンは今の自分の身分を思い出したのであろうか、苦笑いしている。


案内され部屋に入る。人払いを済ませてから、

「ダンよ。せめて人前では、王族らしく振る舞ってほしいのだが・・・」
「あはは・・・。いきなり王族とか言われても難しいっすよ。これまでは父と同格で、父の幼なじみだったアーマスおじさんに対しては特に」
「しかしなー、これからカーラルド王国の地盤を固めなければならない。王族としての振る舞いは、重要だぞ?」
「分かってはいるんすけどねー・・・。父も兄たちも、そこは完璧に順応してるのが怖いっすよ」
「それが必要なのだよ。お前も、近衛をしていたのだから、王族には接してきただろう?」
「まあ、それは・・・。とはいえ、自分は常に王族に張り付いて護衛する近衛の第1、第2分隊ではなくて、不正とかに対処する第3分隊でしたからねー。しかも分隊長でも副分隊長でもなかったので、王族と会うことなんてめったになかったので」
「そうは言っても・・・・・・、いや、それはいいか。キャバンはどんな様子だ?」
「そんな呆れなくても・・・。まあ、いいっすけど。キャバンの治安は問題ないですよ。キャバンは多くの商会が本拠地を置く経済の中心都市でしたから、ランダルの反乱やジャームル王国の侵攻の影響で少し乱れているところはありますけど、足腰強い連中が多いですから。商会の会長たちに聞いたところ、商会規模でのジャームル王国との交易は再開されているようですし、物資を止められたりもしていないようです」
「・・・なるほど。問題は無さそうか。にしてもジャームル王国の動きは謎だな。普通に考えれば、奪った北側の奪還を警戒してカーラルド王国との取引は止めると思うのだが・・・」
「ですよねー。ああ、そういえば。ジャームル王国の噂を1つ、商人から聞いたんすけど・・・」
「・・・噂?」
「ええ。ジャームル王国がカーラルド王国との戦いを極端に警戒しているとの噂です。グレイムラッドバイパーを倒した貴族を嗾けられることを恐れているとか・・・」
「グレイムラッドバイパーを倒した貴族って、コトハ殿のことか・・・」

確かにコトハ殿のことはジャームル王国に知られている。詳細はともかく、グレイムラッドバイパーを倒した女性がいることは知られているだろうし、名前も公表してある。コトハ殿に貴族となることを依頼したときは、他国への抑止力になることを期待したが、成功か?


「コトハ殿というと、クルセイル大公でしたっけ?」
「ああ、そうだ。彼女に貴族となってもらったのは抑止力としての効果を期待したものだが、うまくいったようだな」
「グレイムラッドバイパーを倒した女性ですよね。にわかには信じがたいんですけど・・・」
「事実だ」
「ええ。アーマスおじさんがそんな嘘を言わないことは知ってますよ。ただ近衛時代にグレイムラッドバイパーの下位種と言われるラッドバイパーの10メートルくらいの個体と戦ったことがあるんですよ」
「・・・ああ、聞いたことがある。国王陛下の視察中に襲われ近衛の第1分隊が壊滅、なんとか逃げ帰って、騎士団と魔法師団を総動員してなんとか仕留めたとか」
「ええ。悲惨なものでしたよ。あれの上位種、しかも200メートル級の大きさを考えれば、想像もできないっすね。それを倒すなんてね」
「ああ。だからこそ、彼女が味方であると示すことに意味がある。ジャームル王国が警戒してくれているのなら、利用しない手は無いな」
「・・・・・・彼女を嗾けるので?」
「馬鹿者。そのようなことを頼めば、こちらが彼女と敵対してしまうぞ」
「・・・・・・じゃあ?」
「彼女の存在を仄めかしつつ、港を取り返す。お前が愚かで無いことは承知だが、彼女に下手なちょっかいかけるなよ?」
「大丈夫ですよ。女性を怒らせると怖いのはよく知ってますから」

ジャームル王国の制圧をコトハ殿に頼むわけにはいかない。そのようなことをしないことが条件だった。だが、彼女の存在を示すことはできる。我々とコトハ殿との約定の細かい内容は公になってはいないのだから、漏れたり感づかれたりする前に、交渉する必要があるか。


 ♢ ♢ ♢


翌日から、宰相としての仕事を始める。やるべきことは無数にある。

ランダル討伐後の国の安定化、領地の振り分け、貴族の整理、各種ギルドとの再提携、他国との関係の再構築など。それらを差配しなければならないと思うと、今から目眩がしてくるな。加えて、今回のランダル討伐は、こちら側の貴族が軍や騎士団を出し合っているが、旧カーラ侯爵領の軍や騎士団をベースに、王国軍や騎士団、近衛を整備する必要もある。

それにある程度国が落ち着いたら、建国記念の式典をする必要があるか。内容はともかく、ハールの即位関連の儀式と、国民への演説は必要だな。
国が落ち着いたら、私が兼任している財務卿・軍務卿の仕事を割り振る必要もある。宰相に加えて、こんなものまで背負わされたら身体がいくつあっても足りん。

仕事が山積みで嫌になってくるが、ここで手を抜くと後で困るのは明らかだ。とりあえず、使える貴族を宰相補にでも任命して、こき使うか。


とりあえず、なるべく早くランダルを討って、使える貴族が帰ってくることを願うしか無い。

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